2017年07月25日

平成19年3月、ニシカワグループが国内で初めて現像レスCTPプレートをオフ輪印刷で採用した。それから約10年が経った今、全面的に現像レスCTPプレートへと移行したことによって得られたメリットをベースに、RIPシステムやワークフローのクラウド化も進め、それらの相乗効果によってプリプレスおよび生産管理部門の自動化・省人化に成功している。

 

ニシカワグループは、商業用印刷物はもとより、情報メディア全般の企画立案・制作を主業務とする㈱ニシカワを核に、商業用印刷物の印刷・加工を主業務とする㈱ニシカワ印刷、東京・多摩地区の地域活性化支援やWebサイト運営、3Dプリント事業などの新ビジネスを展開する㈱ネクスメディア、3DCG制作などを得意とするガオカンパニー㈱の4社からなるグループ。オフセット印刷設備は、B縦半裁4/4色のオフ輪が6台、A横全判4/4色のオフ輪が1台、そしてA全判LED-UV枚葉8色機2台を運用している。

 

同グループが現像レスCTPプレートを採用したのは、平成19年に竣工した笹井プラント(埼玉県狭山市)の稼働開始に合わせたもの。笹井プラントではその設計に際し、人の動線や機械の配置に合わせた空調システムや廃棄物の分別・再利用をするためのエコステーションの設置など、環境に配慮したさまざまな施策を実施しており、CTPの現像レス化もその一環として行われた。その当時に採用したのはアグフア社製の四六全判CTP「アバロンLF」2台と現像レスCTPプレート「アズーラ」で、1台は現像ありプレート専用、もう1台は現像ありプレートと「アズーラ」の両方を出力できるような仕様とした。

 

西川代表

西川代表

だが、従来からの現像ありプレートも出力できる仕様としていたため、「アズーラ」の採用当初はその使用比率は決して高くなかった。印刷現場は変化を好まないことに加え、「アズーラ」の耐刷性への信頼が印刷現場で確立していなかったからだ。「耐刷性は印刷する絵柄にもよるが、本当に条件が良い場合でも30万通し程度だった。紙質が悪い場合や絵柄が多いものでは版取れが発生しやすくなるので耐刷性は5~8万通し程となり、その際は複版で対応していた」(同グループ・西川誠一代表)

 

環境に配慮しているだけでは利益は生まれない。オフ輪印刷において刷版の耐刷性が弱いと複版対応での刷版交換のために印刷機の稼働率が落ち、ひいては会社の収益力が落ちてしまう。それであるにも関わらず「アズーラ」を使い続けたのは、実際のオフ輪印刷現場での運用に沿うものだったからだ。「20~30万通しを一気に回す仕事は、実際にはほとんどないことに当時から気付いていた。印刷ロットそのものが小さくなっていること、一部差し替え印刷の増加、そしてなにより顧客の印刷品質に対する要求が厳しくなっており、それに対応するため印刷中にブランケット洗浄をしなければならない頻度が増加したからだ。もちろん1回で10~20万通しの印刷をするケースもなくはないが、実質的な平均通し数は3~4万。複版対応する時は機械停止中にすればいいので、大きな支障はなかった」と西川代表は背景を説明する。

 

アバロンN8

アバロンN8

このような運用面での工夫、環境配慮を目指すというモチベーションの高まり、そして年を追うごとに向上した「アズーラ」の耐刷力もあり、印刷現場でもほどなくして受け入れられ、自動現像機も廃棄してすべての刷版が「アズーラ」へと切り替えられた。今では「アズーラ」の耐刷性向上もあって複版対応する基準を20万通し以上と定めており、実際に複版対応するケースは全体の数%しかないという。西川代表は、「オフ輪印刷で“アズーラ”を使うにあたり、現像工程がなくなるメリットはそのまま享受でき、制約についてはもはやほぼない」と評価している。現在は、「アズーラ」の露光感度およびCTP自体の出力速度が向上したこと、そして長い運用実績でのCTP本体への信頼性もあり、2工場で5台稼働していたCTPを3台に集約。この3台の「アバロンN8」では月間約3万版の出力に対応。また、高精細XMスクリーニング「スブリマ」も採用して240線での印刷を自社標準としたことで、5~10%のインキ使用量削減も図れている。

 

この現像レスCTPプレートへの転換が、後のプリプレスワークフローの自動化・省人化を果たす上で大きな意味を持つことになった。同グループでは平成28年、ワークフローRIPをクラウド化した「アポジークラウド」を採用した。これまでは、本社(東京都東大和市)、笹井工場、日高工場(埼玉県日高市)の3拠点それぞれにRIPサーバーを設置していたが、これをすべて「アポジークラウド」に置き換えた。これによりプリプレスワークフローの一元管理ができるようになるとともに、笹井工場および日高工場にあるCTPの操作がどこからでもできるようになった。「プレート出力をするための刷版課という部署が両工場にあったが、この部署のスタッフを生産管理部門(業務部)に統合した。現像レスプレートなので自動現像機および現像液の管理が不要で、しかも“アポジークラウド”によって刷版の出力指示まで業務部が行えるようになったからだ。これにより刷版出力専任のスタッフは要らなくなる。そこで、これまでは業務部は昼勤のみ、刷版課は24時間体制で夜間には進行業務も担っていたのでこれを統合した。これにより、プリプレス工程の自動化・省人化が図れるとともに、業務部が24時間体制となり、営業・印刷現場間における情報伝達の円滑化も図れた」(西川代表)

 

同グループではこの次のステップとして、アグフアが提供するファイルサーバーのクラウドサービスの採用を計画している。これは、万一自然災害などが起きても顧客から預かっているデータを守るというBCP対策、信頼性確保の側面に加え、セキュリティおよび外部からのアクセス性が良くなることで従業員の働き方改革・テレワーク化を促すという狙いもある。西川代表は、「これまでもデジタル印刷やPDFワークフロー、現像レスプレートなど、その時々における最先端の取り組みをしてきたが、そこには常にアグフアの製品・ソリューションがあった。今回のファイルサーバーのクラウド化も、たとえば就労意欲はあるものの育児のために休業している、親の介護が必要なためフルタイムの就労が困難などの事情を抱えた従業員も継続して働くことができる環境整備になる」と語り、ワークフローや働き方の改善を志向した設備投資をさらに進めていく考えを表している。

 

日本印刷新聞 2017年3月27日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

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