2017年09月04日

自分が顧客の立場だと気軽に使ってしまう「絶対に大丈夫ですよね?」という言葉。もちろん、常にそのつもりで仕事をしているものの、キズ、汚れ、色ブレなどが絶対にない印刷製品を納めるのはとても困難なことで、製造現場にはとてつもないプレッシャーがかかる。そこで㈱四ヶ所(本社・福岡県朝倉市馬田336、四ヶ所大輔社長)では今年6月、既設の菊全判4色機に東京印刷機材トレーディング㈱(本社・東京都荒川区、仲尾康弘社長)が提供するLED-UV乾燥装置「Dry-G」と、インライン紙面検査装置「BOTHΣSENSOR」を後付けで搭載した。これにより、高水準な品質保証を求める顧客ニーズに応え、かつ印刷現場のプレッシャーを軽減するような生産環境の構築を進めた。

 

LED-UVで即納ニーズに対応
積算光量の大きいモデルを選択

 

同社は昭和14年に創業した、地元に根ざした営業展開をする総合印刷会社。商業印刷を事業のベースにし、デザイン・制作からプリプレス、印刷、ポストプレス、発送までを一貫して行える設備を擁している。とくにページ物を得意とし、印刷機は菊全判4色機が2台、四六四裁2色機が1台、そしてB3判4/4色のオフ輪を備え、顧客から寄せられるさまざまな仕事に応えられる体制を整えている。

 

四ヶ所社長

四ヶ所社長

3台の枚葉オフセット印刷機はすべて通常の油性機だった。校了がどんどん遅れる傾向にも関わらず納品期日は変わらないことから、刷了の数時間後に発送せざるを得ないケースが頻発し、乾燥不良にまつわる事故も起きていた。「即納する仕事の場合、裏移りする可能性が高いのを承知で対応していた。したがって印刷事故も月に1件以上あり、そのたびに刷り直しや全品目視検品をすることとなり、コストや人手がかかっていた」と四ヶ所社長はLED-UV乾燥装置を導入する前のことを振り返る。そこで同社では、主力機である菊全判4色機の1台をUV印刷化することにより、この課題を乗り越えていくことに決めた。

 

UV印刷にはさまざまな方式があるが、同社では今後の市場の趨勢、そして技術進化の伸びしろの大きさからLED-UVに絞って検討を開始。インキ乾燥性能の肝となる積算光量(=UV照射強度×照射時間)が大きいことを条件に選定を進めた結果、用紙進行方向の照射幅が一般的なLED-UV照射器と比べて格段に広いのでインキへの照射時間も長くなることから積算光量が3~4倍になるという特徴を持つ「Dry-G」を選択した。「積算光量が大きいのでオフ輪に搭載された実績もあるという話を聞き、充分な乾燥性能があると判断した。また、照射部がコンパクトで印刷機に設置しやすいこと、消費電力が小さいこと、そして万一トラブルがあった際に遠隔診断をしてもらえることも採用を決めた一因となった」と四ヶ所社長は決断の理由を明かす。

 

Dry-GとBOTHΣSENSORを後付搭載した菊全判4色機

Dry-GとBOTHΣSENSORを後付搭載した菊全判4色機

同社では1年前から、環境負荷低減を図るため、工場の省電力化に取り組み、工場照明の全面LED化、空調設備の更新、プロセスフリーCTPプレートの採用による自動現像機の撤廃、印刷機のブロアー交換などをした。そして今回、LED-UV乾燥装置と印刷品質検査装置を導入したことで消費電力は増えるが、それでも省電力化に取り組む前と比較すると電力消費量は減っているという。「LED-UV乾燥装置や品質検査装置の電気代は見えにくい部分だが、それなりのコストになる。これらの導入を生産性・利益率アップに直結させたいので、コスト増となる部分を吸収できるように前もって省電力化に取り組んだ。その副産物として、照明から発せられる紫外線がないので、インキツボ上でインキが乾燥することもない。また、先に採用していたコダック製のプロセスフリープレート“SONORA XJ”がUV印刷に対応するものだったことも功を奏した」(四ヶ所社長)

 

現在、一般的な仕事では「Dry-G」の出力強度は7割程に抑えつつ、毎時1万1000~2000回転で印刷し、問題なく即乾している。「LED-UV乾燥装置を搭載した後は、インキ乾燥やパウダーにまつわる事故がまったくなくなり、印刷オペレーターの心理的負担も軽くなった。また、2回通しを要する多色印刷もすぐに印刷にかかれる上、ベタの上にベタを乗せることも気楽にできる。それになにより後工程の乾燥待ち時間がなくなり、それにともなって配送スケジュールがクリアになった。これまでは当日になっても配送時間を変更することが珍しくはなかった。1台の印刷機にLED-UV乾燥装置を後付け搭載しただけだが、あらゆる面に波及効果が広がり、工場全体の生産性が約1.3倍になった」と四ヶ所社長が語るとおり、印刷工程の効率化が工場全体に大きな効果を及ぼしている。

 

インライン品質検査装置による全紙検品で
印刷オペレーターにも顧客にも安心を提供

 

 

最終胴後にカメラで検査をする

最終胴後にカメラで検査をする

そして同社では、LED-UV乾燥装置「Dry-G」と同時に、顧客からの要請が強まっている品質保証についても強化すべく、インライン紙面検査装置「BOTHΣSENSOR」も後付け搭載した。この「BOTHΣSENSOR」は、印刷紙面の咥え尻までしっかり見ることができる点を評価して採用した。「抜き取り検査では、検査している間に印刷されたものをチェックすることはできない。最近の顧客の傾向として、価格だけではなく品質保証も求められる。そこで、全紙検品という大きな安心を提供するとともに、印刷オペレーターの負荷も取り除きたかった。またLED-UV印刷なので、印刷物が検査カメラを通過した後にパウダーのボタ落ちや裏移りが起こることもない。この“LED-UV×インライン紙面検査装置”の組み合わせにより、顧客の要求を超えるレベルの高精度な品質保証体制となった」と四ヶ所社長は語る。

 

「Dry-G」と「BOTHΣSENSOR」の活用により、生産性向上、スケジューリングの明確化、即納対応、品質保証体制による印刷事故低減、省電力化という進化を遂げた同社。次なるステップは、マーケティング事業の強化を進めていく方針だ。「我々の顧客である地元の中小企業のみなさんに、マーケティングのノウハウを提供していくことで、地域の振興に貢献していきたい。経験や実績、人的ネットワークを基礎とした従来型の経営スタイルにも良い点はあるが、それにマーケティング・市場分析という要素を付加してもらうためのコンサル活動に注力し、それを通して地場の活性化と印刷メディアの価値向上につなげたい」と四ヶ所社長は今後の展望を語っている。

 

日本印刷新聞 2017年7月31日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

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