2016年08月18日

金子眞吾社長

金子眞吾社長

凸版印刷㈱は、8月3日午後1時半から、東京・港区のトッパン芝浦ビル2階プレゼンルームで夏季記者懇談会を開き、2016年3月期の業績概況、今年度の経営方針、経営課題などについて説明した。2016年3月期の業績では連結売上高は前期比3・4%減の1兆4746億円、連結営業利益は同18・7%増の485億円、連結経常利益は同14・6%増の518億円、当期純利益は同54・1%増の352億円で4期連続の増益となった。

 

金子眞吾社長は今年度の方針について「本年はフロンティアスピリッツを持って前人未到の分野へ踏み込んでいく年にしたいと考えている。そのためにも3つの経営課題である『グループを含めた構造改革の遂行』『新事業・新市場の創出』『グローバルな事業展開の加速』を迅速に実行し、具体的な成果に結び付けたい」と強調した。

 
記者会見には金子社長と山中紀夫上席執行役員が出席し、緒方宏俊広報本部長の司会で進められた。はじめに金子社長が2016年3月期の業績概況、今年度の経営方針、経営課題、最近のトピックスなどについて、次のとおり説明した。

 

 構造改革を推進し、経営基盤を強化

 

日本経済は、政府による経済政策の効果などによって雇用や所得の環境が改善し、外需企業を中心に業績の回復が見られるなど、全体としては緩やかな回復傾向が続いていると思われる。一方で、中国をはじめとするアジア新興国経済の減速による景気の下振れリスク、これに原油価格の下落、あるいは金融資本市場の変動の影響で先行きは不透明な状況である。先般のイギリスのEU離脱ということである意味では不透明な時代が続きそうだというような認識をしている。印刷業界においては、ペーパーメディアの減少とデジタル化がさらに進展し、従来の印刷事業のあり方そのものが転換期に差し掛かっていると思われる。その変化は人工知能やIoTなど技術革新が加速しており、まさに情報革命といえる。

 

当社の2016年3月期の業績では連結売上高は前期比3・4%減の1兆4746億円、連結営業利益は同18・7%増の485億円、連結経常利益は同14・6%増の518億円、当期純利益は同54・1%増の352億円だった。

 
また、2016年度通期業績見通しでは、連結売上高は前期比2・4%増の1兆5100億円、連結営業利益は同4・1%増の505億円、連結経常利益は同3・6%減の500億円、当期純利益は同31・9%減の240億円である。

 
おかげさまで昨年度の決算では、連結営業利益が485億円で4期連続の増益となり公表値を達成した。しかし、経営環境の変化は続いており、持続的な成長のために引き続きグループの全体最適の視点から構造改革を推進し、経営基盤の強化に努めていく。

 
成長分野に対しては積極的に経営資源を投入し、新たな事業の創出とグローバルな事業展開を加速していくことが必要だと考えている。

 
新たな役員体制について。当社では経営意思決定のさらなるスピードアップや取締役会のより一層の活性化を図るため、コーポレートガバナンス体制の変革を進めている。

今年度その一環として、取締役数を減員するとともに、執行役員制度を導入した。新たな体制で経営の質を高め、スピードを上げて経営課題に取り組みたい。

 

 3つの経営課題に取り組み成果につなぐ

 

経営課題について。本年はフロンティアスピリッツを持って前人未到の分野へ踏み込んでいく年にしたいと考えている。そのためにも3つの経営課題である『グループを含めた構造改革の遂行』『新事業・新市場の創出』『グローバルな事業展開の加速』を迅速に実行し、具体的な成果に結び付けたい。

 
はじめに情報コミュニケーション事業分野における社会課題に向けた取り組みについて説明したい。本年4月1日付の組織人事で情報コミュニケーション事業本部に「ソーシャルビジネスセンター」を新設した。同センターではヘルスケア分野を中心に社会的な課題の解決を図るソリューションビジネスの提供を加速するとともに、エリア事業部やグループ会社との連携を強化して、公共系事業の全国展開を図っていく。

 
あわせて「BPOソリューションセンター」を新設した。BPO事業において、全国に横串を通す組織として、エリア事業部のBPO関連部門とも密接に連携できる体制を構築し、システムやノウハウの共有を進めていく。その第1弾として朝霞工場内にBPO事業の中核を担う新拠点「BPOスクエア朝霞」(埼玉県新座市)を設立し、本年7月末に本格稼働を開始した。業務設計、コンタクトセンター、事務センター、システム開発、品質管理などBPO事業のあらゆる機能と人員が結集する場としてお客さまに活用していただくことを目指している。

 
次にメディア関連事業の推進について説明したい。現在、電子チラシサービス「Shufoo!」、電子書籍サービス「BookLive」、地図情報サービス「Mapion」などトッパンのメディア関連サービスでは、主要3サービス合計の月間閲覧数が5億ページビューを超え、利用者数で3000万人、会員数で500万人強と存在感が増している。これらのサービスを核に、BtoC、BtoBtoCメディアとしての展開を強化していく。
 
「Shufoo!」に関連して2020年の東京オリンピックに向け、ICTを用いて地域の歴史文化を観光資源化するニーズが高まっており、さらなる市場拡大が見込まれている。そこで、本年3月から訪日前および訪日中の外国人に対して流通企業のチラシをはじめとする買い物情報をお届けするサービスを開始した。「Mapion」の外国語対応サービスとも連携し、今後増加が見込まれる訪日客にもサービスを展開することでメディアとしての価値を高めていく。
 
「BookLive」においては、有力なパートナー企業との連携を強化しユーザー数拡大に向けた施策をより一層強化していく。「Shufoo!」「BookLive」共に2015年度は黒字化をすることができた。今後もメディア関連事業の連携を強化しシナジー効果を発揮させていくとともに、積極的に新しいソリューションを開発してより一層の成長を図っていく。

 
新しい事業「ストリートミュージアム」は、位置情報と連動し、訪れた場所ならではの感動をヴァーチャルリアリティを用いて旅行者に提供するサービスである。例えば、福岡城では失われた天守閣が利用者のいる場所にあわせ風景と合成されたCGとして表示される。これにより、臨場感に溢れた鑑賞体験が可能となる。これまでに福岡城はじめ、熊本城、富岡製糸場のCG映像ガイドツアーなど、多数の史跡や産業遺跡で採用されている。
 

さらにストリートミュージアムでは、さまざまな自治体の持つコンテンツを一つのアプリで掲載できるようにした新サービスを本年7月から開始した。江戸城や唐津市の名古屋城など5カ所のコンテンツを用意し、これを2017年度には50カ所まで拡大していく計画である。

 
次に生活・産業事業分野の取り組みについて。本年4月1日付の組織人事では、生活・産業事業本部に「環境デザイン事業」を新設した。トッパン・コスモの持つ建装材事業と凸版印刷の生活・産業事業を統合した新組織である。この統合により、従来、トッパン・コスモが製造していた化粧シートなどの住宅向け商材において、マーケティング視点を取り込むことで新たな商材の開発を加速していく。また、新生トッパン・コスモは、特定の事業分野に特化することなく、大トッパンの商社として機能強化していく。

 
バリアフィルム事業の海外展開について。全世界の包装市場は環境対応の観点から包装材の減量化や、瓶・缶から軟包装材への置き換えが進みつつあり、今後、透明バリアフィルムへのニーズが拡大すると推測されている。このような市場動向を受け、透明バリアフィルムの海外初となる生産拠点としてTOPPAN USAジョージア工場を建設し、本年4月7日に竣工式を行った。この工場では世界最高レベルのバリア性能により、食品、飲料、医療医薬、産業資材などさまざまなニーズに対応する透明バリアフィルムのトップブランド『GLフィルム』を中心に生産を行う。昨年6月に設立したシカゴ事務所を中心に北米をはじめ欧州や今後市場の成長が見込まれる中南米などに向けて高品質な透明バリアフィルムを提供していく。

 
最後にエレクトロニクス事業分野の成長戦略について。カラーフィルター事業やフォトマスク事業については、全体最適の視点に立ち、徹底した構造改革を実行するとともに、低収益事業については改善を継続して行っていく。
 

 液晶調光フィルム事業に注力

 
 
さらに、新商材や新製品の開発を行い、新事業の創出を図る。具体的には九州ナノテック光学と協業し、液晶調光フィルム事業を積極的に展開していく。液晶調光フィルムとは、液晶を使い、電源のオンオフで透明と不透明を瞬時に切り替えることができるフィルム。
主な用途は住宅やオフィス、公共施設の窓、商業施設の映像投影スクリーン、サイネージなどである。
さらに今後は自動車や航空機などのブラインドなどへも用途拡大が見込まれている。
当社は、このフィルムの販売と独占製造権を九州ナノテック光学から取得し、本年5月から販売開始した。
さらに生産ラインを滋賀工場に新設し、2017年度前半期から量産を開始する計画である。ディスプレイ関連事業や建築資材分野、マーケティングプロモーション分野での販売チャンネルを活用し、ワールドワイドに事業を展開していく。

 
最後に最近の当社の社会貢献・文化貢献活動について。

 
1つ目は熊本地震の復興支援の取り組みである。4月14日以降発生した熊本県を中心とする一連の地震では幸いにも社員やその家族に関しては人的被害がなかった。ただし、トッパンパッケージプロダクツ玉名工場や、トッパンエレクトロニクスプロダクツ熊本工場、西日本事業本部の熊本営業所は建物や設備が一部損壊を受け、一時生産が停止したが現在は稼働開始している。
 
東京国立博物館内のTNM&トッパンミュージアムシアターではVR作品「熊本城」の復興支援特別上演を6月22日から7月10日まで行った。今回の特別上演では熊本市の賛同のもと企画したもの。鑑賞料(500円)は、熊本城の修復再建の目的で、熊本城災害復旧支援金へ全額寄付する。上映されたVR作品「熊本城」は、凸版印刷が熊本城研究の専門家による学術監修のもと、2011年に製作した作品で、江戸時代の熊本城をテーマに当時の素晴らしい熊本城を再現している。

 
文化貢献の一環であるクラシック専用ホール「トッパンホール」(東京・文京区)がコンサートホールとして初めて2015年度の「サントリー音楽賞」を受賞した。歴史ある洋楽振興の表彰制度で、同ホールの活動が高く評価された結果だと思っている。今後も培った企画力と技術力を活かした当社ならではの社会貢献・文化貢献活動に積極的に取り組んでいきたい。

 
印刷業界を取り巻く環境は革命ともいえるほどの大きな変化が起こっている。この環境変化をチャンスと捉え、これからも印刷テクノロジーを日々進化させ、新しい領域においてもお客さまの課題を解決し、社会に貢献したい。

 

生活空間を設計する「環境デザイン事業部」 4月から新たなスタート切る

 

金子眞吾(左)と  山中紀夫上席執行

金子眞吾(左)と 山中紀夫上席執行役員

記者懇談会では、金子社長による業績説明につづいて、山中上席執行役員が今年4月に発足した「環境デザイン事業部」について、要旨次のとおり説明した。

 
当社は、グラビア印刷技術や表面加飾加工技術、微細加工技術をベースに建装材をターゲットに生活空間の構築に長く関わってきた。1951年に板橋工場において建材用グラビア製版印刷をスタートして以来、家具、建具、壁、床の化粧シートなどを開発し販売してきた。1968年には「建材事業部」が発足し、当時から高意匠、高機能を強みとして、近年は住宅用の内装から外装へ、また、ホテルや病院、公共施設など住宅以外のコマーシャル分野への市場展開を加速している。
 
主な製品として「エコシート」は1995年に環境・安全・安心をキーワードに塩化ビニール樹脂を使用せず、環境に配慮したオリジナル化粧シートを業界に先駆けて販売した。大手建材、住設、ハウスメーカーに提供していた化粧シートを、すべてエコシートに切り替えるとともに、拡販を進め、業界スタンダードを確立した。
 
「マテリウム」は、ホテルや商業施設など非住宅の壁面用製品として開発。自然素材の質感を持つ化粧シートと不燃基材を組み合わせた不燃化粧パネル。新技術「質感コート」により導管同調表現が可能になった。天然木の魅力的な表現に加え、独特の手触りを再現することで新しい質感表現を生み出している。
 
「フォルティナ」(内装仕様・外装仕様)はアルミニウムを基材として高意匠シートと組み合わせた不燃製品。ルーバーやスパンドレル、手摺やオーバードアーなど、外装用途での長期間使用に耐えられる高い耐候性機能を持った製品。内装用はエコシートと連動した幅広いデザインバリエーションを取り揃えている。

 

ナノテク駆使した「スマート ナノ」開発 耐傷性約2倍の化粧シート

 
さらに、今回、東京理科大学初のベンチャー企業との共同開発で、ナノテクノロジーを駆使した新技術により世界最高水準の建装材向け化粧シート「スマート ナノ」シリーズを開発。従来製品と比較して約2倍の耐傷性と、高い耐汚染性を実現。第1弾製品として住宅向けの床材用化粧シートを展開する。
 
本年4月から「建装材事業」は「環境デザイン事業」として新たなスタートを切った。今後は建装材というモノの提供だけに留まらず、ソフトと組み合わせて、生活空間を設計するという視点で事業を拡大し、トッパングループの総合力による新しいサービスソリューションを国内外に展開し続け、様々な社会課題の解決に貢献していく。

 

 

【役員体制】
新任取締役(2人)=前田幸夫専務取締役、遠山亮子社外取締役
昇任取締役(3人)=長山芳幸(専務取締役)取締役副社長、麿秀晴(常務取締役)専務取締役、松田直行(常務取締役)専務取締役
退任取締役(1人)=熊本優一(取締役副社長)同社相談役(常勤)
新任上席執行役員(8人)=小谷友一郎、岩瀬浩、山中紀夫、中尾光宏、佐藤友治、坂井和則、野口晴彦、斉藤昌典
新任執行役員(15人)=萩原恒昭、好川英郎、伊藤貞典、深田克彦、小佐見茂、鬼塚信行、鎌仲宏治、大谷智、吉本晋二、池田隆夫、小町千治、奥山卓二、穴水芳光、山中欣也、真島宏徳

 

 
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