2016年10月11日

JAGAT大会2016のもよう

JAGAT大会2016のもよう

日本印刷技術協会(塚田司郎会長=錦明印刷社長)は10月7日午後1時半から、東京・文京区の椿山荘で「印刷の再成長 市場の創出」をテーマにJAGAT大会2016を開き、IoT時代における印刷産業の針路を示す。147人が参加した。
 

特別講演では『日本はなぜ負けるのか~インターネットが創り出す21世紀の経済力学~』の著者でブロードバンドタワー会長兼社長・インターネット協会理事長の藤原洋氏が「インターネットが創り出す21世紀の経済力学―勝ち抜くための処方箋」をテーマに話した。

 

ディスカッションでは、スピーカーとして藤原、インプレスR&D社長・井芹昌信、フュージョン会長・花井秀勝の3氏と塚田会長が登壇、モデレーターを郡司秀明専務理事が務め「差別化戦略と新たな仕事の創出」をテーマに討議した。

 

午後1時半からの第1部で開会あいさつした花崎博己副会長は、セオドア・レビットの論文「マーケティング近視眼」に触れて「消費者はドリルではなく、穴を必要としている。顧客は綺麗なカタログより、商品の売れるカタログを望んでいる」と述べ、印刷の事業目的に問いを投げかけた。

 

塚田司郎会長

塚田司郎会長

続いて塚田会長が「印刷再成長のための新しい企業経営とは」と題してキーノートを述べた。
塚田会長は錦明印刷における取り組みを明らかにしがら、ジェニファー・マットの『WEB2PRINT』の所論を紹介して今後の方向を示した。

 

ニコラス・ネグロポンテが『ビーイング・デジタル』で最初に示したように、情報ビジネスは、アトム(物的)経済とビット(デジタル)経済で同時に営まれ、ビジネスは急速にアトム経済からビット経済へ移行している。ゆっくり動いて人が扱うアトム経済に対してデジタル経済では将来は瞬時に安価で光の速さでデータが移動する。
印刷は、アトム経済の一部で、コンテンツを本、新聞、雑誌、DMなどに加工している。情報ビジネスには新しい配信システムがある。
事実上、情報ビジネスではすべての製品はレンダリングされてデジタル形式に置き換えられる。
この業界は、印刷製造による収入が100%という流れを多様化するために、プリント・プロバイダーからマーケティング・サービス・プロバイダーに移行するよう勧めてきた。
印刷会社はビット経済に参加するために、情報商品の一部をレンダリングしてデジタルの形にすることを考える必要がある。
オンライン取引を薦める5つの理由がある。
①世の中の取引はオンラインに移行している②オンライン取引は顧客とのやり取りのすべてを電子的に捕捉する③オンライン取引では他の製品やサービスも提供できる④セルフサービスでの注文は、時間・お金を節約する⑤技術はあなたと顧客との関係性を深める。
オンラインの取引は進化し続けている。家庭でもビジネスでも、リアル店舗で買うときでさえ、最初にオンラインで検索している。
もっとも、すべてのビジネスがオンラインに向いているわけではない。銀行のATMの例でもわかるように、預金引き出しなどの単純な取引はセルフサービスで、ローンや抵当権の相談はフルサービスの銀行へ行く。印刷もまったく変わらない。例えば再版などの単純なリピートの取引はセルフサービスに向いている。
印刷業は、昔からヒューマンタッチのビジネスだった。インターネットが進化して、カスタマイズやコンサルティングのプロセスをも変化させる。しかし、販売しているものすべてに当てはまるわけではない。
セルフサービスですべてを行うことはできない。戦略的に合う製品やサービスを選ぶ必要があり、労働力ではなく技術によってサービスを提供する。
自社の製品ポートフォリオで、セルフサービスに向いているものは何か。それを考えると、W2Pでは、なぜ名刺から最初に取り組むのか理由がわかる。
インターネットは注文を自動化するための入り口で、顧客に時間の節約を提供する。
検索は顧客側の言葉でW2Pを理解していく上で需要なことである。

 

講演1では藤井健人研究調査部部長が「JAGAT最新調査から読み解く印刷業界の動向」と題して講演し、印刷白書、印刷産業経営動向調査などから、①市場縮小の下げ止まりと頭打ち②商業印刷はチラシの苦戦、高質の伸長③出版は小ロット化、リスクと機会④オフ輪市場の需給改善、残存者利益⑤デジタル印刷の普及拡大も採算性?⑥設備投資活発化、印刷回帰、やや充足感⑦生産性は改善、成長性に課題――などのポイントを説明した。

 

藤原洋氏から勝ち抜くための処方箋聴く

 
講演2・特別講演では藤原氏が「インターネットが創り出す21世紀の経済力学―勝ち抜くための処方箋」をテーマに講演し、①日本の失われた20年とは?~欧米先進国とアジア主要国の中で日本のGDPだけが減少②世界を根本的に変えたインターネットの衝撃~「失われた20年」=「インターネットによる構造変化が起こっていることを」気づかずに過ごした20年③失われた20年を打破するアベノミクスの成長戦略の本質~IoTを中心とするビッグデータそしてAI④アベノミクスの推進に向けて動き出した岩盤規制改革⑤インターネット革命は次なるステージへ~IoT/ビッグデータ/AIというイノベーション⑥世界一のIoT社会を目指して~ICTの情報通信産業から他産業への拡散――の各点について説明、IoT時代へ向けて7つの大切なこととして次の点を指摘した。
 
①「IoT革命の推進」と「岩盤規制改革」の同時進行②工業社会のように供給者側の論理に基づく「既得権益業界のための社会」ではなく、情報社会とは需要者側の論理で成り立つ「消費者のための社会」を目指すこと③「イノベーションを求める主体」とは「消費者」と「生産者」。「一億総活躍社会」実現への具体化。誰もが「消費者」として欲しいものが手に入り、誰もが「消費者」の欲しいものを作れる「生産者」になれるチャンスのある社会が「一億総活躍社会」④「イノベーションを起こす主体」とは、起業家、科学者、技術者、投資家⑤「イノベーションを推進する主体」とは、政治家、政府、自治体。⑥過去30年間で「情報通信産業の自由化」を実現してきた情報通信分野のように、今後は、インターネット前提社会を実現すべく、あらゆる「産業の自由化(インターネット化)」を推進。これからの20年を託せる政治家、国家公務員、地方公務員と共同作業を⑦具体的に取り組むべきテーマは、世界でも始まったばかりの産業革命としての「IoT革命」であり、IoT/BiG Data/AIという分野。

 

4時半からの第2部では藤原氏らによるディスカッション「差別化戦略と新たな仕事の創出」を行った。その中で花井会長は、アメリカにおける「ダイレクト&デジタル」マーケティングの現況を数字で示すとともに、個客を識別する仕組みの重要性を強調した。

 

 

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