2017年10月30日

少子高齢化が進み、地方の中小企業ではこれまで以上に採用難になることが予測される。そのような中でもすぐれた人材を確保しなければ、企業の永続的な維持・発展は望めない。とは言え、労働者・求職者にも就労先を選択する自由があるので、企業側はすぐれた人材から選択されるような魅力を持たなければならない。そこで秋田活版印刷㈱(本社・秋田県秋田市寺内字三千刈110の1、畠山紀夫社長)では、法律などによる制度化に先駆けて社員の子育てや健康増進を積極的にサポートする施策を展開することで、すぐれた人材の確保に努めている。そのような施策を進めた結果、今年2月に経済産業省・日本健康会議が推進する「健康経営優良法人認定制度」において、中小規模の印刷会社としては全国初、さらには県内の企業としても初となる認定を受けた。

 

法律による制度化に先駆けて
社員の子育てなどをサポート 

 

 

畠山社長

畠山社長

同社は昭和21年に創業し、現在の従業員数は関連会社も含めて約70人。総合印刷会社として商業/出版印刷をはじめ、高精細印刷を駆使した高級印刷物、カレンダーといった紙メディアの製作を主力業務としながらも、Webシステムの構築やデジタルコンテンツの制作、さらには学会/協会向けに電子論文投稿システムや講演会システム、ホテルや公共施設の予約管理システムといったASPサービスまで展開し、社名から連想されるイメージとはかけ離れた先進的な取り組みもしている。

 

同社が社員の子育てや健康増進を積極的にサポートする施策を始めたのは、今から20年以上前にまでさかのぼる。法律によって育児休業制度が義務付けられたのは平成7年だったが、同社では平成5年に制度化しており、厚生労働省ファミリー・フレンドリー企業表彰を受賞。そのほかにも「男性の育児参加促進事業主」に指定されたり、「秋田県子ども・子育て支援知事表彰」でも表彰された。このような取り組みをするようになった背景として同社の畠山社長は「きっかけは人材獲得のためだった。若者は東京などの都市部へ流れてしまいがちなのだが、女性は比較的地元に残る傾向がある。ただ待っているだけではすぐれた人材は確保できないので、魅きつける仕組みを作ろうと思った。すぐれた人材であるならば性別で区別する必要はないので、結婚や出産といったライフステージの変化があっても働きたいという要望に応えるために、法制化に先取りして取り組んだ」と語る。その結果として、従業員側は積み上げてきたスキルやキャリアを無駄にすることなく長期にわたって安心・安定して働くことができ、企業にとってもすぐれた人材を長く確保できるというメリットが享受された。

 

健康で働きやすい職場を作り
求職者から選ばれる会社に

 

 

このような取り組みで好循環を果たしていることから、協会けんぽから健康経営優良法人認定制度への申請を勧められた。健康経営優良法人認定制度とは、健康経営に取り組む優良な法人を顕彰して見える化することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境の整備を目的としたもの。認定企業は、地方銀行から低利で融資を受けられたり、従業員が住宅ローンを組む際に金利面で優遇を受けられたりするケースがある。また、就職説明会で求職者に職場の魅力をアピールしやすくもなる。

 

健康経営優良法人の認定には各種の評価基準の要件をクリアする必要がある。その中の「制度・施策実行」の面では、従業員の健康課題の把握、メンタルヘルス対策、職場の活性化、健康増進・生活習慣病予防対策、過重労働対策といった項目がある。同社ではそもそもの取り組みで要件を満たしている部分も多くあったが、それに加えて、▽社屋内の完全禁煙による受動喫煙の防止、▽全社員への第三者によるストレスチェックの実施、▽食生活改善・健康増進のための情報の周知、▽時間外労働の適正化、▽有給休暇の1時間単位での付与――といったことも新たに行った。「これまでは繁忙期になると時間外労働が長くなることもあったので、労務管理を徹底し、誰がどのくらい時間外労働をしているかをすべて把握できるようにすることで対応している。また、たいていの中小企業では有給休暇は半日単位だが、たとえば歯医者へ行くだとか、子供をちょっと病院へ連れていくといった場合、1~2時間で用は済んでしまう。労働者側にとっても有給休暇の有効活用という面でロスが出るし、企業側としても半日分の人手を失うことになる。1時間単位ならば、双方にとって時間を有効に使える」(畠山社長)

 

印刷現場の環境整備の一環として
現像レスCTPプレートを採用

 

 

現像レスプレート出力専用ラインとして稼働する「アバロンN8-52」

現像レスプレート出力専用ラインとして稼働する「アバロンN8-52」

また、印刷現場の労働環境整備も従業員の健康増進の大きな要因となる。「当社では平成22年に初めてのCTPを導入したが、その時から現像液によるVOCの放散がなくて従業員の作業環境にやさしいという点を重視し、現像レスのプレートを採用した。健康経営優良法人の認定要件には入っていないが、健康・環境に配慮する上で現像レスプレートの貢献は大きい。また現像レスプレートをベースに、環境保護印刷推進協議会が制定するクリオネマークも取得している」と畠山社長は話す。その上で同社は、プレートの視認性の高さ、そして高精細印刷のしやすさという点で抜きん出ていると評価し、アグフア社製の四六全判サーマルCTP「アバロンN8-52」と現像レスCTPプレート「アズーラ」、さらに付加価値向上を目指して高精細XMスクリーニング「スブリマ」を採用した。この「スブリマ」については、340線の高精細印刷が比較的簡単にできることから、高級印刷物へと営業の幅を広げている。

 

同社では今後も、健康経営に関する活動をさらに強化し、年度ごとの更新が必要となる健康経営優良法人の認定についても継続していく方針だ。「従業員が健康な状態で働いてくれること、それこそが企業にとってなによりのメリットだ。まだ具体性はないが、将来的には産休や育休中でも働きたいという人のために、通信/クラウド環境を整備して在宅勤務やサテライトオフィス化も視野に入れている。せっかく採用したすぐれた人材を有効に活用するためにも、これからも人が活きる企業を目指していく」と畠山社長は今後の体制作りを見通している。

 

日本印刷新聞 2017年10月30日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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