2017年07月29日

紙器製品の企画・デザインから製造・販売までを手掛ける㈱タナパックス(本社・愛知県名古屋市中村区松原町2の20、田中正博社長)では、これまで印刷工程に関してだけは協力会社に外注をしてきた。そのような同社が方針を大きく転換し、自社で印刷機を有し、一気通貫の生産体制を敷くことを決めた。同社として初めて導入する印刷機として、KBA製の菊全判6色コーター付UV印刷機「Rapida106」を選択し、今年2月から本稼働を開始している。

 

同社は昭和27年に創業した、パッケージ製造に特化した紙工会社。紙工・貼り箱製作から事業を始め、トムソン箱製作にも拡大。その後、上流工程へと事業範囲を広げ、現在では企画・製版・デザインも手掛けている。

 

田中社長

田中社長

同社でも昭和40年代前半に、印刷工程を社内に採り入れようとしたことがあった。「その頃の印刷機はアナログの要素が多く、印刷職人の感覚や勘に依存する部分が大きかった。そこで当社の先代の社長は、印刷工程に関してよくわからない当社が印刷職人を育成・雇用するのも難しいので、優秀な印刷職人がいる協力会社へ印刷は外注した方が得策だと考えた」と、同社の田中社長は当時の方針について語る。

しかし、印刷工程すべての仕事を外注するとなると、半製品の輸送・物流でコストも時間もかかってしまう。そこで、同社の敷地に専用工場を建てて、そこに協力会社に入ってもらう、言わば社内外注の体制を敷いてきた。その工場では、菊全判5色コーター付(油性/UV兼用)機と菊全判2色機の2台が稼働していた。「社内外注で使われていた印刷機が2台とも老朽化していたので、印刷機と一緒に社内製造体制も刷新しようと、この機会に印刷工程も自社内に取り込む決断をした。事業規模が当時よりも大きくなったことに加え、顧客から信頼される生産体制にするには、上流から下流までの全工程を社内で備える必要がある。また、現在の印刷機はデジタル化されているので、職人的感覚ではなくオペレーター的感覚で操作できることも決断を後押しした」(田中社長)

 

同社が製作する印刷物は、その多くに板紙が使われ、そのほかにマイクロフルートや貼り箱用途での薄紙への印刷も行う。したがって、厚紙印刷への対応力が求められるとともに、紙厚が変わるジョブ替えでも迅速・柔軟にできることが必要となる。そこで着目したのが、パッケージ分野で世界トップシェアを持つKBA製の印刷機「Rapida106」だった。「この印刷機は最大紙厚が1.2㍉とほかの印刷機よりも用紙の対応範囲が広く、これならばFフルートの段ボールも問題なく刷ることができる。外装箱にも化粧箱のような印刷品質・表現力が求められてきているので、厚めの紙にも刷ることができるようにした方が、今後の市場開拓という面でも良いと踏んだ。また、ジョブ替えによって薄紙から厚紙へと紙厚が変わっても、その調整作業が要らない機構も魅力だった」(田中社長)

 

Rapida106

Rapida106

「Rapida106」を運用するにあたり、印刷機に高度な機能が集積した自動化機能があることから、これまでは抜き機を担当していた印刷機の操作経験がないスタッフを印刷オペレーターに登用している。その印刷オペレーターも、機械が高度化されていて身体を動かして作業・指示をしなくても自動的にさまざまなことが処理されるので、PCを操作する感覚に近いと言う。田中社長も「印刷オペレーターの経験者も2人採用しているが、初心者でも使いこなせる操作性の良さにこだわった。そして、紙器パッケージに使われる用紙は高価なので、損紙が少なくなるような高度な自動化機能も追求した」と語る。

 

この「Rapida106」には、サーボモーターで各印刷ユニットを独立して直接駆動させることで刷版交換と同時に各種洗浄作業ができて迅速にジョブ替えができる機能や、インラインカメラで印刷物の色を読み取って色調を自動補正する機能、インラインで欠陥品質検査をする機能、リピートジョブのデータを記憶してすぐに色合わせができる機能をはじめとした数々の自動化機能が搭載されている。これらの機能によって田中社長の期待通り、オペレーター育成の面でも、損紙低減という面でも、そして欠陥検査機能による事故防止の面でも期待以上の効果を発揮している上、印刷スピードの速さについても薄紙ならば機械最高速の毎時1万8000回転で、通常の厚紙の仕事でも1万4~5000回転で稼働しており、用紙をはじめとする印刷条件が悪くなっても、それほど印刷スピードを落とさずに済んでいるという。

 

だが、「Rapida106」を導入するにあたり不安もあった。それは、まだKBAが日本国内で展開し始めてから3年程しか経っていないので、サービス体制がしっかりしているかという点だ。そのような不安を払拭したのが「リモートメンテナンス」サービスだった。これは、全世界で稼働する印刷機はすべて、通信回線を通して24時間365日、KBA枚葉印刷機工場のサービス部門とつながっており、万一のトラブルが発生した場合はその印刷機の状態を診断し、リモートで直せる場合は即座に対応する仕組み。「印刷機の機能・頑丈さについてはなにも心配はしていない。一目見ただけでフレームの強さもわかったので、経時劣化も少なく、長持ちするだろう。ただサービス体制については、こちらも初心者なので万全を期してもらいたいと思った。リモートメンテナンスで常につながっているので、サービスマンが工場に常駐してくれているのと同じことになる。また、稼働実績の解析までできるので、日々の業務の改善活動にも活用できる」(田中社長)

 

これまで同社では、社内外注で全体の5割強の仕事を行い、残りはそれ以外の外注でまかなっていた。5色機と2色機の2台を「Rapida106」1台に入れ替え、この「Rapida106」で2交代勤務体制とすることで、外注分は1割程度になると見込んでいる。「印刷スピードについても本刷りに充てられる時間の長さについてもすぐれていて、“Rapida106”の生産性は想像以上に高く、これまでの仕事がさらにいっそう高生産・高品質化できる。当社はこれまで、食品、雑貨、自動車部品、電機部品のパッケージの仕事が多かったが、“Rapida106”による高品質化とUV印刷によるパウダーレス化によって、化粧品や医薬品での高級パッケージ製作に力を注いでいきたい」と田中社長は今後の展望を表している。

 

日本印刷新聞 2016年6月27日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

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