2016年10月15日

軟包装グラビア印刷の小ロット化に対応するため、富士特殊紙業㈱(本社・愛知県瀬戸市暁町3の143、杉山仁朗社長)ではデジタルインクジェット印刷機を活用した新しいコンセプトの印刷システム「FUJI・M・O印刷機」を今年4月に開発した。これはジョブ替え時間の大幅削減を可能とするデジタル印刷特有の瞬発力と、軟包装グラビア印刷に必須となる高濃度な白インキの塗布という双方のメリットを両立させたハイブリッドシステムで、そのデジタルインクジェット印刷機の部分は㈱ミヤコシ製のLED-UVフルカラーインクジェット印刷機「MJP20W」をベースとしている。このデジタルインクジェット印刷を活用した革新技術が、グラビア印刷を市場ニーズに適応した次のステージへと押し上げる。

 

杉山社長

杉山社長

同社は昭和25年に創業したグラビア印刷会社。創業当初は蠟引き加工などを主としていたが、現在は12台のグラビア印刷機を駆使し、軟包装フィルムへの食品パッケージ製作を主体として営業している。同社の大きな特徴は、一般的な油性インキではなく水性インキでのグラビア印刷を得意としていること。「職人的スキルを要するグラビア印刷はオペレーター育成に10年程かかるため、社員の定着率が印刷品質に直結する。そこで定着率を良くするべく、職場環境を改善しようと思った。正常作業をする上で防毒マスクを着用しなければならないような職場環境で、社員の定着率が上がるとは思えない。社員の健康と職場環境を第一に考えて行き着いたのが水性グラビア印刷だった。コストも時間もかかり、そして社内からの批判もあったがやって良かった」(杉山社長)

 

同社では水性グラビア印刷を約20年前から始め、現在では水性グラビア印刷が約8割を占める。この水性グラビア印刷は、その後に施行された大気汚染防止法の基準もクリアする。その環境配慮・安全面における企業姿勢は、日印産連環境優良工場表彰での2回の受賞をはじめ、業界内外から高く評価されている。

杉山専務

杉山専務

そのような同社の次なる取り組みが、軟包装グラビア印刷の小ロット化への対応だ。同社の平均ロットは1万5000㍍位はあるものの、その一方で半分以上の仕事は小ロット(4000㍍以下)だ。ジョブ替えには時間がかかるので印刷機が止まっている時間の方が長くなる上、作業労力の面でも負担が大きい。「1日のジョブ替え回数が増えると作業がとても大変で、しかも長い時間残業をしてもらわなければならなくなる。これはインキ臭の問題と同じで、社員の定着率低下に繋がりかねない。グラビア印刷会社の職場環境および経営において、インキの臭いと小ロット化が大きな障害となることは数十年前からわかっていた。これを克服することは、当社の発展に欠かすことができない」(杉山真一郎専務)

 

FUJI・M・O印刷機

FUJI・M・O印刷機

そこで同社が着眼したのが、ジョブ替えに労力も時間もとらず、小ロットの仕事への瞬発力に優れるデジタルインクジェット印刷機だった。しかし、インクジェットで軟包装フィルムに印刷するためには、▽軟包装への印刷には白インキが必須だが、デジタル印刷機では濃度・隠ぺい性が不足、▽フィルム基材にインクジェット用のインクを定着させることが必要、▽非吸収性の基材なのでUVインクを使用することになるが、UVインクの残留臭気成分があると食品・医薬品などのパッケージに使用できない--といった課題がある。それを克服した新しい印刷システムが「FUJI・M・O印刷機」だ。

「FUJI・M・O印刷機」は、LED-UVインクジェット4色印刷機と白インキ用の水性グラビア印刷機をインラインで繋いだシステムで、①フィルムにインクが定着するようにアンカー剤を塗布、②4色インクジェット印刷、③LED-UV照射部で窒素ガスを噴射(これによりUVインクの硬化反応の阻害要因となる空気中の酸素を除去できるので、インク内の臭気の元となる成分を極少化できる)、④白インキを水性グラビアユニットで印刷--という流れ。油性インキを使ったグラビア印刷機の場合、消防法の問題でデジタルインクジェット印刷機を同じ空間に設置することができないが、同社の水性グラビア印刷技術がここでも役立ち、インライン接続が可能となった。

 

「FUJI・M・O印刷機」は、富士特殊紙業、デジタルインクジェット印刷機のミヤコシ、水性グラビア印刷機の㈱オリエント総業、基本構想と低臭気UVインクジェットソリューションの富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ㈱という開発に携わった会社名の頭文字が由来。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のイノベーション実用化ベンチャー支援事業の承認を得た助成金を活用したことで、早期実用化に辿り着いた。

川合執行役員

川合執行役員

同社では「FUJI・M・O印刷機」を実用試験機と位置付け、テスト稼働だけではなく実用で稼働することを前提に開発しており、現在は顧客と一緒に商品作りをしている。「具体的な効果測定などはこれからの話だが、色出しの損紙、ジョブ替え時間、廃棄する残インキなどがなくなることはわかっている。新しい原価計算方式を考え、それを踏まえてどのように運用していくかがポイントだ。また、発売開始当初は小ロットながらも、それがヒット商品へと成長して大ロットでリピート製作するケースもあるので、グラビア印刷とのカラーマネジメントも整えた」と技術開発本部の川合信行執行役員は語る。

 

今後は、小ロットの仕事を「FUJI・M・O印刷機」で集中処理することによって、従来のグラビア印刷機の稼働率向上を目指す。「グラビア印刷機での小ロットの仕事の割合を3割程度に抑えたい。そうすればグラビア印刷機の稼働率も上がり、ロスも少なくなり、収益性も良くなるだろう。効率的な運用法を突き詰め、うまく回っていけば増設もしていきたい。さらには、デジタル印刷だからこそできるバリアブル加工による付加価値創出もしていきたい」と、杉山社長はデジタル印刷を活用したさらに一歩先の展開も見据えている。

 

日本印刷新聞 2015年6月1日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

 

 

 

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