2016年04月15日

「これまでの概念を覆す印刷機を今月から稼働させる。新たに導入したこの革新的な印刷機によって、会社・工場のシステムや仕事の流れ、さらには社員の意識も変革する」と岩倉大介専務が大きな期待を寄せる印刷機、それがKBA製の菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」だ。岩倉印刷紙業㈱(本社・大阪府大阪市天王寺区東上町2の25、岩倉巧社長)ではすでに、KBA製ではないながらも菊全判7色コーター付印刷機2台が15年以上にわたって稼働している。ユニット構成はまったく同じであるにも関わらず、岩倉専務がここまで大きな期待を寄せる理由は何なのだろうか?

同業者にも見てもらいたい
最先端の技術をフルに搭載

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菊全判7色コーター付UV印刷機「Rapida106」

同社の創業は昭和8年。食品メーカーをメーン顧客にして事業を成長させてきた、パッケージ製作・厚紙印刷に特化した戦略を採る印刷会社だ。プリプレスから印刷、後加工までを社内で一貫生産できる体制を敷き、印刷機は菊全判7色コーター付が2台(1台は油性印刷専用、1台は油性/UV印刷兼用)、菊全判6色コーター付(油性/UV印刷兼用)が1台に加え、9色コーター付のフレキソ印刷機を取り揃える。食品パッケージが主な品目となることから、比較的ロットが大きな仕事が多い。そこで、7~10万通しまではオフセット印刷で、それ以上はフレキソ印刷機で生産する割り振りをし、量産に対応している。このラインナップに新たに加わったのが「Rapida106」だ。「今回の導入まで、約2年にわたって機種選定の検討とテストを重ねた。強堅ゆえに耐久性と基本性能に優れ、かつ最先端の技術がフルに盛り込まれたインパクトのある印刷機だ。ぜひ同業者のみなさんも当社でご覧になって欲しい」と同社営業統括部の松裏広志執行役員は語る。その自信の所以を紐解いていく。

ダイレクトドライブによる
同時作業で小ロットに対応

今回の「Rapida106」の導入の最大の目的は、大ロットの仕事の生産性もアップし、なおかつ小ロットの仕事のスピードアップ・生産効率の向上を図ることだ。食品パッケージの仕事は、基本的には大ロットが多いものの、最近では1000-5000通しといった小ロットの仕事も増加傾向にある。したがって、どちらの仕事にも柔軟に対応できる印刷機でなければならない。
まず、大ロットの仕事の生産性という観点では、「Rapida106」の最高印刷速度が毎時1万8000回転と高速であることに加え、パッケージ印刷で多用される厚紙への対応に優れていることが挙げられる。KBA社が納入する印刷機の3分の2以上はパッケージ印刷・厚紙印刷用途のもので、そこで積み重ねた多くの知見を製品開発へと反映させ、フィーダーでの紙の出具合から印刷紙面にキズを付けないようなユニット間での用紙の受け渡しをはじめ、細部にいたるまでパッケージ・厚紙印刷における高速化・高品質化のノウハウが詰め込まれている。さらに、ジョブ替えによって薄紙から厚紙へと紙厚が変わっても、爪台の高さ調整が要らない使い勝手の良さもある。
一方、小ロットの仕事のスピードアップ・生産効率の向上を図る上で大きな効果を発揮するのが、「Rapida106」特有のダイレクトドライブ機構(各印刷ユニットに独立したモーターを搭載)による全自動同時刷版交換や各種切り替え作業の同時処理だ。「このダイレクトドライブ機の魅力は、1つの作業が終わってから次の作業をするのではなく、“○○の作業をしながら△△の作業もできる”という点だ。たとえば、全自動で刷版交換をしながら同時にブランケットや圧胴の洗浄もできるので、ジョブ替え時間が大幅に短縮できる。さらに、同じ紙への単色の仕事が続く場合、1ユニット目を使って印刷をしてそれが終わったら、すぐに2ユニット目の胴が降りてきて、ほぼ連続的に印刷するということもできる。もちろんその間に1ユニット目の刷版交換や洗浄作業ができるので、本刷りのための稼働率を極大化できる。これまでは協力会社に外注することもあった小ロットの仕事も、“Rapida106”を活用して内製化していく」(岩倉専務)

インラインで自動色調制御
常に安定した色再現を実現

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岩倉専務

大ロットの仕事では、刷り始めから刷了までの間で濃度変化が発生することがある。これは避けられない現象で、印刷オペレーターが抜き取りチェックをしながら印刷機のツボキー調整で対応するのが一般的な方法だが、同社が導入した「Rapida106」ではそのような非効率なことは不要となる。インラインで色調制御と欠陥検知の双方を行う検査装置を搭載しているからだ。
この検査装置はカメラで全印刷物の紙面全体を読み取るもので、印刷物の色調がOKシートから離れたら即座に各印刷ユニットに自動補正をかける。したがって、大ロットの仕事であっても途中で印刷オペレーターが印刷機のインキキーを操作することなく、印刷開始から刷了まで安定して同じ色を再現することができるのだ。
この検査装置によって仕事の流れも変わる。松裏執行役員は「これまでの印刷オペレーターの美学は、印刷立ち会いで顧客の要望する色を出すことだった。しかし、本刷り時にインキの盛り量で要望に応えるという方法には品質安定化という観点からも無理があるし、リピートの仕事を受けた時の効率も悪い。そこでこれからは、標準印刷をすることを基本とし、プリプレス側でしっかりとデータ調整をすることで精度の高い本機校正を出してOKをもらい、本刷りはそのジョブデータを引き出すだけで簡単に始められるようにする。従来と同じような仕事の流れならば“Rapida106”を導入した意味が半減する。この印刷機の長所を活かすためにも、プリプレスや営業のスタッフにも仕事の流れを変えてもらい、ルーズな校正は撤廃していく」と語る。また岩倉専務は、「インキの盛り量で色再現を変えると印刷品質の安定度が下がるので、なるべくインキキー操作はせず、標準印刷を徹底していく。この印刷機の強みは、印刷物の品質を安定・一定化させられる点にある。色の補正は印刷機が自動でやってくれる。インキキー操作に長けた印刷職人ではなく、印刷機の環境を整えながら、正しく動いているかチェックができる印刷オペレーターを育て、特定の人でなければうまく印刷ができないという状態にしないことを心掛けていく」と述べた。

欠陥検知とUV印刷により
効率的な検品で事故を撲滅

パッケージ印刷分野では緻密な検品体制が要求される。この検査装置には欠陥検知機能も搭載されており、全印刷物をカメラで読み取り、欠陥があれば検出する。導入した「Rapida106」はUV印刷専用機なので、印刷物がカメラを通過した後に起こりうる事故要因のパウダーのボタ落ち、コスれ、ブロッキングも発生しない。「これまでの目視による検品作業を、機械の目による高精度な検査に任せることができる。そしてUV印刷によって、印刷事故の7~8割を占める検査カメラ通過後の事故がなくなるので、どれだけロス率が減るのかが楽しみだ」と松裏部長も期待を寄せる。
また、これまで同社では小ロットの仕事は協力会社に外注することが多かったが、顧客から「印刷を社内でしていないのに、どうして品質管理ができるのか?」という声を受けることもあるという。もちろん、外注に出した仕事はすべて目視検品をしていたが、大変な時間と労力、人件費がかかる。それが「Rapida106」の小ロット対応力と検査装置による高精度な検品体制により、顧客が本当に求めている品質管理体制・生産体制を構築できるようになった。

アニロックスローラーの
交換がボタン1つで簡単に

この「Rapida106」にはもう1つ、パッケージ印刷をする上でとても便利な機能がついているが、パッケージ印刷ではニス加工が多く使われる。そのニスの盛り量を決めるアニロックスローラーを交換するには、従来はクレーンを用いた大掛かりな作業が必要だった。それが、「Rapida106」ではコーターユニットに3本のアニロックスローラーをマガジンタイプで収納でき、コンソールのボタン操作1つでアニロックスロールの交換ができる。「パッケージ印刷において、アニロックスローラーが簡単に変えられることの意味は大きい。印刷していてニスの盛り具合が足りないと思った時、アニロックスローラーを簡単に変えられるので、印刷中にニス量の調整ができるようになるからだ。これまでだと、一旦印刷機を停止し、30~40分かけてアニロックスローラーを入れ替え、また色出しから始めることになる。大幅に時間短縮ができる上、面倒がらずにそれぞれの仕事に適切なアニロックスローラーをセットすることができるようになる。しかも、ダイレクトドライブ機なので、前の仕事の最中にアニロックスローラーを交換しておくこともできる」(岩倉専務)
またUVランプの交換についても、道具を使わずに1人だけで簡単に行うことができる。

印刷機の生産性が1.7倍
社員の意識や雰囲気も革新

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松裏執行役員

「この印刷機は従来のものの改良版ではなく、革新的なものだ」と評する岩倉専務。それは、KBA社のドイツの枚葉印刷機工場でトレーニングを受けてきた印刷オペレーターも同様で、「これまでの印刷機とはまったく別物。印刷機の短所を補うのが印刷オペレーターの役目だったが、これからは印刷機のパフォーマンスを最大にするための環境を整えることが仕事となる。それさえすれば、高品質な印刷物が効率良くできる」とまったく違う視点をもって帰ってきたという。
同社では「Rapida106」導入によるさまざまな効果により、生産時間が4割削減、生産効率が1・7倍になると試算している。「これまで枚葉オフセット印刷機は3台体制だったが、“Rapida106”と既設の7色機1台の2台体制にするつもりだ。それでも印刷機の生産性は上がるので、後工程の設備や人員の適正配置の見直しをする。生産性向上により工場が生み出せる売上の上限も大きく伸びる。短い時間で効率良く仕事をして、それを社員の給料に反映できるようにしたい」と岩倉専務は展望を語る。
また同社では初めて、印刷オペレーターに女性を登用する予定。紙の搬出入はすべて自動化しているので、力仕事の必要がなく印刷機の安定稼働だけに力を注げるからだ。「印刷機の外観も新鮮・スタイリッシュなので、そういう意味でも顧客や同業者にも見てもらいたい印刷機だ。新しい印刷機だからこそできる新しい印刷物について考えるようになり、工場全体の仕事に対する意識が受け身から進歩的に変わり、ほかの部署も刺激を受けている。この新しい印刷機、新しい技術は当社に独自性をもたらしただけでなく、変革へのきっかけ・モチベーションまでもたらしてくれている」(岩倉専務)
月刊 印刷界 2015年4月号掲載【取材・文 小原安貴】

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