2017年01月07日

2017年は漱石生誕150年に当たる。この作品は1908(明治41)年の夏に新聞に連載された。「こんな夢を見た。」と、夢の中の出来事が目の前に見えるように示される。自己の生誕と死とが夢に託されているようでもある。「100年も前に現代に通じる文が書かれていた。改めて読んで驚く」。情報発信、コミュニケーションに心を砕く業界団体のさるトップがそう話していた。
 
▼漱石は、元日に新聞に載せる文章を事前に著すことの困難を書き残している。「元日を御目出たいものと極めたのは、一体どこの誰か知らないが」「元日および新年の実質とは痛痒相冒す所なき閑事業である」「もし世間が元日に対する僻見を撤回して、吉凶禍福ともにこもごも起り得べき、平凡かつ乱雑なる1日と見做してくれるようになったら、余もまた余所行きの色気を抜いて平常の心に立ち返ることが出来るから、たとい書くことに酔払いの調子が失せないにしても、もっと楽に片付けられるだろう」(「元日」)。
 
▼9月には、生まれ育ち生涯を閉じた東京・新宿区に漱石山房記念館がオープンする。「夢十夜」を執筆した当時の家のあった場所に建築中だ。そこは漱石山房と呼ばれ、正月にも門人たちが顔を合わせて談論を楽しんだ。
 
(岩波文庫ほか)
 

※「日本印刷新聞」【話題の本】から

 
 

夢十夜 他二篇 (岩波文庫)
 
 
 
 

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