2017年01月17日

森澤彰彦社長

森澤彰彦社長

㈱モリサワの森澤彰彦社長は、昨年12月1日開催した事業報告会で、国内および海外事業の現状と課題を説明した。業績については、2016年2月期の売上高は129億5000万円だったが、2017年2月期には前年を上回る130億円となる見通しとなった。最終年度を迎えた中期計画の目指している新市場の獲得や、新規顧客の創造などの取り組みの成果が、業績に現れたものとみられる。

 

新規顧客の創造に向けたブランド戦略推進

 
森澤社長は報告会で、次のように今後の方針を述べた。
「基盤ビジネスとしての印刷出版業界に軸足をおきながら、モリサワのコア技術を活かして新たな市場や新製品に向けた取り組みを継続してきた。新市場への展開で最大の課題は、当社が設立以来携わってきた印刷出版業界やデザイナーの世界で通用していた当社ブランドがほとんど通用しなくなった点である。既存市場でも技術革新が急速に進んでおり、フォントをはじめとするわれわれの強みが現状のまま続くとは限らない。新規顧客の創造に向けたブランド戦略に取り組みながら市場拡大をはかっていきたい」

 

 
重点課題や海外事業に関する説明要旨は次のとおり。
 
◆基盤ビジネス(モリサワパスポート)
印刷業界を中心とした既存市場における基幹事業であり、契約数の維持拡大が最重要の取り組みである。現在の契約の伸びは一般企業中心の新規市場における増加が寄与しており、事業の土台を支えているのは更新契約に大きな割合を占める印刷業界の顧客によるものである。
すでに12年目の長きにわたって利用されており、この先モリサワパスポートにどのような付加価値を提供するべきか、来年度から始まる第3期中期経営計画の重要な課題になると考えている。
 
◆基盤ビジネス(MC-Smart)
MC―Smartは写植の時代から培ってきた組版技術を投入した専用ソフトで、アドビインデザインなど汎用DTPソフトの機能向上で市場の寡占化が進み、かつてのような出荷台数は期待できなくなっている。
他メーカー(Canon EDICOLOR)で撤退のニュースもあったが、モリサワでは大きな販売台数の伸びはないものの、一定の顧客からは高い評価を受け、また需要を認識している。
具体的にはバッチ処理や、学参関連の組版での処理能力の優位性や、導入後の手厚いサポート体制などで高い評価を受けている。ニッチ市場での戦略をとることになるが、組版技術は写植機メーカー時代から継続してきたモリサワのDNAであり、顧客の声に耳を傾けながら新たな、また、さらなる方向性を探って待っている。
 
◆基盤ビジネス(MVP)
可変印刷ソフトMVPは、大量処理を前提とした海外の高額なバリアブルソフトが多くあるなかで、小規模のバリアブル印刷にマッチした価格的にも手頃な商品として中小の印刷会社やプリンターメーカーから支持されている息の長い商品。また和文の縦組みで高品質な組版を実現できることも顧客からの信頼を得る大きなポイントになっている。
このソフトも実はすでに初期バージョンから10年以上が経過しエンジン自体が古くなってきているので、全面的なフルモデルチェンジの必要に迫られている。
今後はクラウド展開なども視野に入れ新たなサービス展開の機会を広げられるような製品にしたい。
 
◆基盤ビジネス(印刷関連資機材販売)
収益基盤として重要な位置づけは変わらない。これからもこの市場、ビジネスに重点的に取り組み、さまざまな価値を提供する。
 
◆成長ビジネス(フォントOEM)
機械メーカーやソフトメーカーにフォントをライセンス販売するビジネスは、グローバル市場においては、DTP市場よりも規模の大きな市場である。将来、企業として成長していくためには、国内の印刷業界や出版デザイン業界以外に組込み市場のシェアを拡大することは避けて通れない。従来も携帯電話の業界を中心にOEMビジネスを展開してきたが、今後はさらに伸び代の大きい分野へアプローチを掛ける。一方、組込みの分野では印刷業界やデザイン出版業界のように、モリサワフォントのブランド力がないので、競合他社の追従を受けない強みを作る必要がある。
 
◆中国語認証ビットマップフォント
中国市場で販売する機器に搭載するフォントは、中国政府の認定機関であるCESIが認定した中国語フォントを購入するしかなく、基本的に中国のフォントメーカーに依存した状態にあった。(方正〈ホウセイ〉、漢儀〈ハンイ〉など)
当社はモリサワが制作したオリジナルの中国語フォントの認証を取得することに成功した。
 
◆車載関連機器への拡販、研究開発
自動車業界は今後、自動運転技術の発展にともなってさまざまなIT技術の搭載需要が発生することは確実。フォントの需要も同様で、従来のカーナビゲーションナビシステムに留まらず、コンソール(各種車載パネル)内で表示されるフォントに要求される機能や品質も、多様に変化するものと考えられる。当社はすでに国内大手メーカーとの取引はあるが、ユニバーサルデザインフォントや輝度や照明の変化でフォントウエートを変化させる実証実験を含めた機能開発をグループ会社のリムコーポレーションと連携して継続し、自動車産業に製品や部品を供給するメーカー(Tier2以降)への訴求力を高めていく。
 
◆MORISAWA App Tools
現在、組み込みフォントの分野でもっとも成長著しいのが、携帯端末向けのアプリ市場。ゲームソフトに代表されるこの分野では、企画から調達に至るスピード感が最優先されるため、個別契約に時間を掛ける従来の組込みビジネスのスキームが通用しない。そこで当社はアプリ業界から要求される仕様許諾の内容を、あらかじめエンドユーザーライセンスに盛り込んで定型化し、従来契約書の作成に要していた時間を不要とする「MORISAWA App ToolsONE」を2016年10月にリリースした。
 
◆成長ビジネス(TypeSquare)
サービスを開始して約4年が経過したwebフォントサービスのTypeSquareは、未だ市場に定着までには至ってない。しかし、導入件数は確実に伸びており、将来のwebを支える標準技術になることは間違いないと確信している。
市場への訴求ポイントとしては、まず「①ブランドイメージの向上」がある。高級ブランドメーカーや、大手メーカーを中心に、広告物で使用する書体を厳格に定めている企業が多くある。これまで閲覧するPCに入っているフォントごとに表示イメージが変わってしまうWebサイトでは、ブランドイメージやその世界観のコントロールは困難だったが、TypeSquareを利用することでPCに入っているフォントに依存することなく、印刷物のイメージと同じ書体でWebサイトを見せることができるようになる。
2つ目の訴求ポイントは「②デバイスの多様化への柔軟性」。従来のようにフォントを画像化してWebサイトを作成している現状は、PC、スマホ、タブレットなど、表示画面のサイズが異なるそれぞれのデバイス用にデータを用意する必要があり、時間と手間を要していた。すべての文字情報をテキストで保有するTypeSquareであれば、デバイスの差異にも柔軟に対応することが可能となり、制作コストを大幅に軽減することができる。
3つ目の訴求ポイントは「③アクセシビリティの優位性」。文字情報をテキストで持つことができるということは、検索時の優位性が高くなる利点がある。
これに加え、視覚障がい者が必要とする読み上げ機能に容易に対応させることが可能であることが注目されている。
 
◆成長ビジネス(電子書籍)
すでに事業開始から6年が経過し、実績として報告できる内容がいくつかある。ただし、電子書籍の業界はご存じのようにアマゾン(キンドル)のサービスに代表されるように読み放題のサービスが主流になってきており、単体コンテンツで直接利益を上げにくい状況になってきている。
電子書籍による収益のひとつが「①MCMagazineによるNewsstand定期購読アプリ」である。5年前からMCMagazineの販売を開始し、現在ではNewsstand販売中の全505誌中199誌で採用されている。
 
◆成長ビジネス(MCCatalog+)
電子書籍開発で得た技術を横展開、応用したビジネスがMCCatalog+である。事業の開始時はクライアント(コンテンツホルダー)と印刷会社をMCCatalog+でつなぐビジネスプランを計画したが、東京オリンピックに向けて社会情勢がインバウンドに傾倒しはじめたことや、「障害者差別解消法」の施行などが同時期に始まったことで、自動翻訳機能やポップアップ機能、自動読み上げ機能の強みを活かし当初のねらいとは異なったターゲットに絞り込んだ販促活動を展開している。
 
◆海外活動
2014年に韓国、台湾、米国に海外現地法人を設立し活動を開始した。海外マーケットにおいても当社の一番の強みは日本語であることに代わりないが、今まではどの分野でその強みが活きるのかを市場調査することが主な活動となっている。

 
 

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