2016年10月15日

常に印刷業界の動きの一歩先を行く取り組みをし、高精細印刷、環境に配慮した現像レスCTPプレートの採用、Web入稿/校正システムの構築、中国・ベトナムでの海外展開など、機を見るに敏な事業展開を進める昭栄印刷㈱(本社・新潟県新発田市住田97、坂井雅之社長)。そんな同社が今年6月、業界に先駆けたさらなる動きとして、KBA製の菊全寸延び判両面兼用8色機「Rapida106-8」を導入した。その圧倒的な実生産性、原反の紙厚を選ばない高速性、高度で洗練された自動化機能による機付人員減により、本業の土台部分をいっそう堅強なものとした。

 

坂井社長

坂井社長

同社は昭和34年に創業した、出版印刷をメーンにした総合印刷会社。売上全体の7割を雑誌、広報誌、フリーペーパーをはじめとする出版印刷が占め、そのほかに商業印刷物も手掛ける。平成21年には、著しい経済発展を遂げ、多くの日系企業が進出するベトナムに昭栄ベトナム㈱を設立し、現地工場ではパッケージ印刷、商業印刷、ノベルティグッズなどを、日本の品質水準で製作するワンストップサービスを展開している。また、ベトナムでの大手日系企業との取引実績を足掛かりに、それらの企業の日本国内での印刷物製作も受注し、海外進出によるシナジー効果も生み出している。

国内の同社工場でも、企画・デザインから、プリプレス、印刷、製本・後加工、梱包、発送までの工程を一貫処理する体制を整えている。その中の印刷工程に関しては、菊全判両面兼用8色機2台と菊全判両面専用(ダブルデッカー)8色機の計3台が稼働。そのラインナップに新たに加わったのが「Rapida106-8」だ。「出版印刷に関しては電子化の流れもあって現状維持が精一杯なものの、商業印刷などの分野は伸びている。当社は年間に約360日、24時間体制で稼働しているが、すでにキャパシティいっぱいの状態だった。そこで生産能力の向上を目指し、新台導入を決めた」(坂井社長)

 

同社のメーンである出版印刷での発注の傾向として、コストダウンを目的とした薄紙での印刷の指定が増えている。同社の既設機では薄紙に対応するために、3台中2台にロールフィーダー装置を付けている。そこで新台の選定では、薄くてクセが悪い紙に重たい絵柄で印刷しても安定的に高速処理できることを最大のポイントとして、用紙搬送とフィーダーの性能にこだわった。超高速で稼働しても止まらないことを条件に、同社でよく使う紙厚0.06㍉の薄紙やクセの悪い紙で厳しいテストを繰り返し行ったところ、フィーダートラブルがなく、しかもファンアウトも出ないことから結論を出した。

 

それ以前にも、坂井社長の決断を促すきっかけはあった。「昨年2月、ドイツのKBAユーザーを訪問する機会があった。その印刷会社は当社と同じく雑誌などをメーンとしており、菊倍判両面兼用8色機で毎時1万4000回転のスピードで両面印刷し、安定的に良い物を刷っていた。その光景を目の当たりにし、菊倍判機でこのパフォーマンスをあげられるのならば菊全判機なら何の問題もないだろうと、KBA製印刷機の能力を信用した」と語る。それを受けて同社では、基本的には機械最高速の毎時1万8000回転(両面印刷時)で、条件が悪い紙の時でも毎時1万6000回転を下回らないスピードで印刷することを決めた。

 

成田課長

成田課長

「Rapida106-8」の圧倒的な実生産性の高さは印刷スピードによるものだけではない。ダイレクトドライブ機能によるジョブ替え時間の短縮、そしてインラインで印刷物の濃度を読み取って自動で色調を制御する「クオリトロニックカラーコントロール」による色合わせ時間の短縮による効果がある。同社第一生産部印刷三課の成田祐樹課長はこれらの効果について、「これまで、ジョブ替えから色合わせまでに20~25分程度かかっていたが、“Rapida106-8”だと今は10分、操作に慣れれば6~7分でできそうだ。この効果は、雑誌などの台数物の2台目以降でより顕著になる」と語る。同社では、従来機と比べて実生産性が1.5倍以上になると見込んでいる。また、成田課長は続けて「フィーダートラブルがまったく起こらないので、フィーダー部に助手が張り付いている必要がない。また、自動で色調制御をしてくれるので、機長が抜き取り確認をする頻度も少なくなった。ただ、機械が自動化されたことで、オペレーターが楽をするのでは意味がない。そこで当社では、3台5人(機長3人、紙積み助手2人)体制だったものを4台6人体制とし、機長が次のジョブの刷版のセットをするようにした。将来的には“Rapida106-8”はワンマン運用したい」と、印刷機の能力をいかんなく発揮できる運用方法を検討している。

 

ほとんどの仕事で毎時1万8000回転での両面印刷を行っている「Rapida106-8」

ほとんどの仕事で毎時1万8000回転での両面印刷を行っている「Rapida106-8」

同社のメーンの仕事となる出版印刷ではとくに、納期を遅らせることができない。24時間360日印刷機を回しているので、万一のトラブルがあった際、4時間以上止まると外注を手配しても対応できない。そこで重要なのが印刷機のサービス・メンテナンス体制だ。「最高速で回しても音が変わることがなく静かなので、頑丈であることがわかる。しかし、いつかは必ずトラブルが発生する。その時のダウンタイムが短いことが重要だ。KBA製の印刷機はドイツのサービス部門が、その印刷機の状態を遠隔で診たり、そのまま修復できるリモートメンテナンスがあるので、そこも安心材料の1つだった」(坂井社長)

 

「Rapida106-8」の導入が、同社におよそ1シフト分の余裕を生む。その空いた時間の分、仕事を受注しなければならない。「この印刷機は紙厚が変わっても爪台の調整が不要なので、新規となる厚紙の仕事も開拓したい。また、新しい印刷機の効果や能力を利益に変換することは簡単だが、その印刷機が普及すればそれはなくなる。せっかく最先端機を導入したのだからその能力を工場全体の基準として、ほかの印刷機や部門の生産性やコストをその基準に並ぶような努力や工夫をするべきだ。それを通して会社の体質強化を図り、新しい印刷機を入れた効果以上の発展を遂げていきたい」(坂井社長)

 

日本印刷新聞 2015年8月31日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

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