2016年04月23日

印刷は水と空気以外は何にでも刷ることができると言われる。それほどまでの汎用性の広さのほとんどを担う技術が、シルクスクリーン印刷だ。そのシルクスクリーン印刷分野でも、近年はデジタル印刷への移行が進んでいる。しかし、あらゆる基材に印刷ができるというシルクスクリーン印刷の汎用性の広さを踏襲できなければ、真の意味での移行は成しえない。㈲ハタヤ(本社・兵庫県神戸市西区伊川谷町別府121の1、吉川眞五社長)では、シルクスクリーン印刷機で行っていた仕事をデジタル印刷に移行するべく、プライマーオプションによる基材対応力の広さと高速生産性をあわせ持つ、アグフア社製のフラットベッドUVインクジェット印刷機「ジェットアイ タイタンHS」を今年5月に導入。これを活用して既存の仕事の効率化を図るとともに新しいアプリケーション製作による新市場開拓も進め、自社の立ち位置を1段階ステップアップさせた。

 

同社は昭和57年に創業したシルクスクリーン印刷会社。安全標識や一般施設の案内サイン、階数表示、フロア案内、ピクトグラムなどのほか、産業系の銘板などをメーンに製作をしてきた。同社のデジタル印刷化への取り組みは比較的早く、平成9年に静電プロッターを導入したのがその始まり。その後、水性インクジェットプリンター、溶剤系インクジェットプリンターを導入していき、現在は仕事全体の約4分の3をデジタル印刷が占めている。印刷機の構成としては、シルクスクリーン印刷機は半自動機5台と全自動機1台の計6台、それに水性インクジェットプリンター2台、溶剤系インクジェットプリンター4台、UVインクジェットプリンター1台。ここに新しく加わったのが、「ジェットアイ タイタンHS」だ。

 

吉川眞五社長

吉川眞五社長

シルクスクリーン印刷では印刷する基材に合わせてインキの種類が選択できる。一方、インクジェット印刷は単一のインクを使うのだが、接着が難しいPPやプラダン、アクリル、金属などでもしっかりとインクが接着しなければならない。そこで大きな効果を果たすのが、「ジェットアイ タイタンHS」が搭載するプライマーオプションだ。「UVインクジェットプリンターの導入に際し、とにかく接着にこだわった。とりあえず印刷することができても、後でインクが剥がれ落ちたらクレームを受け、信頼をなくしてしまうからだ。“ジェットアイ タイタンHS”は、インクジェット印字の前に、インクをしっかりと基材に接着させるための下地処理として、機上でデジタルプライマーとして塗布する。この接着能力に匹敵するものはほかにはなかった」と同社の吉川社長は、インク接着性について評価する。プライマーはデジタルインクジェットで塗布するので、塗布されるのは必要な部分だけ。したがって、基材が持つ質感が損われることもない。そこでこの接着性の高さを活用し、これまではシルクスクリーン印刷で製作していた建築現場を囲うプラダンのパネルなどをUVインクジェット印刷に移行。生産の瞬発性やコスト面で圧倒的な能力を発揮している。

 

また、シルクスクリーン印刷でなくてはならないのが、濃度が高い白インクだ。「ジェットアイ タイタンHS」はこの点でも大きな効果を発揮している。「透明な基材やウィンドウディスプレイなどでは白インクが必須となる。水性や溶剤系とは違ってUVインクは濃度が高いので、活用できる範囲が広くなる。“ジェットアイ タイタンHS”のインクは少量でも濃度が出るので、とてもインパクトのある白が打て、顧客の反応が全然違う。また、少量で濃度が出るので、インクがなかなか減らないため、大きなコストダウンになるメリットもある」(吉川社長)

 

ジェットアイ タイタンHS

ジェットアイ タイタンHS

「ジェットアイ タイタンHS」は生産性も高く、7色(C、M、Y、K、Lm、Lc、白)すべてを使った印刷でも、さらにはプライマーオプションを使っても速度は落ちず、最大で毎時115平方㍍。同社では従来UVインクジェットプリンターと比較すると、その生産性は5倍近くにもなるという。しかも、3・2㍍幅という大型機なので、これまで(同社の既設機の最大幅は2・5㍍)は分割して印刷していたものが分割しないで印刷できたり、より多面付けができることもあいまって、生産性も飛躍的に向上した。さらに、「ジェットアイ タイタンHS」の採用と同時に、アグフア社製PDFワークフローRIP「アサンティ」も導入。前工程の自動化も進め、「ジェットアイ タイタンHS」の高生産性を活かし切るシステムを構築するとともに、ほかの印刷方式で製作したアプリケーションとのカラーマネジメントをとれる体制も整えた。

 

同社では、「ジェットアイ タイタンHS」によって、従来シルクスクリーン印刷機で行っていた仕事をこなしていくほか、フラットベッドでボードメディアへの印刷ができる特徴を活かし、ディスプレイや家具、棚、等身大の人型POPといった立体造形物の製作も行っていく方針。「屋外広告の規制が厳しくなり、その需要が減っていく可能性もある。それならば自由なデザインができる屋内に目を向け、店舗のディスプレイ、デパートのショーウインドウなどに力を入れていく。その一環として、社内デザイナーが制作した意匠を凝らしたインテリアなども含めたトータルな空間デザインの提案をしていこうと思う」と、吉川社長は「ジェットアイ タイタンHS」によって自社の立ち位置をワンステップ上にあげることを目論む。

一方で、シルクスクリーン印刷をやめることはないという。「たしかにシルクスクリーン印刷は手間がかかるので、UVインクジェット印刷でやればその労力は2割程度で済むだろう。だが、当社をここまで成長させてくれたシルクスクリーン印刷の良さを見直し、UVインクジェット印刷に移行して空いた時間で、シルクスクリーン印刷の質感・色彩などで付加価値を感じてもらえるような紙への印刷を展開していく。高級印刷やアート系印刷のほか、紙雑貨、ポストカードの分野で新しい販路を見出す」と、吉川社長は最新技術の採用とともに、旧来技法ならではの特性と良さをベースにした新たなビジネス開拓にも目を向けている。

日本印刷新聞 2015年8月10日付掲載【取材・文 小原安貴】

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