2017年05月01日

消費者ニーズを見すえた新製品の開発・イノベーションを最重要視した経営方針を執る㈱富士美術(本社・大阪府大阪市東成区深江北1の17の27、小栁富士夫社長)では、既成概念に囚われることなく新技術・新分野開拓に果敢に挑戦し、試行錯誤を繰り返しながら進化し続けてきた。そして今年8月、その一環として、関西地方では初となる菊全判機での水なしLED-UV印刷化を図った。これにより、生産能力の飛躍的向上、薄紙から厚紙までの幅広い製品への高品質・短納期対応、完全パウダーレスの環境にやさしいクリーンな印刷工場を実現した。

 

水なしLED-UV化した8色機

水なしLED-UV化した8色機

同社は昭和55年の創業以来、企画から製版、印刷、加工、出荷までの一貫した生産体制を敷いている総合印刷会社。通常の商業印刷物だけに事業の範囲を限定せず、ストーンペーパーへの印刷、抗菌印刷加工、メガネやフィルターを使わずに実感することができる3D印刷など、高い技術力を礎にして多彩なサービスを展開している。

 

現在、同社で稼働する菊全判印刷機は、アキヤマインターナショナル製の両面専用8色機(ダブルデッカータイプ)とハイデルベルグ製の菊全判4色機の2台。元々は油性水あり印刷機だったこの2台の印刷機を今年8月、水なしLED-UV印刷機へと仕様を転換し、本格稼働を始めた。

この2台の印刷機の水なしLED-UV印刷仕様化は一気に行ったものではなく、段階を踏みながら移行をした。「現在の市場の状況はいっそうの短納期化が進んでおり、かつ高品質化や環境配慮への対応といった要求も強まっている。これらの経営課題を解決できる技法が“水なしLED-UV印刷”だと考えた。ただ、すべてを一気に変革するのは難しいので、まずは短納期という側面に対応すべくLED-UV化を先行させた」と同社の小栁社長は語る。その言葉のとおり、4色機については平成27年3月に、8色機については平成28年6月にLED-UV乾燥ユニットを後付け搭載した。

 

小栁富士夫社長

小栁富士夫社長

水なし印刷への転換を図った目的には、前述の理由のほかに、印刷オペレーターの人材育成がしやすいという点もあった。「湿し水とインキの微妙なバランスによって成り立つ水あり印刷では、それをしっかりとコントロールして高品質なものを安定して生産できる1人前のオペレーターになるまでに10年近くかかってしまう。それに引き替え水なし印刷の場合、印刷を不安定にする大きな要因となる湿し水を使わないので、2年もあればオペレーターを1人前に育成することができる。会社の安定した継続性を考え、印刷現場の若返りを図る上で水なし印刷への移行に踏み切った」(小栁社長)

その効果はすぐに表れた。LED-UVでの即乾によりインキ乾燥待ち時間がなくなり、これまでは後加工に回すまでに丸一日置いていた時間が削減されるとともに、片面機での両面印刷についても相当な時間削減が図れている。品質については、水なし印刷化したことで見当精度が向上したことに加え、網点の再現性が安定し、しかもインキの過乳化に起因する裏付き、水落ちといったクレームもなくなった。しかもLED-UV印刷なので、マット紙や上質紙といった乾燥性が悪い紙やインキの色が沈んでいく紙でも網点の付きが良く、ドライダウンもしないので、運用上の勝手も良くなった。その効果は当初の期待を遥かに超えているという。
ただし、LED-UV化に伴うランニングコストに関してはこれまでよりも若干の負担増にはなっている。「インキ、ブランケット、ローラーなどをすべて対応するものにしなければならないので、これらの材料関連コストは5%程増加している。その一方で、水なしLED-UV印刷化によってもたらされた、印刷機の回転数アップや立ち上がりの早さ、即乾といったことによる飛躍的な生産性向上、そして印刷品質のトラブルやクレームがほぼなくなり、工場の収益力はむしろ高まった。材料コストの増加は歓迎できることではないものの、それを埋めて余りある効果が早くも出てきており、この新しい技法に挑んで良かったと思う」と小栁社長は、水なしLED-UV印刷化による収益性について評価をしている。

 

水なし印刷化によるイージーオペレーションでの高品質化、LED-UV印刷化による短納期化およびパウダーやインキ乾燥にまつわるトラブルの削減、あわせて導入したインライン欠陥検査装置での全数検査などがあいまって、顧客からの評判も上々だという。「水なしLED-UV印刷へと移行してからそれほど時間が経っていないにも関わらず、“どのような印刷物があがってくるのか見せてもらいたい”と興味を持って立ち会いに来る顧客が増えており、しかもとても喜んでもらっている。今回、当社が業界に先駆けて菊全判水なしLED-UV印刷という新しい技法を始めたが、当社の取り組みを参考にしてもらい、良いと思った点を採り入れてもらえたら嬉しく思う」(小栁社長)

日本印刷新聞 2016年10月10日付掲載【取材・文 飯田忠司】

 

 

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