2016年10月15日

印刷関連企業のための安心の生産工場を志す北東工業㈱(本社・大阪府大阪市中央区上町1の19の4、東條秀樹社長)では、平成25年1月に水なし印刷技術を採用することで老朽化が進んでいた主力の8色印刷機2台を再生させた。その後、新たに導入した4色機も水なし専用機としたことで、品質や作業性の向上に成功。そして今年7月、世界初となる「LED-UV水なし印刷」の実運用を開始した。

 

同社は昭和44年の創業以来、印刷関連企業および印刷・生産設備を保有していない企画・デザイン会社からの受託製造を専門としてきた印刷会社。近年ではデザインデータ制作の裾野の広がりによって印刷通販市場が伸展したことを受け、平成19年からWeb営業所となる印刷通販サイト「プリントビズ(http://printbiz.jp)」を開設し、印刷受託先を全国/全業種へと広げている。
同社で稼働するオフセット印刷機は、2台の菊全判8色機をはじめ、菊全判/菊半裁/菊四裁、油性/UV/LED-UVといったさまざまなバリエーションで、7台37胴をラインナップしている。同社が水なし印刷に最初に取り組んだのは昨年1月のこと。老朽化が進んでいた2台の菊全判両面専用4/4色機について、両面専用機ならではの機構に起因するファンアウトの問題を解決するべく取り組みを始め、印刷機のリノベーションと水なし印刷への転換をしたことでファンアウトが発生せず、見当精度が劇的に上がった。また、水あり印刷と比べて色ムラやブロッキングの事故も減少し、さらに印刷の立ち上がり時間も短くなったことで作業スピードや全体の効率向上も図れた。

 

東條社長

東條社長

水なし印刷への転換によって成功を収めた同社が引き続いて挑戦したのが、世界初となる「LED-UV水なし印刷」だった。平成24年11月に導入した㈱桜井グラフィックシステムズ製の菊半裁LED-UV4色機「オリバー466SD」の水なし印刷への転換を、次なる目標と定めた。この「オリバー466SD」を導入当初は水あり印刷で運用。同社にとって新しい技術だった「LED-UV印刷」は、当時入社1年目でまだ10代の若いオペレーターが立ち上げた。LED-UVの採用、水なし印刷への転換とステップを踏んできたので、次なる「LED-UV水なし印刷」への挑戦についても、自然と社内の雰囲気がそのようになっていた。「夢や希望、製造業としての誇りを社員達に感じてもらいたいと常に思ってきた。日々、淡々と仕事をこなすだけではなく、創造性に溢れた技術開発という夢を会社に取り込みたかった。その結果、社員の士気や活気がとても高まった」(東條社長)
同社では水なし印刷の採用と並行して印刷標準化への取り組みとしてJapan Color認証も受け、LED-UV水なし印刷でもJapan Colorの範囲内の標準化が図れている。通常の水あり印刷でLED-UV印刷をする場合、水幅が狭いので印刷が難しくなるが、「LED-UV水なし印刷」ではその難しい要素がなくなる。また、LED-UV印刷は即乾なのでブロッキングの心配をする必要もない。したがって、もっとも標準化しやすく、かつ安定性と瞬発力がある印刷機となった。「あくまでも水なし印刷技術の導入は標準化をするためであり、“LED-UV水なし印刷”についても同じことだ。その基準としてJapan Colorという統一した物差しを使っている。最終的には、北東工業の製品はとても安定していて納期的にも瞬発力がある、という会社としての力強さや信頼感が得られることを目指している」と東條社長は「LED-UV水なし印刷」開発の狙いを語る。

 

「LED-UV水なし印刷」をしている「オリバー466SD」

「LED-UV水なし印刷」をしている「オリバー466SD」

同社では現在、急ぎの仕事やすぐに次工程にかからなければならない仕事、乾燥性の悪い用紙への印刷などで優先的に「LED-UV水なし印刷」を使っている。高価な印刷機と資機材を使うので特殊原反に高付加価値印刷をしようという考え方をするケースが多いが、同社では仕事全体を滞りなく流すために難易度やリスクが高い仕事を「LED-UV水なし印刷」に託している。「LED-UV水なし印刷」は資機材コストが高いのではないかという懸念もあるが、印刷コスト全体に占める資機材コストの割合はもともとそれほど大きくないので、気にならないレベルだと評している。「資機材コストの上昇分よりも、新しい技術を開発したという会社全体の士気の高まりや技術者としての誇りを持てたという精神面への好影響、さらには事故がどんどん減っていく、オペレーターの成長スピードがどんどん速まっていくといったメリットの方がはるかに大きい。このような取り組みにより勉強をする会社になってきた。とくに若い社員が成長してくれたのが最大のメリットで、それを踏まえれば資機材コストの上昇分くらいはすでに吸収できている」(東條社長)

 

印刷関連企業からの受託製造を専門とする会社として、もっとも要求されるのは安定性と事故率の低さだ。極限の高品質や高付加価値ではなく、24時間365日いつでも、そして誰がどの印刷機で刷っても同じものができることを求められる。「昔から“水を制する者はオフセット印刷を制する”とオペレーターの間で言われていたが、水なし印刷によって水がなくなると良いことがたくさんある。また、UV印刷についても即乾するので事故がとても少なく、すぐに後加工へと移れ、しかもLEDの出現によって少ない電気代で同じ結果が得られるようになった。これらの総合的なメリットを踏まえ、オフセット印刷の最終進化形態は“LED-UV水なし印刷”だという確信と手応えを感じている」と、東條社長は世界初の技術への自信を表している。

 

日本印刷新聞 2014年10月20日付掲載【取材・文 飯田忠司】

 

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