2017年12月22日

㈱モリサワの2017年2月期売上高実績は125億8500万円・前年同期比2・9%減だった。前年にマイナンバーやものづくり補助金による活発な設備投資需要があった反動もあり、印刷機材販売が伸び悩んだ。フォントを中心に自社開発製品の受注が堅調に推移したので利益面ではややプラスだった。18年2月期は売上が比較的順調で売上高130億円を見込んでいる。今年度から「Expansion of new value ~新たな価値を広げよう~」をテーマにスタートさせた新中期経営計画では市場への対応力強化を図る。「プリンティング事業部」「エンタプライズ事業部」の2事業部制を敷いた。今後も「文字を通じて社会に貢献する」を社是として歩んでいく。
 
同社は12月18日夕、東京・九段下のホテルグランドパレスで事業報告会を開き、①実績報告②新中期経営計画③重点方針④文字文化の継承・発展について森澤彰彦社長が説明した。谷村淳人執行役員経営企画部部長、冨田信雄執行役員フォント開発部門管掌広報宣伝部、河野博史広報宣伝課課長代理、高井幸代広報宣伝課員らが同席した。

森澤彰彦社長

森澤彰彦社長

 

17年2月期は前年同期比2・9%ダウン 印刷機材販売伸び悩む

  
森澤社長によると、同社は2014年3月から開始した3年間の中期経営計画を17年2月で終え、今年度から新たな3年間の中期経営計画をスタートさせた。
 
前・中期経営計画では、「ビジネスの創造的革新」をテーマとして新市場と新規顧客の開拓を推し進めた。フォントと組版という自社の強みを生かしつつ、主要市場である印刷出版業界で基盤固めをし、新しいマーケットを切り拓くことに注力した。その結果、フォントビジネスが堅調に推移し、年間ライセンス商品である「MORISAWA PASSPORT」を中心に一般企業や教育市場への販売を伸ばすことができた。海外拠点を米国、韓国、台湾に開設し、グローバル市場への足がかりを作ることができた。
 
新市場開拓に関してはまだ十分な実績は出ていない。市場への対応力不足が大きな要因であり、新たな中期経営計画では市場対応力の強化を図ることを施策に盛り込み、事業活動を推進している。
 
17年2月期の売上は、前年同期比2・9%ダウンとなった。前年にマイナンバーやものづくり補助金による活発な設備投資需要があった反動もあり、印刷機材販売が伸び悩んだ。
 
ただしフォントを中心に自社開発製品の受注は堅調に推移したので利益面ではややプラスとなった。
 
今期については売上が比較的順調で現段階では130億円程度を見込んでいる。

 

「Expansion of new value~新たな価値を広げよう~」テーマに3年計画

 
17年3月からスタートした新たな中期経営計画では「Expansion of new value ~新たな価値を広げよう~」をテーマに据え、これまで展開してきたビジネスをさらに成長させようと考えている。そのためには前・中期経営計画で不十分だった市場への対応力を高める必要があり、「お客様の声に耳を傾け、新たな価値を市場に提供する」ことを基本方針に定めた。
 
さらに基本方針を具体的に進めるための方向性として、4つの重点指針を設けた。
 
①市場対応力の強化=モリサワグループの総力の結集、社内の組織構造改革を行い、開発や販売、サポートから事務処理に至るまで一貫した体制を整え、市場対応力を高めていく。
②マルチメディアでの情報配信に対応=紙でもデジタルでも、さまざまな媒体で配信される文字情報において、モリサワならではの価値を提供していく。
③多言語ニーズに対応=インバウンドで訪日外国人の増加、東京オリンピック・パラリンピックなど国際的イベントにより多言語の需要が増加しており、その要請に応えしていく。
④ユニバーサルデザインを通じた社会貢献=共存共栄の社会の実現のため、製品づくりやサービスにユニバーサルデザインの思想を取り入れていく。
 

「プリンティング事業部」「エンタプライズ事業部」の2事業部制敷く

 
4つの重点指針に基づき次のような施策に取り組む。
 
①市場対応力の強化
▽フォント開発体制の再編
フォントビジネスは「MORISAWA PASSPORT」を基軸に順調ではあるが、それに甘んじることなく新たなビジネス展開、海外マーケットへの迅速な対応を行うためフォント開発体制を大きく見直した。
17年3月に兵庫県明石市にあったモリサワ文研を大阪市浪速区のモリサワ本社ビル内に移転させた。
9月にはタイプバンクをモリサワに吸収合併した。
同じく9月に米国にデザインオフィスを開設した。米国で一番小さい州、ロードアイランド州プロビデンスに拠点を設立し「モリサワ・プロビデンス・ドローイングオフィス」と名付けた。
これにより、分業体制であったグループの役割を見直し、企画・デザインから開発、販売に至るまで一体化を図るとともに、多言語開発推進体制を強化した。
 
▽事業部制への移行
これまでも市場環境に応じた組織を構成し、営業、開発、サポートとそれぞれの部門が専門性を高めて対応してきた。しかし情報媒体多様化への対応や自社製品体系の多角化などに追われ、しだいに部門間でうまく情報が共有できず意志疎通を欠く場面が見られるようになった。
また、メーカーとして、ものづくりとソリューション提案の源は、お客様の声にあることを再認識したので、お客様に迅速に応えられるよう、企画から開発、販売、サポートまで一体化した事業部制を採用した。
事業部は、主に印刷業界を中心とした「プリンティング事業部」と一般企業、公共機関、教育分野を中心とした「エンタプライズ事業部」の2事業部構成とした。
これにより、マーケットの特性に応じた製品、サービスを提案する体制を整えた。
 
▽社内ベンチャー育成
10月に「MORISAWA BRAND NEW Lab(モリサワ・ブランニュー・ラボ)」という少人数のチームを社長直轄で立ち上げた。社内提案で出されたビジネスアイデアを事業化するチームである。AIやIoTなど最新の技術動向、スマホやSNSなど通信環境の変化、また生まれたときからデジタル機器に囲まれたデジタルネイティブ世代や新感覚を持ったミレニアル世代の出現、そういった新しい時代にモリサワの技術がどう生かせるのか、お客様にどのような価値を提供できるのか、Lab=実験的なチームを発足させた。今後モリサワを支えるビジネスを生み出してくれればと期待している。
 
②マルチメディアでの情報配信に対応した製品群
モリサワは、「写真植字機」から出発した会社であり、創業以来、書体と文字組版の技術を追求し続けている。現在では情報媒体の広がりによりさまざまな製品を提供している。
フォントソリューション製品には、主力の年間ライセンス製品「MORISAWA PASSPORT」「TypeBank PASSPORT」がある。パッケージ販売製品「MORISAWA Font Select Pack」「TypeBank Select Pack」、Webフォントサービス「TypeSquare」、産業機器、電子機器の表示用「組込みフォント」がある。
eBookソリューション製品としては、電子雑誌作成ツール「MCMagazine、電子ブック作成ツール「MCBook」、電子コミック作成ツール「MCComic」がある。
レイアウトソリューション製品としては、高品質組版ソフトウェア「MC-Smart3」「MDS-Smart3」、開発システム向けレイアウトエンジン「LayoutSquare」(新製品)がある。
インバウンド対応情報配信ツールとしては多言語対応電子配信ツール「MCCatalog+」、オンデマンドプリンティングシステムとしては可変印刷ソフトウェア「MVP7」、デジタル印刷システム「RISAPRESSシリーズ」がある。
新製品「LayoutSquare」は、印刷/グラフィック分野で培った組版技術、高品質フォントを、制作システムやWebシステムで利用できるようにしたレイアウトエンジンで、17年8月28日に発売した。Web to Printやクラウドサービスで高品質な組版処理を実現する。名刺やダイレクトメール、商品タグなどの制作、またWebレイアウトにも効力を発揮する。可変処理や縦組み、多言語表示などの高機能を搭載しており、システム開発者に大きな支援ができる製品となっている。
 
③多言語ニーズに対応

▽書体バリエーションの強化
多言語書体のニーズに応じバリエーションを増やしている。今期は、9月に韓国チョロンテック㈱の全書体(380書体)を取得し、同じく9月に米国Occupant LLC.の全書体(544書体)とブランドを取得した。今後モリサワの製品やサービスで提供していく。
17年11月には多言語を含む「MORISAWA PASSPORT アップグレード2017」をリリースし「MORISAWA PASSPORT」に新書体を追加した。
主力製品の「MORISAWA PASSPORT」には17年12月現在、1076書体を搭載しており、世界170以上の言語をカバーしている。

▽チャネルの拡大
16年12月に米国、韓国、台湾の海外3拠点でモリサワフォントのダウンロード販売を開始した。外国に居住する人びとがモリサワフォントをネットを通じて購入できるようになった。
15年10月からモリサワ書体、タイプバンク書体を提供しているAdobe Creative CloudのTypekitサービスに、17年7月から新たにタイプバンク書体の10書体を提供した。世界中で日本語フォントが利用できるよう努めている。

▽インバウンド対応製品
電子情報配信ツールである「MCCatalog+」は、自動翻訳機能により日本語、英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、タイ語、ポルトガル語の7言語での情報配信ができる。
近年は、外国人居住者や訪日外国人の増加により、自治体の広報誌、観光ガイドブックなどに多く採用されるようになった。
 
④ユニバーサルデザイン(UD)

▽可読性の検証
慶応義塾大学・中野泰志教授との共同研究で、モリサワのUD書体が読みやすさの優位性を備えていることの検証を行い、13年にエビデンス(学術的研究結果)を取得した。16年にはデジタルデバイスでもモリサワのUD書体のエビデンスを取得した。
17年に多言語フォント(「UD新ゴ ハングル」)の可読性に関する研究を韓国国内で実施しエビデンスを取得した。
それぞれの研究報告はモリサワのホームページで公開している。
▽UD採用事例
任天堂=モリサワのユニバーサルデザイン(UD)書体「UD新ゴ」が任天堂の「Nintendo Switch」(17年3月発売)に搭載された。
マイクロソフト=モリサワの「UDデジタル教科書体」がマイクロソフトの「Windows 10 Fall Creators Update」(17年10月17日無償アップデート開始)に採用され、OS標準フォントとして利用できるようになった。
「UDデジタル教科書体」は、教育現場の要望に応えるため、ヒアリングや検証を重ね、10年かけて開発した。電子黒板やタブレット端末などICT教育の現場でもはっきりと読みやすい効果を発揮する。
一定の太さを保ちながらも書き方や画数、筆順など学習指導要領の字形に準拠し、視覚に障害を持つ子供たちへの配慮を踏まえ、障害者差別解消法の理念に基づいたユニバーサルデザイン対応の教科書体である。
慶應義塾大学の中野泰志教授の協力によりリーダビリティのエビデンスを取得している。
18年には学習専用欧文書体をリリースする予定である。

 

文字文化を継承しさらに発展させていく

 

モリサワは文字文化を継承し、さらに発展させていくことを使命とし、さまざまなイベントを開催している。

 

▽Morisawa Type Design Competition
タイプフェイスデザイナーの創作活動を支援するとともに、文字表現の可能性を追求するために書体デザインのコンペティションを開いている。
16年は「Morisawa Type Design Competition 2016」を開き、世界中からたくさんの応募をいただいた。表彰式と特別セミナーを17年5月11日に実施した。次回開催に向け、準備を進めている。
▽モリサワ文字文化フォーラム
奥の深い文字文化への探究心を次の世代に受け継ぐため、文字文化と関わりの深い講師による講演会を開いている。10年に第1回を実施して以来、現在までに21回を数える。
▽文字組版教室
文字や書体の特性を知り、長年にわたり培われてきた文字組版の技法を学び、制作物の品質向上をめざすセミナーを開いている。DTPオペレーターや学生に喜ばれている。
▽モリサワカレンダー
人間の歴史とともに歩んできた美しき文字の世界をカレンダーとして制作している。これまで全国カレンダー展など数々の賞を受けた。17年版カレンダーは「ドイツ国際カレンダー展」で企業カレンダー部門銅賞を受賞し、国際的にも評価されている。
18年版カレンダーは、国宝「源氏物語絵巻」を取り上げ、文字の美しさに焦点をあてつつ優雅で格調高い王朝世界を表現した。
▽知的財産セミナー
印刷物をはじめ創作には、著作権など知らなかったではすまされない法務リスクが多数存在することから、モリサワでは企業としておさえておくべき知的財産対策をわかりやすく解説するセミナーを開いている。

 

 

 

 

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