2017年09月04日

現在のパッケージ印刷市場では、▽ナチュラルな質感の原反を使ったり、シンプルなデザインを施したもの、▽多色印刷や煌きのある表面加工や原反を活用した華美なもの--という2極化した傾向が見てとれる。パッケージ印刷を専門とした営業展開をしている㈱中央製版(本社・新潟県三条市下大浦518、小林吾郎社長)ではこの後者の傾向をいち早く捉え、箔押し機やUVシルクスクリーン印刷機などを増設し、華美なパッケージを製造するための対応をしてきた。その方向をさらに推し進めるべく、パッケージ製作における基幹工程であるオフセット印刷の部分で、生産能力と製作できるアプリケーションの幅の拡大を狙い、今年1月にKBA製の菊全寸延び判7色コーター付UV印刷機「Rapida106-7」を導入。パッケージ製作技術に関して顧客から寄せられるあらゆる要望に対し、「できません」と言わない製造環境の構築をさらに進めている。

 

パッケージ印刷に専門特化
日本全国を商圏に営業展開 

 

同社の創業は昭和37年、写真製版専業の会社としてスタートを切った。その後、昭和41年に印刷機を導入して印刷業に転業し、昭和59年には紙器加工部門を設けてパッケージ印刷に特化した営業展開をするようになった。現在は化粧品・食料品・医薬品・健康食品など、パッケージの中でもいわゆる化粧箱のような高級品を得意分野とし、東京と大阪に営業所を構え、北海道から九州までの広い範囲に顧客を持っている。

製造面では平成25年に本社新工場を建て、企画からデザイン、DTP、プリプレス、印刷、表面加工、抜き・貼りなどの後加工までの全工程を1ヶ所でできる体制を整えた。この新工場は、防虫衛生管理を含めた安定した品質保証体制を追求するとともに、これまでは印刷、抜き、貼りの3工場が別々の場所にあったものを集約したことで、スピード・納期の面でも高いレベルでの対応力を実現している。

 

フィーダー性能に大きな差
引き針がない新機構に魅力

 

塚田部長

塚田部長

同社で稼働するオフセット印刷機はすべて菊全寸延び判で、4色コーター付機、4色コーター付UV機、6色コーター付UV機の3台。このラインナップに新たに加わったのが「Rapida106-7」だ。同社製造部の塚田泰志部長は印刷機を増設することになった背景として、「1つは残業や外注が多かったことがある。印刷部門は8時間2交代制を敷いているが、印刷機の生産性が足りずに仕事量があふれて2シフトが繋がってしまうこともあり、外注も少なからずあった。そしてもう1つは、既設の印刷機は構成上の理由から、疑似エンボス加工をするには2パスしなければならず、さらにアルミ蒸着紙などに白インキを印刷する際の使い勝手も悪かった」と語る。そこで同社では、実生産性と付加価値印刷の両面を実現する印刷機を導入することを決めた。

同社では新しい印刷機を導入するにあたり、数社の印刷機メーカーに問い合わせ、同じ内容でテストを行った。「どのメーカーの印刷機も品質安定の仕組みや工夫は素晴らしかった。その中で大きな違いがあったのはフィーダーの性能だった」と塚田部長は選択の際の要因を挙げる。そのテストでは実際の仕事でよく使用する0.8㍉厚の紙での両面印刷をした。「このテストで唯一“Rapida106”は、フィーダーでバタつかないでまったく問題なく流れた。逆に、コシがない薄紙でもとても簡単に紙が流れていった。また、引き針がない“ドライブトロニックSIS”という珍しい機能も大きな魅力だった。用紙がインフィード部を通過する時に赤外線を当ててどの位置にあるのかを1枚1枚検知し、それに応じてグリッパーが動いて正しい位置に用紙を調整して送っていく。スキルレス化も図れるし、パッケージ印刷で針飛びがあると見当が合わないという問題があるので、とても魅力的だった」と塚田部長は決断の理由を明かしている。

 

期待以上のパフォーマンス
実生産性は体感的に約2倍 

 

 

Rapida106-7

Rapida106-7

実際に稼働を開始すると、「Rapida106-7」の生産性は当初の期待を上回るパフォーマンスを示した。可能な仕事(全体の1割程度)については機械最高速の毎時1万8000回転で印刷し、平均でも毎時1万3300回転で稼働。既設機でもっとも近い機械構成となる6色コーター付UV機だと平均で毎時8700回転なので、稼働速度だけを見ても1.5倍超の生産性向上となる。

また、「Rapida106-7」は機械停止している時間が短く、実稼働に長い時間充てられることも生産性向上に寄与する。セット替え時間については、ほとんどの仕事で特色を使用するため頻繁な色替えを要するにも関わらず、平均で34.7分(6色コーター付UV機では54分)。これは、サーボモーターで各ユニットの版胴を独立して駆動させる「ドライブトロニックSPC」による効果が大きく、洗浄などをしている間に全胴の刷版交換(ユニット数の多少に関わらず約1分で全ユニットの刷版を交換)が完了する。「当社の仕事の平均ロットは2000~3000枚だが、その間にフィーダートラブルで1~2回停まってしまうことが多かった。その復旧に数分かかり、その後の刷り始めでまた色を合わせるので、時間のロスという面でもオペレーターのストレスという面でも負担になっていた。このようなチョコ停が“Rapida106-7”ではまったく起こらない。総合的な生産性は2倍以上にのぼると思われ、実際に外注することがほとんどなくなった」と塚田部長はその能力を高く評価する。

さらに、用紙搬送についてもすぐれているという。「印刷物にキズが入ることもなく、波打った特殊紙に印刷する時の用紙搬送もスムーズ。また、ラベルなどの仕事で薄紙に印刷をすることが時々あるが、これまでは紙厚変更でとても苦戦していた。この“Rapida106-7”は紙厚の数値を入力すると爪台やエアーなどの各種設定を自動でやってくれるので、すぐに取り掛かれて、しかも簡単に印刷できてしまう」(塚田部長)

 

紙幣印刷の技術を応用した
高い品質保証体制を採用

 

 

ターゲット濃度とのズレがオンタイムで画面表示される

ターゲット濃度とのズレがオンタイムで画面表示される

品質保証体制の追求という面で同社がこの「Rapida106-7」に搭載した機能が、最終胴の圧胴上を通過する印刷物をカメラで撮像して、インラインでインキ濃度管理をすると同時に見当精度と欠陥検知もする「クオリトロニックプロフェッショナル」だ。世全界で流通する紙幣の9割以上はKBA製の印刷機で製造されており、「クオリトロニックプロフェッショナル」はその紙幣印刷機で用いられる技術を応用したものとなる。インキ濃度管理の機能としては、刷り出し時に最速・最短で目標濃度まで自動調整することができる。ただ同社の仕事のほとんどのケースでは、見本に色を合わせることが求められる。そのため、OKシートが得られるまではインキキー操作で色を合わせていき、色が合ってからは刷了までその色を保つように自動調整するという運用形態を採っている。「1回OKシートが得られると、あとは印刷機がすべて管理してくれるので、完全に任せることができる。実際の仕事では印刷中にオペレーターが抜き取りチェックをしているが、理論的には抜き取りチェックをする必要がないし、もし実際に抜き取りチェックをまったくしなかったとしても結果としては大丈夫だったほどの精度がある」と塚田部長は語る。

実際の機械割りでも、難しい仕事はこの「Rapida106-7」でやるようにしており、また印刷立ち会いの仕事も積極的に割り振っている。「印刷機側で色管理をしているので、納品する印刷物の色が一貫して安定する。またシビアな要求がある印刷立ち会いでも、印刷制御装置のウォールスクリーンに映る印刷中のインキ濃度変化のグラフを見てもらうと、品質管理と安定性の高さからすぐに納得してもらえる」(塚田部長)

ただKBA製の印刷機は、海外では豊富な実績があるものの、国内ではまだあまり稼働実績がないので、導入する上で不安がないわけではなかったという。「不安に思ったのはアフターサービス。KBAジャパンの最寄り拠点は東京なので当社から遠いし、立ち上がって数年の会社なのでサービススタッフの人員も多くはないだろう。その不安を払拭してくれたのはリモートメンテナンスサービスだった。この印刷機がKBA本社のサービス部門と常時接続され、もしトラブルがあれば印刷機内の状態を診てくれて、リモートで直せるならば即座に対応してくれる。小さな初期不良があった時にこのリモートメンテナンスサービスですぐに問題解消するところを目の当たりにし、距離の壁を超えて信頼できるシステムなのだとわかった」(塚田部長)

 

柔軟な機械構成を活用して
高付加価値ニーズにも対応

 

 

クオリトロニックプロフェッショナルのカメラ

クオリトロニックプロフェッショナルのカメラ

同社の既設機でもっともユニット数が多かった6色コーター付UV機にはUVランプを入れられる場所に制限があり、6胴目とコーターユニットの間に入れることができない。したがって疑似エンボス加工の仕事を1パスで行うことができず、その場合は2パスで対応していた。一方、この「Rapida106-7」はどの部分にも胴間用のUVランプを入れることができ、あらゆるアプリケーションを柔軟に製作することができる。「仕事の振り分け方としては、印刷スピードが速いので比較的ロットが長い仕事、要求品質や難易度が高い仕事、カラー+OPニスの仕事、そしてアルミ蒸着紙などに白インキを引く仕事などを優先して“Rapida106-7”で回している。現在当社では、華美なパッケージ製作への対応力を重視している。原反の安定搬送もできることから、これまではあまりやってこなかったPET素材への印刷などもやっていきたい」と塚田部長は期待を表す。そして、同社では今後、「Rapida106-7」を活用して高付加価値印刷への対応力を上げるとともに、顧客からの技術的要望に対して「できません」と言うことなく応えられる体制をさらに固めていく。

 

 

 

月刊 印刷界 2017年4月号掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

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