2016年04月15日

水なし/あり版兼用のCTP

水なし/あり版兼用のCTP

水なし印刷のテクノロジーリーダーとして、平成24年に世界初の水なしEco-UV印刷を開始したヨシダ印刷㈱(本社・石川県金沢市御影町19の1、吉田克也社長)。ローラー交換が高頻度なことやメンテナンスでの苦労、水幅が狭いことによる印刷品質の不安定さなどから水あり印刷では難易度が高い省電力UV印刷だが、水なし印刷ではこれらの問題がないために比較的容易に立ち上がった。同社では本社工場での運用成功を受け、平成26年12月には東京地区での製造拠点である江東潮見工場でも、既設の水なし印刷専用菊全判4色印刷機に「Eco-UVシステム」を後付けし、垂直立ち上げに成功している。

同社は明治39年創業で、100年を優に超える長い歴史と実績を持つ老舗印刷会社。本社がある金沢市を中心とした北陸3県のほか、東京、大阪、京都に拠点を持ち、美術印刷、帳票、書籍、カタログ、パンフレットなどの印刷品目をメーンに営業するほか、Webマネジメントシステムといったデジタルコンテンツなども手掛ける。

今井常務

今井常務

事業の基盤となる印刷分野では、市場が環境配慮に注目し出す前の平成4年から、金沢工場で水なし印刷を開始。社会のニーズに先駆けて環境配慮を志したことに加え、インキの過乳化による濃度不足や乾燥不良、裏付きなど、湿し水に起因するトラブル撲滅を目指して採用した。現在、本社工場では、菊全判水なし専用Eco-UV4色機、菊全判水なし専用Eco-UV5色コーター付機、菊半裁水あり/水なし兼用4色反転機、菊全判水あり/水なし兼用2色反転機などをラインナップ。江東潮見工場では、菊全判水なし専用Eco-UV4色機、菊半裁水なし専用5色機、菊全判水あり/なし兼用2色反転機、菊全判水あり2色反転機などを取り揃える。主力の菊全判カラー機はすべてEco-UV水なし仕様となっている。

江東潮見工場で水なし印刷をスタートしたのは、同工場で初めて4色機を導入した平成20年。カラー印刷のオペレーターを育成するにあたり、湿し水コントロールという難しい要因がなく、かつ網点がシャープで品質に優れていることから、本社工場で積み上げてきたノウハウや実績、経験、資機材を適用し、順調に立ち上がった。

そして平成26年12月、この4色機に後付けで「Eco-UVシステム」を搭載。「Eco-UVシステム」の搭載作業は印刷機を工場に設置したままで、リョービMHIグラフィックテクノロジー㈱のエンジニアを中心にわずか7日間で行われた。「納期はどんどんタイトになっており、インキ乾燥のための時間と置き場を解消したかった。パッケージや厚紙への印刷ではないので、通常のUV印刷ではなく、オゾンレスUVランプ1灯と高感度UVインキの組み合わせで環境負荷が小さい“Eco-UVシステム”を選択した。即座にインキが乾燥するので、次工程へすぐに回せて短納期に対応できることは大きな意味がある」と同社東京生産部印刷課の宮本明課長はその効果を語る。江東潮見工場での水なしEco-UV印刷化は、先にそれを始めていた金沢工場での好実績を受けてのもの。水なしEco-UV印刷はおろかUV印刷自体が初めてだった金沢工場での採用では、インキをはじめとした資機材の改良を研究。そこで確立した技術をベースにして、江東潮見工場では垂直立ち上げに成功している。

羽鳥執行役員

羽鳥執行役員

Eco-UV印刷化によってもたらされた効果は多岐にわたる。「これまではインキ乾燥待ちの時間を考慮して納期の交渉をしなければならなかった。それが即乾するEco-UV印刷化により、下版から納期までの印刷・製本作業の融通がきくようになり、スケジュールを組む上での柔軟性が生まれた」と、同社東京生産部の羽鳥友健執行役員は語る。また、乾きにくい紙やブロッキングしやすい絵柄、後で表面加工を施すような仕事でも活躍をしている。「即乾するので仕事を選ばずにできるため作業効率が上がり、しかもインキ乾燥やパウダーにまつわるトラブルが皆無になった。パウダーを使用しないので機械劣化の予防もできる。また、パウダーによる誤作動や精度低下があるため導入を見送ってきたインライン品質検査装置も同時に搭載した。これまでは全ジョブを目視検品していたが、今は機械に任せている。目視検品するのもインキ乾燥を待たなければならなかったので、この部分での時間や労力、コストも大幅に削減できている」(宮本課長)

宮本課長

宮本課長

省電力UV印刷を水なし印刷で行うと、運用上のメリットもとても多い。まず、省電力UV印刷では印刷時の水幅が狭く、品質を安定させることが難しいが、水なし印刷ではこのような問題が当然あるはずもなく、色が安定してからは大ロットの仕事であっても濃度変化はほとんど起こらない。また、刷り出し損紙は数十枚程度で本刷りを始めることができる。メンテナンスについても、水なし印刷なので水棒の親水処理などの水まわりのメンテナンスが不要な加え、ローラーのストリッピングやグレーズ堆積もなく作業時間削減ができる。さらに、ローラー交換頻度についても、水を使わないため加水分解を抑えられるのでその寿命は長く、1年以上にわたり使うことができるので大きなコストダウンにもつながっている。

同社では今後、新たに確立した水なしEco-UV印刷技術をベースに、特殊紙や紙以外の原反への環境配慮型かつ他社との差別化を図った印刷に挑んでいく。そして、この特別な技術をもって顧客にとってなくてはならない存在となり、モノ作り・コト作りを提案していく。「水なし印刷のテクノロジーリーダーという自負があるので、技術的な困難があってもそれをモチベーションとして乗り越えてきた。これまでに蓄積したノウハウと技術をもって、営業の引き出しや幅が広がっている。これまでにはできなかった新しい可能性を提案できるようになり、“水なしEco-UV印刷”は生産部門だけでなく全社的な価値を上げている」(今井健常務)

日本印刷新聞 2015年3月30日付掲載【取材・文 小原安貴】

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