2016年03月03日

水上印刷㈱(本社・東京都新宿区、河合克也社長)は、静電気・異物対策として㈱TRINC(本社・静岡県浜松市、高柳眞社長)の無風除電装置「空間TRINC」を昨年5月に同社多摩工場(東京都西多摩郡)に設置し検証した結果、印刷工程、紙積み工程、アセンブリなどさまざまな工程で品質向上と生産性向上を確認、静電気が発生しやすい冬季でもその効果が変わらないことから2015年12月に正式導入、2月25日多摩工場で導入プレス発表会を開き、同装置の検証結果を公表するとともに、同装置のデモンストレーションを公開した。

 

導入プレス発表会には水上印刷の河合社長、松崎良樹取締役生産本部長、野引哲也品質管理課課長、TRINC社の中村羨勇東京支店執行顧問、販売代理店の㈱SCREENホールディングスの高橋嗣治ライフサイエンス事業開発室営業・マーケティング課参事、ビジネスマッチング事業や中小企業ニューマーケット開拓支援事業を展開する公益財団法人東京都中小企業振興公社ビジネスナビゲーターの宮坂隆順氏らが出席。はじめに河合社長が同装置導入の経緯について次のとおり説明した。

 

静電気対策の効果を検証

 

「当社はフルサービスカンパニーを目指しているが、印刷会社としてのプライド、製造業としてのDNAにこだわっていきたいという思いからものづくりを大切に考え、さまざまな改善活動を行っており、その一つが空間TRINCの導入である。静電気対策は昔からある課題だが、今一歩パーフェクトに解決する策がなかったのが悩みだった。ワンストップサービスで工程が広がる中、どの工程でも共通する問題の一つが静電気である。昨年5月から印刷工程フィーダー部、加工工程、アセンブリ工程に空間TRINCを導入しフィールドテストを行ってきた成果を紹介したい。TRINC社は昨年5月に東京都中小企業振興公社のビジネスマッチング事業を通じてご紹介いただき、直感的に空間TRINCは従来方式を覆す素晴らしい技術だと感じた。フィールドテストの結果、当社にとって非常に有益であるという結論が出て昨年12月に導入した。この取り組みが静電気対策で困っている同業者のお役立ちになれば幸いである」

 

中小企業の技術を応援するビジネスマッチング事業

 

続いて、宮坂氏がビジネスマッチング事業について「東京都には約3万社の中小企業があり、その中の優秀・優良企業を毎年約500社見つけ、その技術を応援するのが同事業の目的である。今回は事前に印刷業界のニーズを聞き、ふさわしい優良企業の一つとしてIGASに出展していただいたのがTRINC社である。河合社長のご厚意で出展前に同装置の実証実験をしていただき、今回、印刷業界に向けて検証結果を情報公開していただけることに感謝したい。これを機に日本のクールテクノロジーを拡げていきたい」と述べた。

 

肌で感じられる改善効果を得る

 

このあと、松崎取締役生産本部長が多摩工場における同装置の検証結果について、TRINC社の中村執行顧問が無風除電装置「空間TRINC」の技術について説明した。その中で松崎取締役は「生産現場における永遠の課題のうち、とくに品質向上と生産性向上に対し、空間TRINCは生産現場のオペレーターが肌で感じられるほどの改善効果が得られ、現場が手離せなくなった」と装置の有効性を強調した。

野引品質管理課課長の案内で同装置のデモンストレーションを行った。

 

静電気の発生しやすいユポ紙印刷で除電効果を検証

 

「空間TRINC」を印刷機のデリバリ部に設置

「空間TRINC」を印刷機のデリバリ部に設置

それによると、多摩工場では、「空間TRINC」(スタンド式・2本1セット)を小森製両面印刷機のデリバリ部、紙積み工程、添付文書のミニ折り工程、アセンブリ工程のビニール封入作業などに設置して除電効果を検証した。対象製品には、あえて静電気が発生しやすいユポ紙印刷を選定。ユポ紙印刷では機械内で静電気が発生し、デリバリ部での紙揃えが悪くなり、フィーダーストップ多発や2枚差しの危険性が発生する。

 

そこで、UV印刷機(小森LS529)とH―UV印刷機(小森製GL440P)でユポ紙印刷での除電効果を検証した。その結果、UV印刷機(小森LS529)では、デリバリ部で発生した静電気4キロボルトが、空間TRINCによって0・1キロボルトまで除電された。従来のユポ紙印刷ではデリバリ部の紙揃えは不揃いの状態だったが、空間TRINCを使用することで紙揃えが良くなった。さらに印刷1回通し目よりも2回目、3回目の方がその効果が大きかった。

 

紙揃えが改善されたことで、針飛びやアテ飛びなどの目視確認が容易となり、品質確認が向上。さらに印刷機の回転数が毎時9000枚から毎時9500枚へ5%向上、紙揃え時間短縮により、刷了検査が20分から10分へ50%削減するなど生産性が向上。さらに加工工程でも紙揃え時間が短縮され、印刷・加工の双方で効果的だった。

 

H―UV印刷機(小森製GL440P)によるユポ紙両面印刷では、デリバリ部で発生した静電気6キロボルトが、空間TRINCによって0・1キロボルトまで除電された。これにより、印刷機の回転数が毎時1万枚から毎時1万1000枚へ10%向上、刷了検査が30分から15分へ50%削減した。

 

印刷前準備の紙積み工程では、発生していた静電気1キロボルトが、空間TRINCによって0・1キロボルト以下まで除電。従来のユポ紙印刷では、フィーダーストップによるチョコ停が多発していたが、空間TRINCを使用することでユポ紙が除電され、チョコ停が減少した。チョコ停が改善されたことで、印刷濃度が安定し製品品質が向上するとともに、機械停止が減少したことで生産性も向上した。

 

アセンブリ工程では、ビニール封入作業で発生していた静電気34・5キロボルトが、空間TRINCによって0・06キロボルト以下まで除電。ビニールのくっつきが改善されたことで、作業効率が向上。時間出来高は毎時500個から毎時750個へ50%向上した。同時に作業性の悪さから発生する封入ミスの防止にもつながった。

 

ミニ折り工程における添付文書折りでは、薄紙印刷のため、静電気の発生により用紙がくっついて2枚差しや、製品のローラ巻きつきが発生し作業効率の低下と折り不良の危険性があったが、空間TRINCを使用することで、印刷製品のローラ巻きつきがなくなり、作業効率向上と品質の安定化に効果的だった。2枚差しについても改善されたが、完全に解消することはできなかった。

 

水上印刷では、空間TRINCの除電効果として品質安定化では、①静電気による搬送不良(曲がり・2枚差し)を防止②チョコ停による品質変化点の削減③異物による印刷汚れの抑制④刷了時の品質確認の強化⑤折り工程での製品ローラ巻き付きトラブル解消⑥断裁工程での員数不具合の減少⑦アセンブリ工程ビニール封入ミスの防止――などを挙げている。

 

生産性向上では、①印刷機械回転数の向上②紙揃え時間の短縮③刷了検査時間の短縮④機械停止時間の短縮⑤断裁工程紙揃え時間の短縮⑥アセンブリ工程ビニール封入作業効率の向上――などを挙げている。

 

静電気・ホコリ対策に特化したTRINIC社

 

無風除電装置「空間TRINC」を開発したTRINC社は1991年に高柳社長が設立した静電気・ホコリ対策装置に特化したベンチャー企業。

 

空間TRINCは、いかなる媒体も用いずに、無風状態で空間中のすべての静電気を中和させる除電器。一定の距離を開けて対面する位置にプラスイオンとマイナスイオンを交互放射する空間TRINCを設置すると、プラスとマイナスのイオン同士が引き合う現象が起こり、広い空間を無風状態で効果的に除電することが可能。従来型の除電器は、AC方式のため発生したイオンを遠くに飛ばすためにエアーやファンが必須だったため、空間中に浮遊するホコリや異物対策が新たな課題として残っていた。

 

これに対し、空間TRINCは無風除電なので空間中のホコリや異物の静電気も除電でき印刷物への付着を防止できる。

 

現在、空間TRINCは用途に合わせて約250種類をラインアップしており、トヨタやキヤノンが採用したことで注目され、現在では自動車関連、エレクトロニクス関連、光学関連、家電関連、医療化粧品などさまざまな業界の大手企業で採用されている。

 

 

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