2016年10月15日

顧客から常に選ばれ続けるために変革への挑戦を続ける㈱ウエマツ(本社・東京都豊島区南長崎3の34の13、福田浩志社長)ではその一環として、平成23年11月に老朽化したダブルデッカータイプの両面印刷機6台を水なし仕様にメンテナンスした後に水なし印刷での稼動を開始。印刷機を水なしリノベーション化することで生産性を甦らせた。そして今年3月からはその印刷機で㈱T&K TOKA製のパウダーレスインキ「ベストワン キレイナ」を採用。水なし印刷での「ベストワン キレイナ」の最初のユーザーとしてT&K TOKAと二人三脚でインキの開発・改良に取り組んだ結果、パウダー使用量を劇的に削減させ、さらなる工場環境改善とコストダウンに繋げた。

 

福田社長

福田社長

同社は昭和33年に東京・豊島で操業を開始した、刷版・印刷・加工分野に特化した枚葉オフセット印刷の受託製造専門会社。現在は18台・124胴の印刷機が24時間稼働し、その生産力は全国トップクラスを誇る。そのうち水なし印刷機はすべてアキヤマインターナショナル製の両面専用機で、8色機4台と10色機2台が稼働し、生産量の約4割を担っている。

同社では「環境に配慮した工場作り」を常に目標としており、平成22年2月には生産効率向上と工場周辺/従業員への環境配慮という基本的理念の下、戸田工場(埼玉県戸田市)を新設して生産設備の集約を図った。この戸田工場は、第12回(平成25年度)印刷産業環境優良工場表彰において最上位賞の経済産業大臣賞にも選ばれている。

 

そのような同社が水なし印刷を始めたのは平成23年11月。環境配慮への取り組みという側面のほか、印刷品質向上とオペレーターの負担軽減を狙ってのことだった。「ダブルデッカータイプ特有の問題であるファンアウトによる見当性の悪さ、そして老朽化によって水棒の調整や準備時間が長くかかっていたことを社内では問題視していた。どちらも湿し水に起因することなので、水なし印刷に移行することで解消できるのではないかと考えた。まずは廃棄しようかと迷っていた平成9年製の印刷機で挑戦してみた」(同社・緒方章一執行役員印刷部長)

緒方執行役員

緒方執行役員

版面温度のコントロールが水なし印刷を実践する上でのポイントとなるが、スムーズな切り替えが実現したのは戸田工場全体で高い空調管理機能を備えており、両面機の下胴の閉ざされた空間にも空気が循環するため。続けて、ほかの5台の両面専用機も水なし印刷機にリノベーションした。緒方執行役員は「水あり印刷から水なし印刷にしたことで、湿し水の使用による紙面強度劣化がなくなりジャケット表面の紙粉残りが少なくなった」と評価。福田社長は「水なし印刷への移行がうまくいったおかげで印刷準備時間が短くなった。そしてなにより、これまでは見当の悪さから刷版を出力し直すことも多々あったのだが、それがまったくなくなって劇的なコストダウンが図れた。もちろん見当加減による出力はしていない」とその効果を語る。

 

さらに福田社長は、「以前は、勘と経験に基づいた変動への対応力こそがオペレーターの技量だった。今のオペレーターに求められる能力は、常に一定のパフォーマンスをあげられるように印刷機を整備できることだ。したがって、印刷時に変動が発生する要因を極力排除すること、すなわちオペレーターの負荷を軽減させることが重要となる。その点から考えると、オペレーターに負荷がかからないオフセット印刷の究極型は、湿し水を使わない“水なし印刷”、そしてコスレや傷、パウダーのボタ落ちなどの心配がない“UV印刷”を合わせるのが理想だ」と語る。しかしながら、UV印刷で使うインキは高価だ。そこで同社では次善の策として、オペレーターを品質事故への不安から解放させるべく、パウダー不要で棒積みが可能なオフセット枚葉インキ「ベストワン キレイナ」を採用した。

「ベストワン キレイナ」はインキ内に裏移りを防止するための特殊ビーズを配合し、このビーズが用紙に乗るインキの膜厚よりも大きな粒径を持つことから、用紙の間に隙間を作ることができるのでパウダーレス印刷が実現できる。

 

パウダー量が激減し、きれいな状態が保たれているデリバリー部

パウダー量が激減し、きれいな状態が保たれているデリバリー部

同社ではこれまで、印刷機が古いため紙面に散布したはずのパウダーが室内の床に飛散してしまい、30分も経つとパウダーで床が白くなってしまい、空調機が目詰まりすることもあった。逆に集塵機で吸い過ぎると、デリバリー部内で余計な気流となるため、紙の揃いも悪い上、紙面にパウダーが残らないこともあった。そこで「ベストワン キレイナ」をテスト使用(チャートの四隅にCMYKを各100%の計400%)したところ、コート紙はノンパウダーでも問題がなく、マット紙や上質紙でもほとんどパウダーを噴かなくても大丈夫だった。実稼働では、コート紙では約7割、嵩高塗工紙や上質紙では約4割のパウダー量を削減して印刷をしている。

パウダーの使用量が激減したことで、印刷機のデリバリー部の清掃や印刷室の床清掃は半分以下の時間になり、実生産に充てられる時間が増大した。また、数ヶ月ごとに専門業者を呼んで清掃していた空調機器も、その頻度が減るとともに、効き方も良くなった。さらに波及効果として、同社では月に1回、5Sに関する検査・採点を抜き打ちで行い、全印刷機の状況を順位付けしているが、「ベストワン キレイナ」に替えた途端、オペレーターの意識も上がって、印刷室全体がきれいになり、それらの印刷機が上位を占めるようになった。

「ベストワン キレイナ」の採用は印刷品質にも変化をもたらしている。「トラッピングが良くなり色再現が早くなった。また、着肉が良くてインキを盛らなくてもいいので、単位量あたりのインキマイレージが伸びた。色合わせ損紙も、元々少なかったがさらに1割以上は減っている」(緒方執行役員)

 

同社ではパウダー使用量の9割削減を目標に、T&K TOKAとともにインキ改良を重ねる。「まだまだ印刷現場には儲かる要素がある。生産効率を上げればさらに利益率も上がるはずなので、水なし印刷やパウダーレス化も、作業効率向上策の1つとしてさらに追求していく」(福田社長)

 

日本印刷新聞 2015年8月24日付掲載【取材・文 小原安貴】

 

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