2018年02月05日

出版印刷や商業印刷を主体に営業展開をしていた中央印刷㈱(本社・東京都豊島区高松1の10の2、日岐浩和社長)では、平成18年に国内初導入となるマンローランド社製のインラインでコールドフォイル加工ができる菊全判枚葉オフセット7色コーター付UV印刷機「ROLAND707LV」を採用し、新たにパッケージ・加飾印刷分野への進出を図った。さらに平成23年には、生産性向上とよりいっそうの印刷表現力を身に着けるべく、マンローランド社製のインラインフォイラー付菊全判10色コーター付UV印刷機「ROLAND710LV」を追加導入。その分野の仕事を積み重ねて印刷技術や表現力、そして営業提案力を高めていったことで、最初のインラインフォイラー機の導入から約10年という短い期間で、この新規事業が売上の3分の1を占めるまでに成長させた。

 

インラインフォイラー機によって新規事業を開拓
わずか10年で売上の3分の1を占めるまでに成長

 

同社の成り立ちは、第2次世界大戦後の財閥解体によって、長野県内にある製糸会社の印刷部門から継承されて創業。本社・工場を長野県岡谷市に構え、県内の精密機器メーカーや観光業者の商業印刷物、そして首都圏の出版印刷物を事業の柱にして営業展開をしてきた。しかしながら、平成に入ってからは県内への観光客の減少、さらに出版不況の傾向が見え始めてきていた。そこで、それらに加える新たな事業の柱としてインラインフォイラー付印刷機を活用した特殊・加飾印刷に着眼した。

 

日岐社長

日岐社長

同社が最初にインラインフォイラー付印刷機「ROLAND707LV」を導入したのは平成18年。この印刷機の構成は、1胴目で原反に箔を載せる部分へオフセット印刷で糊を塗布、2胴目で箔を原反に密着させることで糊を塗布した部分にのみ転写、3~6胴目でC・M・Y・Kの4色印刷、7胴目で特色やOPニスの印刷、ニスコーターユニット、ロングデリバリーでUV光を照射する流れとなる。

印刷機を導入したものの、その当初は2つの課題があった。その1つは、箔を転写するための糊が油性だったことだ。箔の上に印刷をすると、本機校正をしても見る角度によって印象が変わるので印刷立ち会いをすることが多い。その際、スクラッチ試験やセロハンテープ剥離による密着試験も行われるが、糊が油性なので乾くまでに時間がかかることから、円滑な運用をすることが難しかった。「海外のインラインフォイラー機ユーザーではそのような試験をされることがないので、参考となる対策法がなかった。そこで、UV硬化型の糊とUV光が透過する箔を材料メーカーに開発依頼し、半年程かけて日本市場に適したインラインフォイラーのシステムを確立させた」と同社の日岐社長は当時の苦労を語る。

 

高いアイキャッチ効果が新規営業活動にも貢献
自社オリジナル製品の開発やテストも社内で気軽に

 

 

ホログラム用のフォイルもインラインで加工できる

ホログラム用のフォイルもインラインで加工できる

もう1つの課題は、パッケージというこれまでとはまったく異なる分野での営業面だ。「商業印刷や出版印刷とは顧客がまったく違うのですべてが新規開拓となる上、インラインフォイラーだからこそ実現できる印刷技術を認知してもらうのは簡単ではなかった。そこで、パッケージデザイナーが集まる場所で印刷サンプルを見てもらい、どのような手法でこの印刷物を製作したのかを説明し、みなさんに興味を持ってもらうことから始めた」(日岐社長)

そして、パッケージデザイナーに向けてメタリックデザインを駆使したパッケージ作品の製作実験を無料で行ったり、勉強会の開催、展示会への出展などを通して啓蒙・広報活動を地道に展開していった結果、間もなくしてその新しい市場を開花させることに成功した。

このインラインフォイラー機だからこそできる印刷技術は新規営業活動をする際のドアノッカーとしても効果を発揮し、高いアイキャッチ効果が求められるパッケージ分野はもちろんのこと、トレーディングカード、書籍のカバーや表紙、クリアファイル、インモールドラベル、シールなど、みるみる用途は広がっていった。また、社内にインラインフォイラー機があることから気軽にオリジナル製品の開発や印刷技術のテストをできるというメリットもある。それで開発したオリジナル製品として、高価で特別な機械などを使うことなく真贋判定ができる偽造防止技術「クリアホロ」(印刷物を見ただけではそれがあることはわからないが、ある部分にセロハンテープを貼ってから剥がすとホログラムが現れる仕組み)などがある。

インラインフォイル加工技術の認知度が向上すると問い合わせや発注が全国各地から届くようになったことから、営業・本社機能を長野から東京へと移転させて対応力向上を図った。そして仕事を重ねるごとに社内のデザイン部門は、箔を使ったデザイン表現力に長けていく。そこで今では、原稿データを顧客から支給された場合でも、社内のデザイン部門で効果的な箔を使ったデザイン案を制作・提案するサービスを行っている。

 

ユニット数を増やした2台目により表現力がさらに向上
大ロットへの対応力も評価されて加飾印刷の受注が増大

 

 

インラインフォイラー付菊全判10色コーター付UV印刷機「ROLAND710LV」

インラインフォイラー付菊全判10色コーター付UV印刷機「ROLAND710LV」

そしてインラインフォイラー機の活用法や印刷表現技法が広まっていくと、7色機では1パスで処理できない仕事がどんどんと増えていった。「コールドフォイルと疑似エンボスを組み合わせると表現力が高まることから、そのような仕事がとても多くなった。7ユニットの中で印刷に使えるのは5ユニットなので、特色を使いながら疑似エンボス加工もすると、2パスで対応しなければならない」と日岐社長はインラインフォイラー機を運用する上で生じた次なる課題を語る。そこで平成23年に、マンローランド社製のインラインフォイラー付菊全判10色コーター付UV印刷機「ROLAND710LV」を追加導入した。「2パスで対応する仕事が全体の半分以上を占めるようになっていて生産効率も悪くなり、インキ替えや見当精度の点でも現場に苦労をかけていたので10色機を追加することにした。オペレーターの操作性やメンテナンスの共通化が図れることに加え、当社にとって新しい事業分野を確立してくれた実績を買い、2台目となるインラインフォイラー機も“ROLAND700”を選んだ」(日岐社長)

 

インラインフォイラー機を2台体制にしたことで、同社のこの分野の生産性は3倍以上へと増大。また、2台体制にしたことで安定的に量産できることが顧客から評価され、これまでにはなかったような大ロットの受注も入ってきているという。「国内ではまだコールドフォイルを手掛けている印刷会社は多くないので、この分野をさらに強化していく。また、金属を紙の上に載せるという技術は、美粧性以外の方向でも活用できるはず。コールドフォイルならではの細かい表現力との相乗作用で、さらなる新分野を切り拓いていくことを考えている」と日岐社長は、インラインフォイラー機ならではの高い技術力と表現力を活用したさらなる新規事業の創出を見込んでいる。

 

日本印刷新聞 2018年1月29日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

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