2017年12月11日

モリサワ会(浅野健会長、会員140社)は11月30日午後3時から、東京・九段下のホテルグランドパレスで「光源氏の色好み-付 国宝源氏物語絵巻詞書-」をテーマに秋期研修会を開き、中央大学教授文学博士の池田和臣氏から源氏物語の一般的なイメージを払拭する話を聴いた。池田氏は、「モリサワカレンダー二〇一八『かな語り』」にも触れ、用いられている五島美術館本は、「伝統的・端正・優美・繊細・連綿美・重ね書きの素晴らしさ」という特徴のある第Ⅰ類とよばれる筆跡のものであり、「筆線や字形の美しさとともに、散らし書き重ね書きの素晴らしさを味わいたい」と説明した。研修会は塚田司郎副会長のあいさつで開会した。
 

浅野健

浅野健会長


 
 

「源氏物語は政治権力獲得の物語」


 
池田氏は「源氏物語は主人公光源氏の華麗な恋愛遍歴の物語か?」と問題を提起。
「源氏物語は性事による政治権力獲得の物語」であるとし、源氏物語とは、天皇(桐壷帝)の子に生まれ、天皇になる器をもちながら、左大臣と右大臣の権力闘争を避けるため、天皇家から臣籍降下された光源氏が、秘められた形で天皇(冷泉帝)の父になり、実質的に天皇と同じ政治権力を手に入れる物語であり、たんなる恋愛物語ではないと説明した。
色好みとは、神や古代の王様の「権力や徳の大きさ」を現している。古代の王は支配を広げるため、有力な豪族たちと政略結婚によって結びついた。沢山の豪族の娘と結婚した王ほど広大な支配権を手に入れた。色好みは王の政治的力量と人徳を示すものであった。
光源氏は古代の神や王の色好みを引き継いで色好みを発揮するが、その子供(冷泉帝=天皇、明石の姫君=皇后、夕霧=左大臣)は、光源氏の政治権力を支える地上の最高の地位の存在のみ。
継母藤壺との密通は、不道徳で淫乱な男女関係を描くためではなく、天皇になる子(冷泉帝)を生ませるためであった。
 
池田氏は、国宝源氏物語絵巻詞書についても説明。①第Ⅰ類=伝統的・端正・優美・繊細・連綿美・重ね書きの素晴らしさ②第Ⅱ類=強く重厚・平安末期の新風③第Ⅲ類=能書ではない。絵巻作成の下命者か④第Ⅳ類=堂々とした筆跡。同筆の遺品(今城切=古今集)あり。藤原教長筆とされる⑤Ⅴ類=Ⅳに類似。伝寂蓮風の筆跡という5種類の筆跡を示して、第Ⅰ類の優れていることを明らかにした。
モリサワの2018年カレンダーでは、すべて第Ⅰ類の筆跡である五島美術館本から、鈴虫巻(1-6月)、夕霧巻(7、8月)、御法巻(9-12月)が用いられている。
 

池田和臣

池田和臣氏


 
 

ウィンドウズにも搭載 ラテン系フォントも開発

 
懇親会は浅野健会長のことばで開会し、モリサワ・森澤彰彦社長が歓迎あいさつで同社の活動を報告した。
 

「文字を通じて社会に貢献することが社是である。ウィンドウズに標準搭載しないのかといわれてきたが、タイプバンクが10年ほど開発していた『UDデジタル教科書体』が『Windows 10 Fall Creators Update』において標準搭載される。UD教科書体以外のUD書体についても一部ではあるが、無償で3書体、『オフィス』で使えるように公開する。
日本語だけではビジネスがしづらくなっているという事実もある。印刷・出版関連のお客さんが大多数を占めているが、新しいマーケットのゲーム会社やインターネット系のコンテンツを制作される方々からは、多言語対応を迫られている。それに対応するために東南アジアのフォントメーカーと組んで韓国語、中国語の開発を進めてきているが、一番ニーズのあるラテン系の言葉についても本格的な取り組みを始めた。その第一弾としてアメリカのロードアイランド州プロビデンスに『モリサワ・プロビデンス・ドローイング・オフィス』を開設し、オープン書体の開発をスタートした」
 

森澤彰彦

森澤彰彦社長


 
 

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