2017年12月10日

育英工高印刷科・育英高専印刷工学科・同グラフィック工学科・同ビジュアル情報工学科の卒業生により組織される「育英グラフィックの会」(杉原文治会長=高専2期、ジャパン・スリーブDPP制作本部技術顧問)は11月18日午後1時半か4時半まで、東京・東品川のハイデルベルグ・ジャパンで最新印刷機と最新無処理サーマルCTPプレートによる体験印刷会を開いた。ハイデルベルグ・ジャパンと富士フイルムグローバルグラフィックシステムズの全面協力により実現した。無処理版の効果についてはOBユーザーによる研修会を行った。約50人が参加し、講師も聴講者も同窓生というイベントにふさわしく、体験印刷会、研修会とも忌憚のない質疑が交わされ、白熱した時間となった。

 

 

開会に当たりハイデルベルグ・ジャパン水野秀也社長(11期)は次のようにあいさつした
「採用した社員が年齢が若いのになかなかチャレンジしてくれない。つくづく感じることは、学業教育の基礎がないということだ。企業教育をするしかないので、OJTで先輩から教わって何とか仕事を覚えていく。基礎的なトレーニングを施さないで表面だけ上手になっていくようなことを続けていくと、印刷産業に限らず、企業が疲弊してしまう。自画自賛になってしまうが、育成高専で基礎を勉強することができて、いまになって助かることがたくさんある。印刷産業が残る残らないではなく、画像を表現して世の中を鮮やかにして彩のある世界にしていくという大きな目標からすると、まだまだたくさんやることはある」

 

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あいさつする11期生・水野秀也社長

印刷体験では、菊全寸延び判6色コーター付UV印刷機「スピードマスターXL106-6+L-X3」による稼働例を学ぶとともに、プレディクティブ・モニタリング(予知保全)、3Kから3D(データ・ドリブン・ディシジョン)へという印刷の今後の方向性を聴いた。

 

無処理版導入の効果を聴く

 

プレートについては、環境対策の一環としてCTPの完全無処理化を実施し、環境を1つのキーワードとして、生産性と品質を高めながら可能な限り無駄を省き、付加価値を高めたユーザー報告がOBにより行われた。

 
CTPケミカルレス化に向けてテストを開始。有処理タイプ、ガム現像タイプ、機上現像タイプをテストした。テスト項目は生産性(処理スピードや版の取り扱いなど生産性を阻害する要因はないか)、品質(AM網点、FV網点ともに、品質的に問題なく再現することができるか。水は絞れるか)、コストの3点。
生産性については、機上現像タイプは現像処理不要のためCTPの処理スピードは有処理版よりも10%アップする。ガム現像タイプは感度が低いため、有処理版より35%悪化する。品質については、版の取り扱い性、網点品質は全版ともに問題ない。水量はすべての版式とも同等の結果となる。コストについては、完全無処理版のコスト削減効果として、現像液等薬品代、廃液処理代、電気代で年間約106万円の効果があった。
有処理版と比較した場合の完全無処理版の長所は、①環境貢献度高い②CTPの生産性向上(現像処理不要により約10%アップ)③現像を起因としたトラブルがない(網点変動、ローラによるキズ、汚れ)④コスト削減(薬品代、廃液処理代、電気代)⑤自動現像機のメンテナンス不要(手間の削減、現場としては大きい)。一方、短所は、①版上の絵柄が見えにくい②機上現像による印刷機への影響(不安)③露光後、版上に光が当たると非画像部が濃くなる(印刷品質には影響しない)など。
完全無処理版の視認性の問題については、面付けや絵柄は事前に検版用のプリントで確認しており、CTPの版上では確認は不要(キズやベコは版上で確認できる)。CMYKの色玉とJOB名が識別できれば、絵柄は見えなくても問題はない。版の付け間違い防止のため、色玉とJOB名を大きく見やすくした。
感光層のカスが印刷機上で悪さをしないかという問題については、技術面では、感光層の大きさはインキ顔料と比較して問題ないほど微分散され、インキに絡んで用紙に排出される。感光層は色素を含んでおらず、またローラーやブランケットにダメージを与える成分は含んでいない。感光層は疎水性のため、給水ローラーや水舟、水循環装置に混入することはない。実績として、2013年1月から約5年間(累計約25万版)使用しているが、不要な感材による印刷機への悪影響は出ていない。
露光後、版上に光が当たると非画像部が濃くなる(絵柄が見え難くなる)ことに対しては、出力後、版の前に段ボール(CTPの箱に入っているもの)を置き遮光している。
完全無処理版採用の決め手は、アルカリ現像もガム現像の必要としない完全無処理であること、品質の維持とコスト削減、作業負担の軽減ができること(自動現像機の清掃がなくなる。廃液の管理が不要)である。
有処理版から無処理版への設定変更については、露光量は同じ、ドットゲインカーブは有処理版はポジタイプ、無処理版はネガタイプのためピークが変わり調整が必要。印刷機の設定や薬品、水は変更なし。
印刷機のメンテナンスについては、①週1回、保水ローラーの親水化処理実施(水上がりの向上、水が絞れるコンディションを作る)、②版胴周りのインキ乳化による固着したインキの拭き取り(版胴とブラン胴の干渉を防ぐ)、③胴仕立ての定期的な確認(網点の適正化)、④グレーズ除去作業(印刷の安定性の向上)、⑤ニップ調整(水が絞れるコンディションを作る)。
まとめると、環境貢献度は、薬品、廃液がゼロとなり非常に高い。
生産性は、有処理版と感度は同じ、現像処理が不要なのでCTP処理スピードがアップする。
品質・取り扱いやすさでは、品質は有処理版と変わらない。オペレータは違和感を感じず、印刷機の設定も同一(小さな違いが作業性に大きな影響を与えることがある)。自動現像機による網点変動やキズ、汚れが発生しない。
作業負荷の軽減では、①自現機のメンテナンス、洗浄作業が不要(オペレーターのストレス軽減、CTP立ち上がり時間の短縮)、②現像液等の廃液処理不要、化学物質の管理不要、③自現管理、メンテナンス不要によりCTP作業の無人化を実現(DTP作業との多能工化)がある。
コスト削減では、薬品代、廃液回収不要、電気代の削減がある。

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