2015年04月17日

亀井雅彦代表理事

PODi日本法人の亀井雅彦代表理事

デジタル印刷は、セグメントしたマーケティングや在庫レスなど、オフセット印刷にない特徴を生かしてこそ価値が生まれる。デジタル印刷の推進を目的に運営されているPODi日本法人の亀井雅彦代表理事に、デジタル印刷の可能性と課題を聞いた。

紙とWEBの両翼が鍵

――PODiは1996年アメリカで設立された非営利団体とお聞きしている。
亀井 デジタル印刷の推進のために設立した非営利団体で、インディゴなどが登場したデジタル印刷の黎明期から活動している。現在アメリカは約800社のユーザー、50社のメーカーが参加している。日本法人も2012年に設立され、アメリカ・イギリス・日本の3拠点で活動している。
500ほどの事例を持ち、ケーススタディを自社の経営者や営業マンが学ぶのはもちろん、顧客にアメリカの事例を学んでもらって、デジタル印刷の採用につなげることもできる。メンバーはケーススタディをどのように活用されても問題はない。

――アメリカはDMの先進国であるが、デジタル印刷の活用事例は多いのではないか。
亀井 すべての商品を網羅しなければならなった(通販カタログのような)広告物が、購買履歴などの顧客データを活用することにより掲載する情報を絞り込み、DMとして発送することが当たり前のようにできるようになった。(ネットでいう)リコメンド機能のようなものが、印刷物でも行える時代になっている。

――紙かウェブ化という二極論ではない。
亀井 完全にメディアがクロスしてきている。例えば印刷物のQRコードやARを起点にウェブに誘導してインバウンドにつなぐ効果が重要になってくる。アメリカの通販会社もカタログを減らせば(ウェブの)注文が減ることが分かってきて、印刷物を減らすことに慎重になっている。日本の通販会社も紙とウェブの連動する仕組み対し、さらに積極的になるのではないか。

――顧客データの活用により、単に既存客にDMを送るのではなく、さらにフォローできるようにもなってきている。
亀井 購買は一回の広告で決まるのではない。クロージングまでの道のりは顧客との会話のようなもの。AIDMAモデルなどがあるが、(消費者のプロセスの)それぞれの段階でどういったメッセージを送るのかが重要になっている。注意喚起の段階と購買決定の段階とでは、送るメッセージも変わってくる。これはDMに限ったことではないが、DMもその(一連のマーケティングの)役割の一翼を担うことができる。

デジタルの強みを生かした提案を

――DM・カタログ以外で注目されている分野は。
亀井 パッケージが非常に熱い市場になっている。例えば同じ商品でも、パッケージのキャラクターが選べる仕掛けなどが増えている。また季節ごとにもパッケージを変える動きもある。アイテムの数が増え、さらに季節の時間軸が組み合わされば、まさに商品数は激増し、非常に多くのバージョンが必要となり、あらゆるパッケージのロットが小さくなると考えている。それによってデジタル印刷の出番が増えると考えている。
ただ、課題は印刷適性である。フィルムそのものに印刷できるインクジェット印刷機はUVしかない。一方オフセットもUVになるが、食品メーカーなどでは嫌がられる場合が多い。液体トナーのようにプレコートを引くなどすると、フレキソやグラビアよりもコストが跳ね上がってしまう。オフセットやデジタルが印刷適性のボトルネックを解消すれば、小ロット適性が高いため、市場は大きく広がると思う。

――出版印刷は。
亀井 アメリカの出版印刷においてもデジタル印刷による極小ロットが一般的になりつつあり、2017年には出版の22%がデジタル印刷になるといわれている。
しかし、オフセット印刷とデジタル印刷では、印刷コストそのものは圧倒的にデジタルの方が高い。何で強みを生かさなければいけないかというと、ロジスティックスとフルフィルメントだ。つまり在庫レスになって、在庫のコスト、廃棄のコストも問題が解消される。また出版社のキャッシュフローも改善する。逆にいうと、そこに価値を見出さなければ、デジタル印刷で印刷する意味がない。

MSP・PSP、各社のイノベーションに期待

――2016年、2020年にdrupaがあるが、デジタル印刷はどのような方向に進んでいくのだろうか。
亀井 かつてA3のコピー機の延長だったものが、ようやく(B2判の登場で)印刷の領域に入ってきた。まずはインクジェットの輪転機が活躍するだろうが、先ほどのロール・トゥ・ロールのギャンギングが重要になってくる。それだけでなく後工程を含めた仕事の流れをどう構築するかにかかっている。
デジタル印刷機は基本的には「ブラックボックス」で印刷会社の付加価値を出せずに、「印刷会社殺し」になりかねないと考えている。
導入さえすれば(印刷会社以外でも)誰でも刷れてしまう。ではどこで価値をつけるかというと、プロしかできない受注から発送にいたる仕組みづくりでいかに創意工夫をするかということである。
今後、イノベーションが勝負の分かれ目になるだろうが、アメリカの事例から学ぶことがより多くなるのではないか。アメリカの事例から日本でどう適用するかを考えて、印刷会社のみなさまにそれぞれのイノベーションを起こしていただければ。
マーケティング・サービス・プロバイダー(MSP)への転換が叫ばれているが、私はプリント・サービス・プロバイダー(PSP)でもまったく構わないと思う。受発注から後工程まで含めて生産にイノベーションを起こして、圧倒的なコスト優位性を構築してしまえば、プリント・サービス・プロバイダーとしても大きく成長できる。

――PODiの展開とデジタル印刷の可能性を。
亀井 ウェブを中心としたケーススタディの紹介のほかにも、アメリカの業界ニュース「What They Think」と提携した情報提供、日本の印刷会社の経営者向けの戦略コンサルティングなども行っている。ソリューションに対応するための営業教育をセミナー形式でも行っている。デジタル印刷は仕組みの構築、イノベーション次第で、儲かるビジネスだと思っている。
(日本印刷新聞5561号から一部抜粋)

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