2016年02月22日

金子眞吾社長

金子眞吾社長

凸版印刷(株)(金子眞吾社長)は1月27日、東京・千代田区の秋葉原本社ビルで2016年新春記者懇談会を開き、金子社長が2015年中間期業績と通期見通し、本年の経営スローガン、経営課題と施策、健康経営について説明した。その後、同社幸手工場に移動し、トッパンプラスチック(株)・(株)トッパン建装プロダクツの生産ラインを見せた。

 

金子社長は、今年の経営スローガンに「印刷新世紀『印刷テクノロジー』と『情報武装化』で新時代を切り拓こう」を掲げ、経営課題である(1)グループを含めた構造改革の遂行(2)新事業・新市場の創出(3)グローバルな事業展開の加速‐‐に取り組み、目標として定めた2017年度の連結営業利益700億円の達成をめざす――

 

■経営環境

昨年の日本経済は、円安を背景とした企業収益の改善や、それに伴う雇用、所得環境の改善が続いたものの、回復のペースは緩やかなものにとどまった。
印刷業界においては、まだまだ景気回復の効果が届いていないばかりか、急速な市場の変化の影響もあり、厳しい状況が続いている。

 

■中間期業績と通期見通し

2015年度第2四半期(2015年4月1日~9月30日)の連結売上高は7208億円(前年同期比0・5%減)、連結営業利益は142億円(同63・7%増)、連結経常利益は158億円(同16・6%増)の減収増益だった。
2015年度通期業績見通しは連結売上高1兆5360億円、連結営業利益475億円、連結経常利益500億円を見込んでいる。
 
今後はさらに、構造改革を進めるとともに、「印刷テクノロジー」を核に、新たなビジネスを展開し、業績の向上を図っていく。

 

■本年の経営スローガン

本年の経営スローガンは、「印刷新世紀『印刷テクノロジー』と『情報武装化』で新時代を切り拓こう」とした。
 
現在、デジタル技術の急速な進歩により、革命的とも言えるほどの劇的な市場の変化が起きている。現在、「インダストリー4・0」や「インダストリアル・インターネット」などのIoTによる第4次産業革命の時代が始まり、製造業の世界地図を塗り替える可能性があると言われている。産業や国境の垣根を越えた、変革の時代の真っただ中にいる。
 
そして、このように世の中が大きく変化するときこそ、さらなる成長のための大きなチャンスとなる。このチャンスを活かすためには、社員一人ひとりが、変化の激しい環境でも、正確な情報を敏感につかみとれるようアンテナを張り巡らして感性を磨く、「情報武装化」が重要である。
 
営業、製造、スタッフの全部門で、それぞれ生きた情報を集め、全社的に集約、蓄積することで、知識や情報を統合した経営資源として活用していく。培ってきた「印刷テクノロジー」と、この「情報武装化」で、チャンスをつかみ、新事業を創出するとともに、リーディングカンパニーとして、印刷の新時代を開拓していきたい。

 

■経営課題と施策

そのため、取り組むべき経営課題は、「グループを含めた事業構造改革の遂行」「新事業・新市場の創出」「グローバルな事業展開の加速」の3点。この経営課題に迅速に取り組み、目標として定めた2017年度の連結営業利益700億円の達成をめざす。

 

(1)重点事業BPO事業

BPO事業では、紙とデジタルを融合させる当社の技術やノウハウ、さらにICTへの対応力などを組み合わせたトータルソリューションを武器に対応を強化していく。
 
【具体事例(1)マイナンバー関連BPO】
 
大きな国家プロジェクトである、マイナンバー制度が動き出している。2015年10月には個人番号の通知、2016年から個人番号カードの交付が開始される予定。これによりBPO事業に関わる大きな市場が生み出されると見込んでいる。
 
まずは法律施行に伴い、国や自治体向けの「カード発行などインフラ整備関連のビジネス」が立ち上がる。そして2016年からは、「民間企業や金融機関における番号取得業務などのBPO関連ビジネス」が続き、さらにその先には、マイナンバーを活用した、民間による新しいビジネスの創出が期待できる。
この番号取得業務では、保険業界向けのマイナンバー取得代行ソリューションの提供をNTTデータと協業し、2016年1月から本格的に開始した。現在、大手保険会社などでの採用が決まっている。
 
マイナンバーに関わる事業には高いセキュリティ性が求められる。トッパンの持つセキュリティに関するノウハウと、トータルソリューションを活かし、取り組みを進める。
 
【具体事例(2)ヘルスケアBPO】
 
少子高齢化を背景に国民医療費が増加傾向にあるが、国家予算の観点からも、医療費の抑制は急務となっている。
 
ヘルスケア領域は成長が見込まれており、新たなビジネスチャンスとしてヘルスケアBPO事業に注力していく。すでに当社では、実証実験への参加をはじめ、事業としての実績を重ねている。その一つが、2014年11月にスタートした「よこはまウォーキングポイント事業」である。
 
当社は共同事業者として、この事業の運営に参画している。この事業では、横浜市の40歳以上の市民を対象に、希望された方に歩数計を配布、歩いた距離に応じてポイントが付与され、ポイントは抽選で地元商店街の商品券と交換できる仕組み。楽しみながら健康管理、医療費抑制を実現するモデルとして、4年間で30万人の参加を見込む一大プロジェクトとなっている。
 
2015年6月からは、横浜市内の事業所単位での参加受付も開始するなど、対象を広げている。現在では、参加者が約15万人に達し、好評を博している。
ヘルスケア事業は、各自治体での実証実験を経て拡大が予想されるが、現在、凸版印刷が、その多くでお手伝いをさせていただいている。ヘルスケア事業は、中央官庁や地方自治体、医療機関や大学、そして様々な民間企業などにより、「産官学の連携」で進められているのが特徴。事業のスムーズな運営には、各機関を機能的にコーディネートしていくプロデュース能力が不可欠で、この役割をトッパンが果たしている。
 
凸版印刷の持つ、ICTインフラやセキュア管理、BPOなどのノウハウと、どこのお得意先ともお付き合いできる、中立的なポジションが大きな強みになっている。
 
今後ヘルスケア分野は、当社にとって大きなビジネスに成長すると期待している。

 

(2)重点事業バリアフィルム事業

バリアフィルム事業の海外展開に注力している。欧米では環境保全の観点から、包装材軽量化のニーズがあり、ビンや缶から、軽くて扱いやすいフィルム包材へと置き換えが進みつつある。
 
そうした中で、世界最高水準のバリア性能を持つ「GLフィルム」を中心とした、透明バリアフィルム事業は、45以上の国・地域で、1万5000点以上の商品に採用され、約40%とトップシェアとなっている。
成長事業へ発展する大きなチャンスを迎えており、より一層の事業強化を図っていく。
 
米国の生産拠点としてジョージア州に工場の建設を進め2016年3月の竣工を予定。2015年5月に本格稼働を開始した群馬センター工場とともに、透明バリアフィルム「GLフィルム」を武器に、北米をはじめヨーロッパのグローバル企業に対し販売を強化していく。
 
さらに、GLフィルムと紙の複合容器である紙製飲料容器「カートカン」についても、積極的に海外展開を進めていく。「カートカン」は、材料となる紙に間伐材を含む国産材を30%以上使用しており、国内の森林を育てる環境配慮型容器である。国内市場においても、セブン&アイ・ホールディングスの商品に採用されるなど、順調に拡大をしている。
 
また、中国の機械メーカー「プレシャス社」と「カートカン」の成型・充填機械の製造販売において業務提携を行った。
今後、当社が生産材料となるGLフィルムを供給することで、中国国内をはじめ東南アジア地域での「カートカン」の普及を図っていく。
 
さらに軽量化の市場ニーズに対応するために、さまざまな機能性を持たせた包装材の開発を進めている。
「エアホールドパウチ」は、パウチのサイド部分に、空気を縦方向に封入することで自立性を向上させた液体製品用スタンディングパウチ。見た目に美しいだけでなく、持ちやすさ・注ぎやすさを実現している。金属缶の代替として、エンジンオイルの包装材として採用されるなど、幅広い用途に拡大している。

 

(3)重点事業メディア事業

この分野では、電子チラシ事業「シュフー」、電子書籍事業「ブックライブ」が2015年前半期で黒字化を達成することができた。ペーパーメディアを中心とした既存印刷の市場が減少するなか、デジタルメディアによる新事業の創出を進めていたが、これまで種をまいてきたものが、ようやく芽を出してきた。
今後も両事業のより一層の拡大をめざし、積極的に新しい取り組みを進めていく。
 
【具体事例(1)Shufoo!】
 
「Shufoo!」は、登録社数が約3100社、登録店舗数は10万4000店舗、ユニークユーザー数は月間約750万人となった。
さらに月間の閲覧数が2億6000万ページを超えるなど、事業を拡大している(2015年12月末現在)。
 
また増加をする訪日外国人向けに電子チラシを配信する新サービスを開発、2016年3月から提供を開始する。
これは、訪日前に英語と中国語で電子チラシを検索できるようにするとともに、訪日後はGPSに連動し近くの店舗の電子チラシを閲覧可能にする新サービスである。
 
旅行者が、訪日前に買い物計画を立てる際の参考になるとともに、日本滞在中は、スマートフォンでホテル周辺の免税対応店を検索することができるなど、来日中の買い物もサポートする。イオンリテールやイトーヨーカ堂、ヤマダ電機などが参加を予定。今後訪日外国人の来店を促したい流通企業を中心に5000店舗の採用をめざす。
 
さらに自治体の広報誌や、選挙告知など官公庁での活用など、新しい社会インフラとしての利用促進を進めるとともに、新しい技術を持つ先進企業とのアライアンスなど、さらなる事業の拡大を図っていく。
 
【具体事例(2)BookLive!】
 
電子書店事業を手掛ける「BookLive」を核に、出版社やリアルな書店との連携を図るなど、先進的な独自サービスを展開していく。
電子書店「BookLive!」では、取り扱い冊数が45万冊(2016年1月時点)を超えるなど、事業を拡大している。
 
「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」との業務提携をベースに、新サービス「Airbook(エアブック)」の取り扱いが拡大している。
この「Airbook」は、TSUTAYA店舗で、Tカードを提示して対象の雑誌や書籍をご購入いただくと、購入した書籍の電子版が自動的にダウンロードされ、無料で楽しめるサービス。
「週刊東洋経済」「るるぶ」などの他に、女性誌の「アン・アン」やビジネス誌の「週刊エコノミスト」、スポーツ誌の「週刊プロレス」などが加わり、対象誌が162誌となるなど順調に拡大している。
 
さらに2015年12月からは、書籍を対象としたサービスを「SB(エスビー)新書」の21冊から開始した。今後も対象となる雑誌や書籍を拡充し、利用の拡大を図る。
またブックライブでは、電子書籍ストアとして、コミックを中心にオリジナル作品の開発、提供を進めている。他のストアにないオリジナルコンテンツを制作・提供することで、差別化と読者の訪問頻度の向上をめざす。
 
今後も「BookLive!」では、リアルとネットをつないだ新たなサービスを企画・提供し、書籍業界全体の活性化につながる総合書籍プラットフォームとして、サービスの拡充を実現していく。

 

■健康経営について

 
企業が一層の成長をはかっていくためには、従業員が心身ともに健康で、個性や能力を最大限に発揮していくことが重要である。凸版印刷は、創業以来「人間尊重」の基本理念に基づき、従業員の健康に関する様々な取り組みを進めてきた。
さらなる従業員の健康の保持・増進に向け、2015年10月に「健康経営」という視点から会社と健康保険組合、それぞれで行われている取り組みや計画を見える化、体系化するとともに、「健康経営宣言」として今後の方針を明確化した。
 
この「健康経営宣言」を社内外に発表するとともに、私が「健康経営責任者」となり、さらなる健康経営を牽引していく。
さらに従業員の健康の保持増進について健康保険組合と協議、推進する「健康経営推進協議会」を設置、労働組合、診療所など連携し、施策を実行していく。
 
【具体事例「労使共催トッパンスポーツフェスティバル」】
 
具体的な事例として、社員運動会「労使共催トッパンスポーツフェスティバル」を開催した。全社横断型の社内スポーツイベントを2年に1度、開催している。昨年9月には、全国の事業所から従業員とその家族、約4000人が参加し、3回目となる大会を実施した。このイベントは、コミュニケーションの活性化やグループの一体感醸成、およびトッパンに対する家族の理解促進を目的に開催しているもの。特徴は、経営層から若手社員まで一体となって参加している点、また社内スポーツイベントの企画・制作から当日の運営まで、当社の若手社員が中心となり、すべて社員による手づくりで行っている点。
 
今回も、障がい者スポーツの体験コーナーや、臨床美術の手法を取り入れ体を動かしながら透明なキャンバスに絵を描く「アートサロン」コーナーなど、様々な企画でイベントは大いに盛り上がりを見せた。
 
凸版印刷は、従業員や家族のさらなる健康づくりを推進するとともに、先ほどお話したヘルスケア事業など関連事業の推進を通じ、従業員だけでなく、国民全体の健康づくりを支援し、社会に貢献していく。
 
凸版印刷は、印刷技術に様々な知識やノウハウと加工技術を融合し、進化させた「印刷テクノロジー」によって、変化する社会のニーズに対応してきた。
そして、当社の企業広告「印刷テクノロジーで世界を変える。TOPPAN」シリーズは、2015年度も日経広告賞の生産財・産業部門最優秀賞や、日本雑誌広告賞のシリーズ広告部門銀賞など、いくつか広告賞を頂戴することができた。一貫して述べてきた「印刷テクノロジー」が市場に認められてきていると感じている。
 
これからも「印刷テクノロジー」を日々進化させ、新しい領域においても、お客さまの課題を解決し、ひいては社会に貢献していきたい。

 
 

凸版印刷幸手工場。トッパンプラスチック、トッパン建装プロダクツの生産ラインを見せた

凸版印刷幸手工場。トッパンプラスチック・トッパン建装プロダクツの生産ラインを見せた

 

 

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