2017年03月13日

都市部に位置する工場では限りあるスペースを有効に使うことが求められる。印刷現場において大きなスペースを取るものの1つが、インキ乾燥のために置いておく印刷物(=中間滞留品)だ。セールスプロモーションツール系の印刷・製作を得意とする大東印刷工業㈱(本社・東京都墨田区向島3の35の9、佐竹一郎社長)では今年2月、既設の菊半裁5色機に東京印刷機材トレーディング㈱(本社・東京都荒川区、仲尾康弘社長)が提供するシーシーエス㈱(本社・京都府京都市上京区)製のLED-UV乾燥装置「Dry-G」を後付けで搭載。インキ乾燥待ちの中間滞留品のほか、厚紙印刷における板取り作業、スプレーパウダーによる問題などを解消したほか、表面加工適性も向上させ、大きな効果を上げている。

 

同社は昭和25年に、家内制印刷業として創業した印刷会社。現在は、半径100㍍以内の範囲に3サイトの工場・社屋を擁し、東京スカイツリーを眼前に臨む都市部で操業をしている。小ロットのカラーページ物印刷とセールスプロモーションツール系の印刷物製作を営業品目のメーンとし、菊全判からA3判まで9台42胴の各種オフセット印刷機のほか、プリプレス、POD機、折り・綴じ・断裁・抜き・箔押しなどの後加工機と、社内一貫生産できるシステムをラインナップ。また、これらすべての生産工程における稼働スケジュール・実績・収益などの各種データの見える化を図っており、これをベースにした改善と最適化策の積み重ねにより、同業他社の平均値を大きく上回る粗利率を上げている。

 

佐竹社長

佐竹社長

同社では今年2月に、第2工場を新たに竣工した。これは、製本・後加工業務の強化を目指したものだったが、菊半裁以下のサイズのオフセット印刷機もこの新工場へと移設することにした。その際に、菊半裁5色機へのLED-UV乾燥装置の後付け搭載を行った。「以前から、セールスプロモーションツール系の仕事で多く使われる厚紙印刷において、頻繁な板取り作業や裏付きしないような配慮など、印刷オペレーターにとって負荷となる部分を排除でき、しかもパウダーが不要なのでPP貼りなどの表面加工もきれいにできることから、イニシャルコストの問題さえなければUV印刷化をしたいと考えていた。そして今回、印刷機を新工場へ移すにあたり、単に移設しただけでもそれなりの費用がかかってしまうことがわかった。そこで、LED-UV印刷化をベースにして補助金の申請をした。これにより、そもそもの移設額+補助金で、印刷機のLED-UV化および移設・調整コストの大部分を賄えるので、これならばやらない手はないと考え、LED-UV乾燥装置の後付けに踏み切った」(同社・佐竹社長)

 

「Dry-G」を後付け搭載した菊半裁5色機

「Dry-G」を後付け搭載した菊半裁5色機

同社が後付け搭載したLED-UV乾燥装置の「Dry-G」は、国産メーカーであるシーシーエスが製造するライン型LED-UV照射器。シーシーエスでは印刷産業向けに製品を提供する以前から、すでに半導体・電子部品、液晶モジュール、自動車・機械部品、食品、医療・医薬品をはじめとした多岐にわたる分野に向けてLED製品の提供をしているリーディングカンパニーで、LED照射についての多くの実績と知見を持っており、それをオフセット印刷向けに最適化したものが「Dry-G」だ。

この「Dry-G」の最大の特徴は、高いインキ硬化性能を実現すべく積算光量を高めていること。積算光量は「UV照射強度×照射時間」で求められるもので、インキに照射される積算光量が多いほど硬化性能は高まる。この「Dry-G」では、UV照射強度自体は照射器への負荷や電力消費量が大きくならないレベルに抑え、その一方で用紙進行方向の照射幅が一般的なLED-UV照射器と比べて格段に広くなっている。そのためインキへの照射時間も長くなることから、積算光量はそれらの3~4倍にのぼることになる。

 

LED-UV乾燥装置の生命線、それはインキの硬化性能だ。同社でも、採用前にさまざまな検証を行い、重たい絵柄での高速稼働であってもその積算光量の大きさゆえにしっかりと硬化することを確認した。「LED-UV乾燥装置を選ぶ上でもっとも大事なことは、当たり前のことだがしっかりとインキが乾燥するということに尽きる。当社にとってのLED-UV化は、短納期対応を目指したものではなく、セールスプロモーションツール系の厚紙印刷では絵柄が重たいものが多いので、それを油性インキで印刷する場合は頻繁に板取りをしなければならず、オペレーターに余計な負荷化がかかるし効率も悪いことから、それを解消することを狙ってのことだった。このような印刷物は後加工でPP貼りなどをすることが多いが、その際に印刷物表面に乗っているパウダーをしっかりと払わないと気泡が入ってしまうこともあるが、このようなことももうなくなった。すぐに後加工に回すことができるので、工場内にインキ乾燥待ちの中間滞留品もなくなり、工程に余裕もできている」(同社・佐竹社長)

 

LED-UVについての操作は、オペレーションスタンドの横のタッチパネルで行える

LED-UVについての操作は、オペレーションスタンドの横のタッチパネルで行える

「Dry-G」を搭載した印刷機では、これまでは毎時8000~9000回転で稼働していたものが、今は1万~1万1000回転で稼働する。とくに両面印刷の仕事は、即乾していることからそのうちの8割程をドン天印刷で行えるようになった。小ロットの仕事が多いことからインキ使用量はあまり多くないため、インキなどの資材コストの上昇分は刷版の削減分によって吸収できているという。色再現についても、油性インキと同一メーカー製のインキを使用しているため、印刷方式の変更を顧客に伝えずにそのまま納品しているが、再版ものであってもなんら指摘を受けたこともないということだ。

ただし、特色インキについては課題となっている。現在はインキメーカーへ特練インキを発注して1㌔㌘缶で納入されているが、小ロットの仕事ではそれほどの量を消費することはない。そこで同社では来年2月、既設の菊全判5色機にも「Dry-G」を後付け搭載することを決めた。同社の佐竹社長は、「LED-UV印刷化した印刷機の稼働率も高くなってきており、またその多大な効果も十分に認識できた。そこで、菊全判5色機にも“Dry-G”を搭載して厚紙の仕事はすべてLED-UV印刷にすることで、特色インキの消費量も増え、問題も解決できる」と語り、LED-UV印刷化によるさらなる生産効率の向上を目指していく方針を明らかにした。

 

日本印刷新聞 2016年11月28日付掲載【取材・文 小原安貴】

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