2017年01月14日

『学問のすゝめ』を限定復刻

『学問のすゝめ』を限定復刻

 

合資会社水野写真製版所(水野雅生代表社員)は、創業90周年を記念し、ミズノプリンティングミュージアム(同館長)所蔵の福澤諭吉『学問のすゝめ』の初版本(和文活版印刷)を限定復刻した。印刷はミズノプリテック㈱(同会長)。
佐藤きむ氏(元弘前大学教育学部助教授)による現代語訳と坂井達朗氏(慶應義塾大学名誉教授)による解説を掲載した『福澤諭吉「学問のすゝめ」』、水野館長『日本の近代を築いた本「学問のすゝめ」の初版を復刻して』の2つの小冊子とともに、帙に収め、それを桐箱に入れた。
「学問のすゝめ 全」と記した題簽を復刻本、帙、箱に付してある。

 

水野雅生氏

水野雅生氏

 

――復刻の目的は?
水野 「先代、水野勉が創業して2015年に90周年を迎えたのを記念するものだ。ミズノプリンティングミュージアム所蔵の現在10部しか確認されていない『学問のすゝめ』初版本を活版で復刻した」
――いつごろ刊行されたものか?
水野 「『学問のすゝめ』は、中津(大分県)に創った学校の生徒のために出版された。明治4年12月付の端書があり、翌年明治5年2月に出版された。端書に慶應義塾の活字版を以て印刷されたとある。
表紙に『全』とあるように、最初は1編だけ刊行した。その後、評判を呼び、増刷(再版は木版刷り)とともに人びとから続編を要望され、39歳から43歳に至るまで5年にわたり17編まで書かれた。明治4年から9年まで、断続的に書かれ、そのつど出版された。
巻末の端書には、学問の目的を記して、同郷のふるい友人に読んでもらうためにこの冊子を作った。中津の人だけに読んでもらうよりも、広く世間に発表すれば、多くの人に役立つだろうと勧めてくれたので、『慶應義塾の活字版を以てこれを摺り』関心のある方々に読んでいただくことにしたとある」
――四つ目の和綴じになってる。
水野 「洋紙の両面に印刷して和綴じにしてある。片面に印刷して2つに折って小口袋で綴じてあるわけではない。
印刷に用いられたのは、金属製の彫刻活字で機械漉きの洋紙両面刷りという、それまでの和装本の姿を一変するものだった。慶應義塾の福澤研究センターでも、どのような経緯で活字制作し、洋紙を入手し、どのような印刷機を使ったのかは分かっていない」
――冒頭の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」ということばはあまりに有名だ。
水野 「それはほんの序である。その一文は知っていても17編の内容を把握している人はそう多くはない。自由論、天賦人権論、国家独立論、人望論などが書かれている。女性の独立、男女の平等、女性解放なども唱えている。
諭吉の母、お順は、人間の貴さは身分とは別のところにあると考えていたようでもある。身分にこだわらず気の毒な人に親切を惜しまなかった母の姿を見て育った諭吉は、その母の行動を誇らしく思っていたようだ。人の権利が平等であるとの考えは、母の考え方に由来するものではないだろうか。
14編から後は、経済書として読むとよいと感じる。企業に棚卸が必要なように、個人にも棚卸が必要であることなども説かれている。
紙や印刷術の発明がいかにわれわれの社会に貢献しているか。これを印刷人として啓蒙していくことがひいては業界のためにもなると思い、多くの方々の協力をいただき、プリンティングミュージアムを開設した。現在も印刷史のルーツを探るべく資料の収集に努めている。企業のフィランソロフィーとして、個人のライフワークとして一層充実したものにしていきたい」

 

 

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