2017年03月13日

その高い品質により多くの出版社からの支持を受け、書籍印刷を得意分野として展開している藤原印刷㈱(本社・長野県松本市新橋7の21、藤原愛子社長)では、本文のモノクロページ物印刷だけにとどまらず、表紙・カバー・帯・扉などの装丁関係といった装丁関係のカラー印刷物も一貫して請け負っている。この分野では近年、ほかの書籍との差別化を図り、凝ったデザインの重たい絵柄のものや乾燥しにくい紙が使用されるケースが増えている。そのような傾向に対処するため同社では、昨年12月にハイデルベルグ社製菊全判4色UV LED印刷機「スピードマスターCX102-4 ドライスターLED」を導入した。また、刷り始めから刷り終わりまでの一貫した色調安定性も図るべく、印刷機内でコントロールストリップのLab値を読み取り、色にズレがあればインキ量を自動補正するインライン品質管理装置「プリネクト インプレスコントロールⅡ」も搭載し、高品質化に磨きをかけている。

 

同社は昭和30年にタイプライター1台をもって創業した印刷会社。当初は組版を主業務とし、地元の営林署などを主要顧客に、材木の帳票などの制作をしていた。その後、徐々に印刷分野にも事業範囲を拡大するとともに、昭和38年には東京に事業所を設け、東京の出版社からの仕事を中心とした書籍印刷へと移行。本文のモノクロ印刷から、装丁関係のカラー印刷も自社内で手掛けるようになり、一文字一文字に心を込め、一冊一冊を大切にしながら本を作る「心刷」をモットーとした事業展開をしている。

 

杉本取締役

杉本取締役

これまで同社で稼働していた印刷機は全部で7台。A/Bどちらの判型の書籍製作にも対応できるよう、四六全判の両面専用2色機(水なし印刷機)2台と、菊全判両面兼用4色機2色機を1台ずつ保有。そのほかに装丁関係を制作するため、小回りが利く菊半裁で5色機と4色機と2色機を1台ずつ保有する構成だった。「当社はカラー印刷については後発だったので、ほかの印刷会社が嫌がるような仕事をしなければ受注を増やせない。菊全判4色機があったので、そのサイズのカラー印刷の仕事をやれないことはなかった。ただ、インキが乾燥しにくい紙を使う仕事の割合がどんどん増えており、長い乾燥待ち時間のせいで仕事が追い付かなくなるという悩みがあった。当然、印刷現場では裏付きや擦れといったトラブルと納期との間で苦労していた」(同社・杉本隆一取締役)

このような悩みの種を解消すべく、同社では高感度UV印刷機の導入を検討した。約1年をかけ、各印刷機メーカーの機種を対象に、データを持ち込んでテスト刷りを重ねた結果、「スピードマスターCX102-4 ドライスターLED」を選択した。同社印刷部の土井修部長は、「いろいろな印刷機を比較・検討した。ベタベタの絵柄であっても、最高速で稼働させてもきちんと硬化するし、UV印刷に特有のグロス感が劣ることがなく、品質がほかの印刷機よりも勝っていたのでこれに決めた」と理由の1つを挙げた。

 

スピードマスターCX102-4 ドライスターLED

スピードマスターCX102-4 ドライスターLED

しかし、同社が「スピードマスターCX102-4 ドライスターLED」を選択した理由はそれだけではない。もう1つの大きな魅力だった点は、オプションで搭載したインライン品質管理装置「プリネクト インプレスコントロールⅡ」にあった。「最近は、色再現への要求が高い写真集や商業印刷物の仕事が増えている。その中で、刷り出し時の色は合っているものの、印刷中にブレが生じる。そのムラをなくしたいと思った」と杉本取締役は語る。終始一貫した品質安定性を実現するための武器が「プリネクト インプレスコントロールⅡ」だった。「最高速の毎時1万6500回転でも乾燥能力や品質に問題がないので、ほとんどの仕事で“スピードマスターCX102-4 ドライスターLED”はその速度で回している。この速度だと、オペレーターが印刷物をデリバリーから抜き取って色の補正をかけようとしても、相当数がその間に印刷されてしまう。なので、これから高速稼働を前提として印刷機を導入する場合、この機能は必須になると思う」(土井部長)

この「プリネクト インプレスコントロールⅡ」の効果は、刷り出しの色合わせ時にも発揮され、ターゲットの色が出るまでの損紙枚数・時間が大幅に削減される。「全紙の色を測定するので、最短で自動色合わせがされる。最初の1台目でも1/3程の削減がされ、導入前に比べて前準備での損紙は10~30%が削減されている。この機能は若いオペレーターの教育にも一役買っており、色を見る目を養うのは一朝一夕にいかないが、これを使えば操作方法を覚えるだけでいいので、教育期間の短縮にも役立つと思う」と、杉本取締役はその効果を語る。さらに、印刷品質が強く求められる立ち会いの仕事の場合でも、印刷機制御装置のウォールスクリーンに色のブレ具合がオンタイムで表示されるので、すぐにOKが取れて、作業の効率化が図れているという。

 

藤原社長

藤原社長

同社ではこの「スピードマスターCX102-4 ドライスターLED」を設置するために、本社の隣接地に第二工場を建設。温湿度・防音・気圧が管理された、理想的な印刷条件を実現したスペースを作った。導入当初は装丁関係の仕事で使う予定だったものの、今では商業印刷物も多くこなし、これまでは社内で捌き切れなかった仕事の内製化にもなっている。「今となっては当社の主力機で、できる限りこの機械で仕事をし、こなしきれないものをほかの印刷機に回している。圧倒的な生産性があるので、残業も減っているし、即乾なので印刷事故も起こらない。資材コストは多少かかるものの、トータルで見ればコストアップにはならない」と土井部長は費用対効果についての分析を示す。

また、藤原社長は「これまでは生産能力が足りなくて、せっかくの受注を断るケースがあったが、もうそのようなことはなくなった。営業部門・印刷現場の双方とも自信をもって、どんなに面倒な仕事や大量部数の仕事でも躊躇なく受けている。また、これまでは紙への印刷しかしてきていなかったが、PETフィルムへの印刷にも対応でき、納品することができた。今後はそのような特殊原反の仕事へも挑戦していきたい」と、「スピードマスターCX102-4 ドライスターLED」を活用して仕事の間口を広げることを目論んでいる。

 

日本印刷新聞 2016年11月28日付掲載【取材・文 小原安貴】

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