2016年08月09日

北島義俊社長

北島義俊社長

大日本印刷㈱の北島義俊社長は7月27日午前11時半から東京・丸の内のクラブ関東で印刷関連マスコミと懇談し平成28年3月期の業績について説明した。

 

同社は前期(前年同期比)連結売上高0・4%減1兆4559億円、営業利益5・6%減454億円、経常利益2・1%減526億円、当期純利益24・8%増335億円だった。同社は今年の10月に創業140周年を迎える。

 

北島社長は「これまで、事業領域を広げることで困難を乗り越えてきたが、現在は戦後の混乱期にも匹敵するような大きな変化のなかにいると認識している。今後DNPがさらに発展していくには、自ら進んで変革に取り組んでいく必要がある。その意味を込めてビジョンを見直し、昨年10月『DNPグループビジョン2015』を定めた」と述べた。

 

新しい企業理念として、「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」ことを掲げ、事業ビジョンを「P&Iイノベーションにより、4つの成長領域を軸に事業を拡げていく」とした。成長領域は、①「知とコミュニケーション」②「食とヘルスケア」③「住まいとモビリティ」④「環境とエネルギー」の4つ。

 

北島社長は「昨年度の国内経済は、政府の経済対策や日銀の金融緩和を背景に企業収益や雇用情勢が回復するなど、緩やかな回復基調で推移したが、個人消費の伸び悩みや、中国をはじめとする海外経済の減速に加え、年初から為替相場や株式相場の変動の影響もあり、本格的な景気回復には至らなかった。印刷業界では、出版印刷物をはじめとした紙媒体の需要減少に加え、競争激化による受注単価の下落などにより、引き続き厳しい経営環境にあった」と前置きし、前期の業績、今後の事業展開などを説明した。

 

 

情報コミュニケーション部門は、情報セキュリティへの企業ニーズの高まりを背景に、パーソナルメールなどのIPSや電子マネーなどのICカードが増加した。また、マイナンバー関連業務や金融機関からのBPO事業などが拡大して収益が改善した。

 

イメージングコミュニケーション事業は、証明写真機「Ki-Re-i(キレイ)」を使って、顔写真の撮影から、高セキュリティな通信環境によるマイナンバーの個人番号カードの申請まで行えるサービスをスタートした。また、北米や東南アジアでの写真プリントの需要拡大によって昇華型熱転写記録材などが好調に推移し、前年を大きく上回った。

 

教育・出版流通事業は、書店とネット通販、電子書籍販売サービスを連携させたハイブリッド型総合書店「honto」が順調に推移したほか、図書館サポート事業が受託館数の増加によって拡大するなど、前年を上回った。

 

当部門の売上高は前期比4%増の8216億円、営業利益は32・3%増の293億円。
今年4月には、情報ソリューション事業部とC&I事業部を統合し、新たに情報イノベーション事業部とした。これにより、マーケティングと決済サービスの融合を進め、ICTやBPOなどの分野で連携を強化するなど、新たなビジネスモデルを開発していく。

 

生活・産業部門は、太陽電池用とリチウムイオン電池用の部材は、ともに好調に推移して、前年を上回った。
包装関連は、紙カップやプラスチック成型品が増加したが、ペットボトル用無菌充填システムの販売が減少し、建材も住宅建設需要の回復の遅れによって減少した。

 

当部門の売上高は前期比1・5%減の3826億円、営業利益は7・9%減の125億円。

 

エレクトロニクス部門は、ディスプレイ関連製品事業は、次世代製品として期待される有機ELディスプレイの製造に使う蒸着マスクが順調に推移したが、液晶ディスプレイ用カラーフィルターや反射防止フィルムが減少し、前年を下回った。
電子デバイス事業は、半導体製品用フォトマスクは海外向けが増加したものの国内向けが伸び悩み、またリードフレームも減少して、前年を下回った。

 

当部門の売上高は前期比13・4%減の1993億円、営業利益は20・8%減の205億円。

 

清涼飲料部門は、主要ブランド商品の強化、エリアマーケティングを活かした自動販売機事業の推進など、既存市場のシェア拡大と新規顧客の獲得に努めたが、コカ・コーラやスポーツ飲料が減少し、売上高は前期比2・6%減の580億円、営業利益は8%減の9億円。

 

今期の業績見込み(前年同期比)は、連結売上高1・0%増1兆4700億円、営業利益5・6%増480億円、経常利益2・6%増540億円、当期純利益2・7%増345億円。

 

10月に創業140周年、人と社会をつなぎ新しい価値提供

 

DNPは今年の10月に創業140周年を迎える。これまで、事業領域を広げることで困難を乗り越えてきたが、現在は戦後の混乱期にも匹敵するような大きな変化のなかにいると認識している。今後DNPがさらに発展していくには、自ら進んで変革に取り組んでいく必要がある。
その意味を込めてビジョンを見直し、昨年10月「DNPグループビジョン2015」を定めた。 新しい企業理念として、「DNPグループは、人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」ことを掲げ、事業ビジョンを「P&Iイノベーションにより、4つの成長領域を軸に事業を拡げていく」とした。

 

 

 1.「知とコミュニケーション」
高度情報化社会において、価値ある情報を、安心・安全に、最適なかたちで伝えることで暮らしを支え、文化を育んでいく。
例えば、日本ユニシスとの提携について、国際ブランドプリペイドの決済用プラットフォームや電子マネー関連のシステム構築などで成果があがっている。また、昨年7月にアプリ改ざん防止用ソフトを提供するハイパーテックをグループに迎えたほか、今年3月には標的型サイバー攻撃への対策要員を育成するサイバーナレッジアカデミーを設立した。

 

このほか、今年9月までDNP五反田ビルで開催中のフランス国立図書館(BnF)との「地球儀・天球儀展」では、3次元デジタルアーカイブとバーチャルリアリティー技術を活かした新しい鑑賞手法を提示している。拡大・縮小・回転などで細部まで鑑賞できるほか、天球儀の中に入り込んで星空を見上げるような体験もできる。7月4日から9月18日までフランス・パリのBnFのミッテラン館でも、同様の展示会が開催されている。

 

 2.「食とヘルスケア」
高齢化社会の中で、安全で質の高い生活や、生涯にわたる健康維持を目指していく。
例えば、飲料や食品向け紙容器メーカーの世界大手で、再封可能な口栓付きの紙容器や、果物・野菜等の固形物が充填できる紙容器など、特長のある無菌充填システムを持つスイスのSIG(エスアイジー)コンビブロックグループとの協業に合意した(2016年7月)。全世界で50以上の製品分野、約1万種類の製品がSIG社のシステムで生産されており、日本ではあまり見たことのない、特徴的な形の容器によってお店での差別化を図っていく。

 

食品でもパーソナル化が進んでおり、DNPは自分の好きな写真を印刷してオリジナルのパッケージを作るシステムを提供している。「DNPパッケージプリント・オンデマンドPrio-self(プリオセルフ)」では、「キットカット」のパッケージに好みの写真等を印刷するサービスなどを展開している。

 

日本語だけでなく、英語、韓国語、中国語にも対応しており、インバウンド向けにも人気である。

 

また再生医療などのライフサイエンス分野では、医療用画像管理システム大手のPSP㈱と業務・資本提携し、病気の原因究明につなげる画像解析技術などの開発を進めていく。

 

このほか、農作物の生産性を高める農業用フィルムなど、印刷技術を活かした新製品や新サービスを積極的に展開していく。

 

 3.「住まいとモビリティ」
生活者の価値観の多様化やパーソナル空間への要望の高まりに対して、快適性の向上を目指していく。心地よい空間を作り出す製品を開発するほか、モノのインターネット(IoT)の進展なども見据え、スマート社会の実現に向けた事業も推進する。
例えば昨年8月に、自動車分野の事業拡大に向けて、金型や樹脂成形の優れた技術を持つ田村プラスチック製品をグループに迎えた。同社とDNPの技術を組み合わせた新製品開発を推進していく。また、電子デバイス事業で培ってきたナノインプリント技術を活かし、車の自動制御に必要な光センサー用の光学素子の開発・量産にも取り組んでいる。

 

 4.「環境とエネルギー」
経済的な成長と環境保全の両立に向けて、持続可能な社会の実現に取り組んでいく。
窓からの光を天井などに反射させて室内を明るくする「DNP採光フィルム」はその新製品のひとつ。また少ない光でも広い範囲に届けて省エネに貢献する内装材「DNP高反射 光拡散エリオ」は、東北・北海道新幹線や北陸新幹線の車両などに採用されている。

 

エネルギー関連では、高い世界シェアを獲得しているリチウムイオン電池用部材の拡販に努めるほか、スマートハウスやスマートシティへの対応を強化していく。また、省資源や省エネなどにつながる環境配慮製品・サービスの開発に力を入れていく。

 

DNPはこれらの成長領域で社会課題を解決し、既存事業の拡大と新規事業の創出に努めていく。そして、生活者の暮らしや企業の業務プロセスに欠かせない、常に身近にあるのが“あたりまえ”となるような「未来のあたりまえ」となる製品・サービスをつくり出していく。

 

市谷地区の再開発進む

 

私たちは今、新しいグループビジョンを進める拠点のひとつとして、市谷地区の再開発を進めている。

 

昨年8月に25階建ての「DNP市谷加賀町ビル」が、12月に「DNP市谷鷹匠町ビル」がそれぞれ完成した。市谷地区には本社機能のほか、情報コミュニケーション部門を中心に企画や営業などの機能を集約して総合力を高め、成長領域での事業の拡大を進めていく。

 

今、事業の価値を高めていくには、企業や生活者との対話を深めてニーズを先取りするとともに、新しい需要そのものをつくり出していく必要がある。市谷地区の再開発を通じて、多くのパートナーとコラボレーションしやすい環境を整えていく。「対話と協働」によって、まずは新しい価値につながるアイデアを出し、それを試作して、マーケティングの実証実験やテスト販売などを行い、その結果をフィードバックしてビジネスモデルを構築していくというサイクルを作っていく。

 

BPOセンターは全国5拠点に

 

その他のトピックスとしては次のようなことがある。

 

マイナンバー制度に関連してDNPは、ICカード発行業務や、証明写真機「Ki-Re-i」で個人番号カードが申請できるサービスなどを提供している。このサービスは多くのテレビや新聞に紹介され、生活者の評判も良く、Ki-Re-iの利用が大きく伸びた。
また、スマートフォンで通知カードや個人番号カードを撮影するだけで、勤務先や金融機関などにマイナンバーを申告できる「DNPマイナンバーWEB(ウェブ)収集サービス」も運用している。

 

マインナンバー関連のほか、金融機関の業務プロセスやキャンペーン事務局などでも、大量の個人情報を安全、確実に処理するBPO事業が順調に成長している。
DNPは単なる事務代行ではなく、各企業の事業に合わせて最適な業務プロセスをゼロから設計し、体制の整備やシステムの構築、運用などをトータルに行っている。

 

最近は、従業員のストレスチェック制度や、電力・ガスの小売り自由化などにともない、申込書の回収、受付登録や書類審査、データ入力や通知書発行などの一連の業務で、DNPのBPO事業へのニーズも急速に高まっている。

 

こうした需要拡大に応えるために、昨年12月にBPOセンターを東京と仙台に新設し、これまでの3拠点(東京・大阪・名古屋)と合わせて全国5カ所の体制とした。これにより、高い情報セキュリティ環境のもと、DMに換算して従来の約2倍となる年間2000万通以上の処理が可能になった。

 

イメージングコミュニケーション事業では、世界のフォトプリント市場では、従来の銀塩方式のプリント機器からドライ方式のデジタル写真プリントシステムへの切り替えが進んでいる。北米で8000店舗を展開するドラッグストアのウォルグリーンは、自社のプリントシステムをDNPのプリントシステムと消耗品に切り替えており、欧米での販売が大きく伸びた。

 

国内では、撮影した顔写真を安全にネットワークでサーバーに送信できる証明写真機「Ki-Re-i」の機能を活かし、マイナンバー対応に加え、企業の顔写真付き社員証の作成サービスをこの8月に開始する。

 

また、コンテンツ画像のプリントサービスを行う「イメージングモール」を昨年8月に開始した。音楽のアーティストやアニメのキャラクター、スポーツ選手等の写真がほしい生活者のニーズに応えるもので、コンテンツ保有企業は当サービスによって、画像データの保管から、販売サイトの構築・運用、注文受付と高画質プリント、発送までを容易に行えるようになる。
当社のコア技術を活かした高機能フィルムの開発にも力を入れている。

 

昨年10月に、窓から入る光を天井などに効果的に反射・拡散させて、部屋全体を明るくする「DNP採光フィルム」を発売した。このフィルムを日当たりの悪い北側の窓で使った実験では、室内の明るさが2倍に向上し、電気代を10%以上削減するという結果が得られた。また、紫外線を約99%カットし、ガラスが割れた際の飛散を防ぐ機能も備えており、住宅やオフィス、店舗や病院などで引き合いや導入が増えてきている。

 

今年2月には、樹脂ガラスに転写して耐候性や耐摩耗性を高める「DNP超耐候ハードコート転写フィルム」を開発した。樹脂ガラスは通常のガラスよりも割れにくく断熱性に優れ、重量も約半分と軽いため、電車の車両や建設機械、自動車の窓ガラスなどに使用したいというニーズが高まっている。この製品もリリース後に多くの引き合いがあり、自動車や電車などへの採用につなげていく。

 

 

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