2014年11月30日

全日本印刷工業組合連合会(島村博之会長)は10月末、自由民主党中小印刷産業振興議員連盟(中曽根弘文会長)に、教科書の電子化に対する要望書を提出した。要望書では単なる便利さ・効率的観点ではなく、教育に集中して五感に訴えることの出来る教科書はどういう形が望ましいのかを、慎重に検証・検討していくことの必要性を説いている。
 
『教科書の電子化に対する考察について』と題した同書は、〝拡散のメディア〟である電子書籍ではなく、従来通り〝集中のメディア〟である紙の教科書を利用してもらえるよう協力をお願いしたもの。
 
紙の書籍と電子書籍の優劣をそれぞれの項目から比較検証した一覧表、人間の記憶の仕方や眼球運動などから、なぜ電子書籍が教科書に適さないかの考察を有識者や各メディアのソースを元に紹介することで、より深い理解を促す内容となっている。

 

 
要望書の概略は次のとおり。
 
小説、実用書、文芸書、雑誌など、さまざまな形の電子書籍化が進む中で、指導者用教材の電子化についても一部の自治体の動きがある。しかし、印刷業界としては、電子化には適するモノと適さないものがあり、教科書は電子化に適さないと思う。使い分けが肝要であり、言語脳科学の見地や紙と電子データの特徴・特性の比較など、種々のことから教科書は今後も紙の教科書が望ましいと考える。
人間の記憶は文字でも画像でも情報として視覚から脳内に入った場合、情報処理過程を経て記憶装置に格納されるが、そこには「短期記憶装置」と「長期記憶装置」があるとされる。紙の書籍の場合は記憶を妨げる要素がなく、安定的に長期記憶に定着させるが、電子書籍の場合は紙の書籍にない違和感が記憶を阻害し、短期記憶に留まってしまう。電子書籍は一時的な情報の検索や娯楽などの読書には役立つが、人間の知的向上への寄与と言う面では紙の書籍が今後も優位性を持ち続けるだろう(尾鍋忠彦東京大学名誉教授)。

 

 

19日、東京・永田町の自由民主党本部で開かれた、自由民主党中小印刷産業振興議員連盟の総会の席上、全印工連の島村会長と生井義三専務理事が同要望書について改めて説明した。

 

総会に参加した連盟会員の議員からは「文字を読み込む文化をなくしてはならない」「教科書をなくすのではなく、電子はプラスαの要素。両方の棲み分けが必要だ」「われわれもまだ調査研究不足。学校現場の課題も含めて、会議を重ねていく」との意見があがり、中曽根会長も「学校へのインターネット導入というICTから、タブレットを導入するか否かという時代になった。しかし、私自身は検索と学力を高めるものには区別が必要だと考えている」と理解を示した。
 
 

PAGE TOP