2018年01月11日

2017年7月25日の閣議で「平成29年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針(平成29年度基本方針)」が決まり、新たに講じる主な措置として「知的財産権の財産的価値について十分に留意した契約内容とするように努めるものとする」が加わった。この措置は、全日本印刷工業組合連合会(全印工連)と、全日本印刷産業政治連盟(全印政連)の官公需活動の成果といえる。全印工連では17年末『大きく変わる知的財産権の取り扱い』と題するパンフレットを作成し、周知・啓発に乗り出した。中心となってパンフレットをまとめた官公需対策協議会の白子欽也議長(和歌山県印刷工業組合理事長)に、いきさつや今後の展開について聞いた。

 

白子欽也

白子欽也議長

 

--いきさつから聞きたい。
白子 全印工連は平成28年度に全国の印刷業者を対象に官公需の取り引きに関するアンケート調査を実施した。その結果、著作権にかかわる問題点が浮き彫りになったことから、全印工連、全印政連が動き出した。自民党中小印刷産業振興議員連盟に提言し実現に至った。国から認められたということは、大変ありがたく心強い。「基本方針」では、全印工連が以前から要望していた知的財産権の財産的価値について留意する内容が、次のように盛り込まれた。

 

第1は「知的財産権の無償譲渡・利用」という表現の適正化。これは著作権等の知的財産権の財産的価値に配慮した契約内容とするよう、発注者に求めたもの。

 

第2に「知的財産権の利用範囲の特定(明確化)」。知的財産権の利用目的、利用媒体、数量、利用期間等を特定し、受注者が譲渡する知的財産権の財産的価値を明確にするもの。

 

第3は、一律の権利譲渡の見直しと二次的活用の促進。これは権利譲渡が必要かどうか検討することによって、調達コスト削減や二次的活用の促進を図るのが狙い。

 

第4は、印刷用データ等の取り扱い。これが印刷会社にとっては一番の関心事だと思う。中間生成物、版下、フィルム、データ、その他は原則として印刷会社に帰属するものであり、無償で発注者に納品するものではないとした。納品が必要な場合は利用目的等を仕様書に明記し、その財産価値に配慮するとしている。

 

--官公需活動の狙いは。
白子 「知的財産権の取り扱いについて十分に留意した契約内容とするように努めるものとする」の文言を、「基本方針」の中に入れてもらうために、われわれは活動したといっても過言ではない。閣議決定を受けて経済産業省は、「官公需における印刷発注では著作権の権利範囲を明確化して財産的価値に留意しましょう!」という啓発チラシを作成した。これにより今回の活動は、単に業界団体のアピールではなく、国(経済産業省が各省庁・地方自治体に対し通達した公的な取り組みとなった。その内容は、今回全印工連がまとめたパンフレットにも、巻末資料として掲載している。

 

さらにパンフレットの最後のページには、官公需に関する問い合わせ先として、経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課(印刷業所掌)、中小企業庁事業環境部取引課、官公需総合相談センターが名を連ねていることも特筆すべきことであるといえる。

 

--今後の展開について聞きたい。
白子 平成29年度基本方針の中に、知的財産権の取り扱いについて明記されたのを受けて、今後、全印工連傘下の全国の組合は、所属の組合員と関係する官公庁両方に対し、今回の取り組みを速やかに周知し、普及を急がなければならない。今回作成したパンフレットについては、全印工連の11月の理事会でも申し上げたが、目を通したあと、手元に置いておくものではなく、取り組みを実効あるものにするきっかけづくりの道具として有効活用していただき、都道府県や市町村を動かしてもらいたい。

 

全印工連官公需対策協議会としては、各メンバーが各地で開催される全印工連の下期地区印刷協議会で説明するほか、要望があれば全国の工組に出向いてセミナーを開催していく予定である。

 

--最後にひと言。
白子 印刷業者は、つねに顧客のために良いものを作ろうとがんばっている。製品のクォリティも年々高くなっている。著作権などの知的財産権や中間生成物の所有権の取り扱いが適切に行われることによって、制作意欲が増してくるはずだ。発注者と受注者が共通認識の上で取り組むのであれば、適正な価格で良い製品が生まれ、ウィンウィンの関係が構築できると思う。こうした取り組みが印刷業界の活性化につながることを期待している。

 

 

【所有権と著作権】
著作権は、思想または感情を創作的に表現した無体物である。所有権は有体物に対する権利である。たとえば書店で書籍を購入した場合、書籍の所有権は書店から買主に移転するが、そのコンテンツの著作権は買主に譲渡されずに著作権者にとどまり、書籍を購入したからといって、コンテンツを勝手に利用することはできない。

 

 

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