2017年11月27日

北九州市環境局は、上海市との大気環境改善交流協力の一環として、10月22日から28日にかけて、上海市印刷関係企業訪日研修団一行28人を含む総勢30人で、日本国内の包装印刷関連企業9社および日本印刷産業連合会を訪問し、日本の印刷産業および印刷会社における揮発性有機化合物(VOC)をはじめとする大気汚染物質への取り組み状況、環境装置などの最新技術について視察、意見交換などを行った。

 

26日には、全国グラビア協同組合連合会会長の田口薫氏が社長を務める、軟包装グラビア印刷専業者の大日本パックェージ㈱本社工場(埼玉県越谷市)を訪れ、触媒式燃焼装置、印刷現場の環境改善に一役買っているプッシュ・プルなどを見学した。
 
北九州市と中国との大気汚染に関する交流は、2013年5月、北九州市において「第15回日中韓3カ国環境大臣会合(TEMM15、the 15th Tripartite Environmental Ministers Meetingsの略)」が開催され、大気汚染問題については、互いに理解を深め、協力し合うことを通じ、解決を図っていくことの重要性が認識され、新たに3カ国による政策対話を設置するなど今後の協力の推進が確認されたのが契機。
 
2014年4月、韓国・大邱(テグ)で開催されたTEMM16において、大気汚染問題については都市間協力を歓迎する意向が示されたのを受け、北九州市は、上海市を含む中国4都市を対象に、14年度から大気環境改善の都市間連携事業をスタートした。
 
 

田口薫社長(左端)

田口薫社長(左端)


 
来日したのは上海市環境保護局汚染防止所の仁菊萍所長を団長とする一行27人。これに北九州市環境局、同環境国際戦略課、通訳を加えた30人が26日、埼玉県越谷市にある大日本パックェージ本社工場を訪れた。
 
田口社長は、お茶とお菓子の饅頭をふるまい、バスの移動の労をねぎらいながら、宋代に日本に伝来したお菓子、唐代にもたらされたお茶を例に、「日本と中国は古くから結びついている。中国から伝わった漢字などの文化が長い時間を経て日本では変化しながらも根付いている。短い滞在期間ではあるが、日本の文化を見ていただきたい」とあいさつした。
 
田口社長は日本のグラビア印刷業界についてこう述べた。
 
「日本の国土は中国の25分の1しかないので、業界がまとまることができた。日本の大気汚染防止法は、環境省と日本印刷産業連合会との合作で出来上がった、法律と自主規制を組み合わせたベストミックスの産物である。その結果、グラビア印刷から排出していたVOCを80%前後削減できた」
 
「日本は国土が狭いので、ここは工場が住宅のそばにある。14年前に工場が稼働した時には、環境装置を導入してVOCの排出抑制、悪臭処理などに取り組んだ。生産設備のほかに環境装置を導入することは、中小企業にとっては大変な負担となったが、その甲斐あって、今では住民の方々にも理解が得られ、良好な関係を築いている。皆さんの工場に比べると狭く、見学もしづらいと思うが、日本の中小企業が取り組んできた成果、装置を見ていただき、中国での工場運営の参考としていただければ幸いである」
 
諸石武士常務が、会社概要、「社会(S)との円満な共生を目指し、お客様(C)、消費者(C)の満足と社員のその家族、協力先の方々(S)の幸福のために貢献する」という同社の経営理念〝SCCS〟、屋外の新鮮な空気を印刷工場の天井か送り込み、印刷機のギヤーサイドと床面から排気を吸収、排出し、クリーンな環境を守るプッシュ・プル、印刷現場での印刷品質検査、衛生管理、安全対策、消防訓練などについて説明し、「大気汚染防止法、埼玉県生活環境保全条例を遵守する工場である」と付け加えた。
 
イオン吸着式全熱交換システムによる空調部門での省エネ効果として、ガス代を60%、電気代を15%削減していることについても明らかにした。
 
 

田口社長「日本は過剰品質の国」

 
質疑応答で田口社長は、大日本パックェージの本社工場ではフィルム印刷をこなしており、印刷に乾燥時に発生するVOCガスは、ドライヤー内で循環させ、溶剤の爆発下限界の4分の1の濃度に濃縮されたものを触媒式燃焼装置で燃焼処理し、排熱は印刷機の乾燥や空調に利用していることを補足説明した。
 
見学時に関心の高かった水性印刷については、「フィルム用の水性グラビアインキは完成しているが、印刷機のスピードが遅い、レトルトパウチには使えないなどの課題がある。日本は過剰品質の国である。印刷物の値段は工業製品並みだが、品質は工芸製品を要求される」と説明した。
 
「日本で無溶剤ラミネートが普及しないのはなぜか」「触媒燃焼装置の熱源には何を使っているのか」「VOCガス濃度が低いときはどうするのか」「触媒は交換する必要があるのか」「UV印刷やオフセット印刷で軟包装を印刷しているものもあるが、それらはグラビア印刷を置き換えるのか。グラビア印刷の今後をどうみるか」「ドライラミネートのVOC排出ガスはどう処理するのか」などの質問が続出した。
 
 

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