2018年02月20日

染谷隆夫博士(東京大学大学院工学系研究科・教授)を中心とした東京大学と大日本印刷(DNP)の研究チームは、薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの製造に成功し、スキンセンサーで計測された心電波形の動画を皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示できるセンサーシステムを開発した。研究成果は、2018年2月17日(米国時間)にアメリカ科学振興協会(American Association for the Advancement of Science; AAAS)年次大会で発表された。
 

超高齢社会の本格的な到来を迎えたわが国では、医療費の増加や医療・介護現場の労働力不足に対策を講じつつ、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)を向上するために、セルフメディケーションやセルフケアの重要性が増している。既に特定の医薬品購入に対する新税制としてセルフメディケーションの推進が始まっており、今後、自宅で自分自身あるいは家族の健康に責任を持つようになり、それを管理するセルフケアの仕組みづくりが急がれている。そのために、高度に発展した情報通信技術を駆使した健康管理システムが期待されている。特に、自宅や介護施設、病院など場所や時間を問わず、「いつでも、どこでも、誰もが簡単に、正確に生体情報をモニタリングし、その情報にスムーズにアクセスできる技術」が求められている。

 
近年の半導体技術の発展によって、ウェアラブルデバイスで生体情報をモニタリングし、スマートフォンやタブレット端末に表示することができるようになった。しかし、スワイプしてスマートフォンに情報をアクセスすることは、入院中の高齢者や幼児にとっては簡単ではないため、計測から情報表示までの一連の流れを自然にして、アクセシビリティを高める新たな技術が求められている。

 

研究では、薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの製造に成功し、スキンセンサーで計測された心電波形の動画を皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示することができるようになった。

 
このスキンディスプレイは、16×24個(画素数:384)のマイクロ発光ダイオード(マイクロLED)が薄いゴムシートに等間隔で埋め込まれており、全体の厚みは約1ミリメートル(mm)で、繰り返し45%伸縮させても電気的・機械的特性が損なわれず、薄型・軽量で伸縮自在なため、皮膚に直接貼り付けても人の動きを妨げることがなく、装着時の負担が大幅に低減されている。最も伸ばした状態と最も縮めた状態の解像度は、それぞれで4mmと2.4mm。実効的な表示面積は、それぞれ64mm×96mmと38mm×58mm。マイクロLEDの大きさは1.0mm×0.5mm、発光波長は630ナノメートル(nm)(赤色)、駆動電圧は2ボルト(V)。パッシブマトリクス方式で駆動され、表示スピードは60ヘルツ(Hz)、最大消費電力は13.8ミリワット(mW)。
 
同スキンディスプレイの特徴は、独自の伸縮性ハイブリット電子実装技術によって、マイクロLEDのような硬い電子部品と伸縮性のある配線が混載したゴムシートを伸ばしても壊れないところにある。従来の方法では、硬い電子素材と柔らかい電子素材が混載されたゴムシートを伸ばすと、硬い素材と柔らかい素材の接合部分に大きな応力が集中するためすぐに故障してしまうが、研究では、この応力の集中を避ける構造を採用した結果、機械的な耐久性を格段に向上することができた。また、産業界で実績のある量産性に優れた電子実装方法で製造されているため、早期の実用化と将来の低コスト化が期待できる。具体的には、伸縮性の配線としてはスクリーン印刷法による銀配線が使われ、マイクロLEDの実装には一般的なマウンタとはんだペーストが使われている。
 

スキンディスプレイは直接皮膚に貼り付けて、皮膚呼吸できるナノメッシュ電極と無線モジュールを組み合わせたスキンセンサーで計測した心電波形の動画をディスプレイに表示する。この心電波形は、スマートフォンで受信でき、リアルタイムでスマートフォンの画面で波形を確認したり、クラウドやメモリに保存したりすることができる。今回は、メモリに保存した心電波形の動画をスキンディスプレイに表示した。
 
2017年7月に東京大学大学院工学系研究科染谷教授を中心とした研究グループは、通気性と伸縮性を兼ね備えた皮膚貼り付け型ナノメッシュセンサーの開発に成功し、1週間連続して装着しても明らかな炎症反応を認めないことを確認した。これまでナノメッシュ電極を活用して、温度、圧力、筋電を計測していたが、今回、初めてナノメッシュ電極で心電波形の計測ができるようになった。
 
 

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