2017年10月31日

ハイデルベルグ・ジャパン㈱(本社・東京都品川区、水野秀也社長)は10月20日、オフセット印刷の完全自動運転を実現する「Push to Stop」コンセプトに基づいて設計されたdrupa2016モデルの最新鋭印刷機「スピードマスターXL106-5」を今年1月に納入した㈱大鹿印刷所(本社・岐阜県揖斐郡大野町上秋357、大鹿道徳社長)で記者会見を開催し、その納入経緯と稼働実績などについて紹介した。

 

スピードマスターXL106-5

スピードマスターXL106-5

ハイデルベルグ社が提唱する「Push to Stop」コンセプトとは、ワークフローシステムからジョブ情報を受け取った印刷機が自動的にジョブ替え作業から本刷りまで行い、オペレーターが機械を停止させる操作ボタンを押さない限り、指定した複数のジョブを次々と連続的に自動運転していくというもの。

大鹿印刷所に納入した菊全寸延び判油性5色印刷機「スピードマスターXL106-5」は、毎時1万8000回転の最高印刷速度を有し、かつ全自動で全胴の刷版交換を約90秒でしながらその間にブランケット洗浄や圧胴洗浄も並行して行うことができるモデル。

その高い基本性能を持つ印刷機に、▽インライン色調管理装置「プリネクトインプレスコントロール2」、▽ジョブ替えの自動化を図るソフト「インテリスタート2」、▽印刷機制御コンソール「プリネクトプレスセンターXL2」--の機能を組み合わせることで完全自動運転を実現している。

 

「プリネクトインプレスコントロール2」は、印刷機内部にある分光光度計で全印刷物のLab値を測定し、その結果に応じて印刷機のインキキーを自動補整しながら見当も合わせるシステム。

印刷中の色調変動を制御することはもちろんのこと、正紙を通し始めると60枚から色調補整が開始され、色合わせ作業も自動で行える。

「インテリスタート2」は、現在のジョブや次のジョブの内容をすべて認識し、それに応じてなにをどの順番で処理すればもっとも効率良くジョブ替えができるかを判断し、それを自動で実行するソフト。

これにより、ジョブ替え、刷り出し時の調整作業、印刷中の監視・制御を自動化できるので、用紙やインキの交換がなければ、オペレーターは排版された刷版を取り除いて次のジョブの刷版をセットするだけで複数ジョブを処理できる仕組みとなっている。

 

大鹿社長

大鹿社長

会見の席上、大鹿社長は「スピードマスターXL106-5」の導入を決めたポイントについて、「当社は明治33年の創業当時から食品関係の仕事をしており、現在でもほとんどが食品パッケージ関連の仕事となる。巷ではパッケージ印刷分野は拡大・成長が狙えると言われているようだが、実際には激しい価格競争・品質競争がある。その中でも利益を出していくには、効率化によるコストダウンをしていく必要がある。そんな時に、“既設の印刷機2台分の仕事が、自動化などの効果による実生産力の高さから1台でできるようになる”という提案をハイデルベルグ・ジャパンから受けた」と説明。

そのような経緯から、17年間稼働させてきた菊全判4色機と菊全判5色機との入れ替えで、「スピードマスターXL106-5」の導入を決めた。

 

大鹿印刷所での「スピードマスターXL106-5」の主な用途は、包装紙の薄紙印刷。品質要求が厳しいことから、許容色差はΔE1以内というシビアな社内基準を設けながらも、刷り出し時の損紙については120~180枚で本刷りに移り、印刷中の色変動も「プリネクトインプレスコントロール2」によって制御している。

また、既設機でのジョブ替え(前の仕事の刷了から次の仕事の本刷り開始まで)の時間は30分弱かかっていたが、現在は平均で約13分。

この平均時間は用紙やインキを替えるケースも含めたもので、その必要がない場合はだいたい7~8分程。

平均ロットは約3000枚で、現在では1シフト(8時間)平均で18ジョブを処理しており、稼働が本格的に軌道に乗った今年4月頃からは既設印刷機2台分の通し枚数を超える生産量をこなしている。

 

この生産性向上の影には、印刷機制御コンソール「プリネクトプレスセンターXL2」の貢献もある。

「プリネクトプレスセンターXL2」では30件までのジョブ情報を受け取れ、その場でジョブの順番を変更することができる。

「スピードマスターXL106-5」で5色目を使うジョブが大鹿印刷所では約4割にとどまることから、インキ替えや用紙替えを要さないようなジョブを意図的に連続させることで、自動運転の能力をいっそう発揮させて稼働効率をさらに高めている。

 

プリネクトプレスセンターXL2の画面 ΔE1以内というシビアな条件にも自動色調補整は対応する

プリネクトプレスセンターXL2の画面 ΔE1以内というシビアな条件にも自動色調補整は対応する

さらに大鹿印刷所では、自動運転による効果を高めるための工夫として、▽基準値印刷による運用、▽用紙種類の集約化--を図っている。

印刷見本に合わせて印刷機のインキキー操作をすることはなく、「プリネクトインプレスコントロール2」による色合わせの自動化機能を活かせるよう、顧客との打ち合わせと印刷よりも前の工程でのデータ調整を徹底。

そしてプリネクトによる一元管理化と、印刷工程ではなんの操作や調整はせず誰が刷っても同じ品質になること(すなわち「プリネクトインプレスコントロール2」による制御)を基本としている。

また、これまではサイズや種類の分類を細かくしたことで20種類以上あった用紙について、分類を大まかにして5~10種類に集約し、自動運転による高効率化を妨げる要素の1つとなる用紙交換の頻度を減らしている。

 

そして、印刷準備および印刷がすぐにできる瞬発性の高さを活用して、「厚紙を使う紙器印刷については“すぐに欲しい”というニーズがよく寄せられるので、当社内に在庫を持って対応している。しかし、この自動運転機能を持った印刷機は、すぐに印刷ができるプリントオンデマンド化の対応力にもすぐれているので、将来的には厚紙用のUV機も導入して在庫レス化を図るとともに、品質・コスト・小回り対応をもって市場での差別化していきたい」と大鹿社長は次なるステップの腹案を明かした。

 

 

 

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